ろう)” の例文
今は隱退いんたいしてゐる小菅けんすけろうだん關根せきね金次郎名人にむかつて、としをとるとらく手がありちになる。らく手があるやうでは名手とは言へぬ。
ろう」は彼のイデア——美しきものの実体観念——だった。それ故に彼の俳句は、すべての色彩を排斥して、枯淡な墨絵で描かれている。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「なるほど、そう言えば、そうも取れる。一見すればろうと読みたいところだが、そう言われて見ると、土という字だ」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
時に年七十三。当時汪叡おうえい朱善しゅぜんともに、称して三ろうす。人となり慷慨こうがいにして城府を設けず、自ら号して坦坦翁たんたんおうといえるにも、其の風格は推知すべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「京都著名老鋪ろうほ財数十万戸主家系由緒身健品正風采紳士さけ不嗜たしなまず店雇人十数工場雇人数十ははろういもうとかす弟分家無係累むけいるい
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おまけに首まで切られたろうばが、少くとも彼女と一分一厘違わないある他の人間が(そんなものはこの世にいるはずがない)××観音の芝居小屋で活躍しているのだ。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
金太郎はきうに、一切のことをたれかに話して、自分とそのろう人とが同じ危けん状態にあつたことを現在世かい中で自分だけが知つてゐるといふこの祕密ひみつから、いちはやく解ほうされたいせう動をうけた。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
「妓を持てはよかった。植田ろうが御意召さるぞ、はよう妓を持て!」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しやうろうびやうは順当な流転だ
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
しかしながら芭蕉は、趣味としての若さを嫌った。西行さいぎょうを好み、閑寂かんじゃくの静かさを求め、枯淡のさびを愛した芭蕉は、心境の自然として、常に「ろう」の静的な美を慕った。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
若しうまく行けば、親戚のろうばの供養くようにもなることだし、また社に対しても非常な手柄だからね
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
とにかく舊式きうしきの名人せいはなはだいい。ただ問題もんだい棋界きかい功勞こうろうがあり、而もおとろへた老棋士ろうきしろう後の生くわつたいして同時に何等かの考慮こうりよはらはるべきである事をぼくは切言したい。
嘯詠寒山しょうえいかんざんに擬すの句は、このろうの行為にてらせば、矯飾きょうしょくの言に近きを覚ゆれども、もしれ知己にわずんば、強項きょうこうの人、あるい呉山ござんに老朽をあまんじて、一生世外せいがい衲子とっしたりしも、また知るべからず
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しやく、男しやくろう政客、天文學博士はくし實業じつげう家など、藝苑げいえんでは一時てきに中村時ぞうや千早智さち子などもんでゐたし、シロタやトドロヰッチ夫人のピアノ彈奏だんそうを立ち聽きした事もあるし
僕が、それを一寸ちょっと空想でつなぎ合せて見たばかりなのだ。ハハハハ。アア、例のろうばの写真かい。僕にあんな親戚なぞあるものか。あれはね、実は新聞社で写した、百面相役者自身の変装姿なのだよ。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)