せば)” の例文
新字:
カンテラのひかりためかへつ眼界がんかいせばめられた商人あきんど木陰こかげやみかられば滑稽こつけいほどえずしかめつゝそとやみすかしてさわがしい群集ぐんしふる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
主人しゆじん蒙古人もうこじん上手じやうずうまあつかことや、蒙古犬もうこいぬせて細長ほそながくて、西洋せいやうのグレー、ハウンドにてゐることや、彼等かれら支那人しなじんのために段々だん/\せばめられてこと
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
義雄は、それを見送りながら、春雄と云ひ、敷島と云ひ、自分の範圍が段々せばまる樣な心細さをおぼえた。そして松田と關聯して藝者お仙のことを思ひ出された。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
せばめられてひるヶ小島へ流罪るざいと成せられたれども終には石橋山に義兵をあげられし處其軍利なくして伏木ふしきの穴にかくれ給ひしを梶原が二心より危き御身を助り夫より御運を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我心はこしかたより行末にうつりゆきぬ。我胸は押しせばめらるゝ如くなりぬ。昔歌ひし曲は虚空より來りて我耳を襲へり。その曲は知らず識らず我唇より洩れて歌聲となりぬ。
彼の足すべての動作ふるまひの美をこぼついそぎを棄つれば、さきにせばまれるわが心 一〇—一二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
きざはしせばぐらせる
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
せばいへうち羽叩はばたにはとりこゑがけたゝましくみゝそこひゞいた。おつぎはまだすや/\としてねむつてる。隙間すきままぶたひらいたやうにあかるくなつたときにはとり甲走かんばしつていた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
靜かな夜を、聞かざるかとりんを鳴らして行く。鳴る音はせばき路を左右に遮られて、高く空に響く。かんからゝん、かんからゝん、と云ふ。石に逢へばかゝん、かゝらんと云ふ。陰氣な音ではない。
京に着ける夕 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それは高瀬船たかせぶね船頭夫婦せんどうふうふが、りてもりなくても自分じぶん家族かぞく唯一ゆゐいつ住居すまゐであるへさきつくられたはこのやうなせばいせえじのなかはなしてこゑであつた。乳呑兒ちのみごこゑまじつてきこえた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)