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素手
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ふりがな文庫
“
素手
(
すで
)” の例文
武器は、
雁爪
(
がんづめ
)
、スコップ、六尺棒、バイスケ、
素手
(
すで
)
、など。怒号と、悲鳴と、笑い声とが、暁の港の空気をふるわせて、交錯した。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
素手
(
すで
)
でもって、あなたは十二ルーブリどころか、十五ルーブリ、それも銀貨ではなく、手の切れるような
青紙幣
(
あおざつ
)
で受け取れるのですよ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
と言って、部屋を出ようとしたり、声を出そうとすれば、今にも喬之助の手に
白刃
(
はくじん
)
が
閃
(
ひら
)
めきそうに思われるのだ。玄蕃は、
素手
(
すで
)
である。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
およびターリアコッツォのあたり、乃ち老いたるアーラルドが
素手
(
すで
)
にて
勝利
(
かち
)
をえしところにいまなほ骨を積重ぬる者之に加はり —一八
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
鍬
(
くわ
)
、
鋤
(
すき
)
の類をはじめとしての
得物
(
えもの
)
は、それぞれ柳の木に立てかけられたり、土手の上に転がされたりして、双方が
素手
(
すで
)
で無事に入り交って
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
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しきりに笛に合せ
撥調
(
ばちしら
)
べをしていますが、中にひとり立って、
鎌倉舞
(
かまくらまい
)
の稽古をしているお百姓も、麦を踏み大根を抜く日にやけた
素面
(
すめん
)
素手
(
すで
)
で
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ながらく
蟄居
(
ちっきょ
)
してはなはだ不自由、不面目の生活をしてまいりましたが、こんどは、いかなる武器をも持ってはならん、
素手
(
すで
)
で
殴
(
なぐ
)
ってもいかん
男女同権
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
素手
(
すで
)
で行こうというのです。しかも、ぐっと相手をにらんだその目の底には、明るい微笑が漂うたままなのです。
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「それだツ、有難う、それでわかつたよ、人間の首を打ち折るやうな仕事は、
素手
(
すで
)
では天狗でも容易ぢやあるめえが、金梃なら出來ることだ、が、待てよ」
銭形平次捕物控:286 美男番附
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
素手
(
すで
)
で虎を打とうとしたり、徒歩で大河をわたろうとしたりするような、無謀なことをやって、死ぬことを何とも思わない人とは、私は事を共にしたくない。
現代訳論語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
自分が
素手
(
すで
)
ではないことを思い出すや否や、勇気が再び心の中に燃え上った。そして私はその島の男にきっぱりと顔を向け、彼の方へつかつかと歩いて行った。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
彼は最初
薪
(
まき
)
を採りに入って偶然と懇意になり、
角力
(
すもう
)
などを取って日を暮し、
素手
(
すで
)
で帰ってくると必ず一夜の中に、二三日分ほどの薪が家の
背戸
(
せど
)
に積んであった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
序でに便所に入つて、二階の室に歸つて行くと、待ち兼ねてゐたらしい友は自分の
素手
(
すで
)
なのを見て
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
と云って、立派に受け合って来た以上、今さら
素手
(
すで
)
では帰れない。見ず識らずの草履屋へ行って、だしぬけに鯉を売ってくれと云ったところで相手が取りあう筈もない。
半七捕物帳:44 むらさき鯉
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
まだ
動悸
(
どうき
)
がおさまらず
蒼
(
あお
)
ざめた顔をしてはいたが、紀昌はすぐに気が付いて言った。しかし、弓はどうなさる? 弓は? 老人は
素手
(
すで
)
だったのである。弓? と老人は笑う。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
みんな鎌だの
鉈
(
なた
)
だのを持っているのに、私は
素手
(
すで
)
だったもんですからすこし気味が悪くなって、もう山へ登りかかっていたんですけれども、ちょっと家へ行って来ると云って
紀伊国狐憑漆掻語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
朝出がけに、女房の前で大きな口をきいた手前、
素手
(
すで
)
で帰ってゆくわが家の敷居が高くてならず、そこをとびこえるための手段であった。出かけた目的はいうまでもなく金策である。
雑居家族
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
その内容がどんなものであるかの想像もつかないので、それを木村に読ませるのは、武器を相手に渡して置いて、自分は
素手
