海浜かいひん)” の例文
一昨日おとついばんよいの口に、その松のうらおもてに、ちらちらともしびえたのを、海浜かいひんの別荘で花火をくのだといい、いや狐火きつねびだともいった。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天気のよい日は海浜かいひんの砂地で、雨の降る日は仕方なくその狭い小屋の中で、ただ溜息と愚痴とのうちに、一日一日を過していた。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その夏は、海岸林間学校が相模湾さがみわんの、とある海浜かいひんにひらかれていたので、柿丘夫妻は共にその土地に仮泊かはくして、子供たちの面倒をみていた。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(社領五百石)此山さのみ高山にもあらざれども、越後の海浜かいひん八十里の中ほどに独立どくりうして山脉さんみやくいづれの山へもつゞかず。
にちまちうらや、たんぼや、またかわふちや、海浜かいひんなど、方々ほうぼうしょくもとめるのでした。一がなにかいいものをつけましたときは、これをみんなにらせました。
翼の破れたからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
秋の中過なかばすぎ、冬近くなるといずれの海浜かいひんとわず、大方はさびれて来る、鎌倉かまくらそのとおりで、自分のように年中住んでる者のほかは、浜へ出て見ても、里の子、浦の子、地曳網じびきあみの男
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ことに有名な紀三井寺きみいでら蓊欝こんもりした木立こだちの中に遠く望む事ができた。そのふもとに入江らしく穏かに光る水がまた海浜かいひんとは思われない沢辺さわべの景色を、複雑な色に描き出していた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
眺望ちょうぼうのこれと指して云うべきも無けれど、かの市より此地まであるいは海浜かいひん沿いあるいは田圃たんぼを過ぐるみちの興も無きにはあらず、空気ことに良好なる心地して自然と愉快ゆかいを感ず。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「メグ、ってのは、芳衛さんのことで、虚栄の市、ってのは、海浜かいひんホテルのことなの」
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
播州ばんしゅうの山々や僻地へきち海浜かいひんがふくまれているため、いたるところに土豪が住み、強賊ごうぞくが勢力をつくり、これらの土匪どひ討伐とうばつしていたひには、ほとんど、戦費と煩労はんろうに追われてしまい
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼処そこでもない此処ここでもないと勝手次第にさそうな地所じしょを見立てゝ、いよ/\芝の三田みたにある島原しまばら藩の中屋敷が高燥こうそうの地で海浜かいひんの眺望も良し、塾には適当だと衆論一決はしたれども
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
去年の夏だ、八田潟はったがたね、あすこから宇木村うのきむらへ渡ッて、能登のと海浜かいひんしょうさぐろうと思って、うちを出たのが六月の、あれは十日……だったかな。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(社領五百石)此山さのみ高山にもあらざれども、越後の海浜かいひん八十里の中ほどに独立どくりうして山脉さんみやくいづれの山へもつゞかず。
「じゃ、僕ものせて行ってくれませんか。海浜かいひんホテルにいる外人に、ちょっと用談があるんですがね。」
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
また、先頭せんとうのからすは、にあった野原のはらや、かわや、海浜かいひんや、むらや、まちなどにも注意ちゅういくばらなければなりません。いつ、どんなものが、自分じぶんたちをねらうかわからないからです。
翼の破れたからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
 順徳院の御製に(承久のみだれに佐渡へ遷幸の時なり)「みやこをばさすらへいで今宵こよひしもうき身名立なだちの月を見るかな」▲直江津なほえのつ 今の高田の海浜かいひんをいふ。
 順徳院の御製に(承久のみだれに佐渡へ遷幸の時なり)「みやこをばさすらへいで今宵こよひしもうき身名立なだちの月を見るかな」▲直江津なほえのつ 今の高田の海浜かいひんをいふ。
東北はねずみが関(岩船郡の内出羽のさかひ)西にし市振いちふり(頸城郡の内越中の堺)にいたるの道八十里が間すべて北の海浜かいひんなり。海気によりて雪一丈にいたらず(年によりて多少あり)又きゆるも早し。
東北はねずみが関(岩船郡の内出羽のさかひ)西にし市振いちふり(頸城郡の内越中の堺)にいたるの道八十里が間すべて北の海浜かいひんなり。海気によりて雪一丈にいたらず(年によりて多少あり)又きゆるも早し。