(
すで
)
で格闘するようなものだった。葉子はそこに興味を持った。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
『相手の拔き身を
素手
(
すで
)
で受けるぐらゐ、馬鹿な
眞似
(
まね
)
はありませんからねえ。』
「鱧の皮 他五篇」解説
(旧字旧仮名)
/
宇野浩二
(著)
今から
素手
(
すで
)
で世の中に飛出す以上は
饑渇
(
きかつ
)
と戦う覚悟がなけりゃならぬ、なお鴎外、露伴らに紹介せよとの事だが、自分はまだ逢った事もない、たとい自分が紹介の労を取るにしたところで
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
これは外の談判と違つて唯
金銭
(
かね
)
づくなのだから、
素手
(
すで
)
で飛込むのぢや弁の
奮
(
ふる
)
ひやうが無いよ。それで
忽諸
(
まごまご
)
すると飛んで火に入る夏の虫となるのだから、まあ君が行つて何とか話をして見たまへ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「潔からぬ手」というのは、
祓
(
はら
)
い潔めの水をかけないままの
素手
(
すで
)
ということです。塵のついた手を洗わない、という衛生上の事柄ではありません。潔めの儀式をしない、という宗教上の問題です。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
どこかへ忘れて
素手
(
すで
)
で帰つて来た事があつた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
素手
(
すで
)
で引裂いた
錻力板
(
ブリキいた
)
——
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
力持のおせいさんはこれに励まされて、持っていた莚を
抛
(
ほう
)
り出し、
素手
(
すで
)
になって、登り来る折助
輩
(
ばら
)
の
鼻向
(
はなむき
)
、
眉間
(
みけん
)
、
真向
(
まっこう
)
を突き落し撲り落す。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
相手の
素手
(
すで
)
を知ると、西門慶はもう武松を恐れなくなった。また、自己の足
業
(
わざ
)
にも自信をもった。だが、これは彼の誤算である。むしろ武松にとっては、素手で組んだほうが始末がいい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小劍は、あらゆる意味において、『
素手
(
すで
)
』でなかつた作家である
「鱧の皮 他五篇」解説
(旧字旧仮名)
/
宇野浩二
(著)
法被姿
(
はっぴすがた
)
の源三、庭石に腰かけて、含み笑い……
素手
(
すで
)
です。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「で、
素手
(
すで
)
の町人を斬る氣になつたのか」
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「みんな
素手
(
すで
)
だったんか。」
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
あの男の方は
素手
(
すで
)
でよ。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
吉村右京は血気盛んの
壮者
(
わかもの
)
であったから、
素手
(
すで
)
でこの
曲者
(
くせもの
)
に立ち向ったが、
肝腎
(
かんじん
)
の主人の刀を持った金輪勇は、
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
してやみくもに逃げてしまう。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
素手
(
すで
)
にもひとしい小人数で、からめ捕ろうなどは、檻へ入って、虎と組むようなもの、
各〻
(
おのおの
)
が皆、死にたいという願いで、この漢へかまうなら知らぬこと、命知らずな真似はやめたらどうだ。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
伝授にしてからが、
素手
(
すで
)
じゃあ息が合いませんから、何ぞ
賭
(
か
)
けやしょう、コマを売りやすから、張ってごらんなさい
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
竿を持たせてこそ米友だけれど、
素手
(
すで
)
で水の中を
潜
(
くぐ
)
って来たところを折重なって押えられたのだから、めざましい抵抗も試むることができないで縄にかかってしまいました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
岩の上に立った米友を下から
渦
(
うず
)
を巻いて押し寄せた川越し人足、なにほどのこともない、
取捉
(
とっつか
)
まえて
一捻
(
ひとひね
)
りと
素手
(
すで
)
で登って来るのを
曳
(
えい
)
と突く。突かれて
筋斗
(
もんどり
)
打って河原へ落ちる。つづいて
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
有合わす
得物
(
えもの
)
を取って、応急的に追っぱらいましょうけれど、千人万人の侵入者に対して
素手
(
すで
)
というわけにはゆきますまい、先方もまた必ず素手でやって来るというわけでもありますまい。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
素
常用漢字
小5
部首:⽷
10画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“素”で始まる語句
素人
素
素直
素性
素振
素気
素朴
素足
素姓
素破