次第わけ)” の例文
「承知しました。今度の日曜に行って出来るけ早く切り上げさせましょう。一日でも早ければそれ丈け伯母さんの顔が立つ次第わけです」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これはおのずからしずくして、下の板敷のれたのに、目の加減で、向うから影がしたものであろう。はじめから、提灯がここにあった次第わけではない。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やっと仮病人けびょうにん次第わけが分ったので、守青年は俄かに安堵あんどを感じながら、彼の口辺にも、思わず笑いが浮かんだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
先日も手紙で申上げたやうな次第わけで、当時差しかゝつた用事がありますので、ほとんど足を抜くことが出来ないのですが——何だか無闇むやみに貴女が恋しくなつたもんですから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
とまあ言い含めて出してやった次第わけなんで——お騒がせして、相済みません、へえ。
「然う分って戴ければ僕も主張しません。斯うしましょう。僕の方は明日ってことにめましょう。明日なら僕の方が一日早い次第わけです」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その様な者は来ない、何ぞまた此家ここへ来たという次第わけでもあるのか。「私どもの部屋からこぼれて続いてる血の痕が、お邸の裏手で止まっております。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ハヽヽヽイヤうも驚きました、成程、さすが明智の松島大佐も、恋故なれば心もやみと云ふ次第わけわすかな、松島さん、シツカリ御頼おたのみ申しますよ、相手がかく露西亜ロシヤですゼ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
『何れを見ても山家育やまがそだち。繁華の地と違い』って次第わけで、侍の子は我輩一人だった。小さい刀を一本差していた。自然押しが利く
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
対手あいてにならないが、次第わけは話そう。——それ、弁持の甘き、月府のきさ、誰某たれそれと……久須利苦生の苦きに至るまで、目下、素人堅気輩には用なしだ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「今日は又た曇つて来た、何卒どうぞ降雪ふらねば可いが」と、空ながめながら伯母は篠田を見送りの為め、其の後に付いて、雪の山路を辿たどり来りしが「其う云ふ次第わけで、長二や、気を着けてお呉れよ、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「でも、あの男はマザーの信用がありますからな。それに僕の分まで働いているんですから、感情を害する次第わけには行きません」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そんな、そんな貴女あなたつまらん、しからん事があるべき次第わけのものではないです。けがれた身体からだだの、人に顔は合わされんのとお言いなさるのはその事ですか。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それはその折直感したことだったが、申開きの立つまでは訊いて見る次第わけにも行かなかった。しかし今や自分の立場の説明がついたので
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その肖たという事の次第わけを話すがね、まあ、もっとお寄んなさい。大分だいぶまぶしそうだ。どうも、まともに日が射すからね。さあ、遠慮をしないで、お敷きなさい。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「無論出世さ。幾度も話しているじゃないか? 自叙伝に粉骨砕身ふんこつさいしんしてから、感心な奴だという次第わけで引き立てゝ貰うんだよ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
晃 これか、谷底にめばといって、大蛇うわばみに呑まれた次第わけではない、こいつは仮髪かつらだ。(脱いで棄てる。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
てのひらかえしたようで可笑おかしいが、僕は今はお父さんに日本中の面白いところを是非隈なく歩いて戴かなければならない。その次第わけは先ず斯うだ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「お前これから駿河台へ行っての、次第わけを申して御老体御苦労じゃが、鮫ヶ橋まで御出向おでむきのあるように、なりたけ内証での、そこを旨く、可いか。」「はッ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「叱ったって次第わけでもありませんが、新太郎君があんまりいつまでも帰って来ないものだから、伯父さんの御機嫌が悪いんです」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
といった次第わけで、雪の神様が、黒雲の中を、おおきな袖を開いて、虚空を飛行ひぎょうなさる姿が、遠くのその日向の路に、螽斯ばったほどの小さな旅のものに、ありありと拝まれます。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな次第わけで河原老人は特別関係だったが、ほかの同僚とも追々懇意になった。殊に英語の同僚は交渉が多いから、否応いやおうない。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おのずと変なこともなくなりましょうと、相談をいたしまして、申すもいかがでございますが、今日こんにち久しぶりで、かしも使いもいたしましたような次第わけなのでございます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気がついたときはもうおそかった。原口君が信用がないとすれば、原口君に引き廻される僕も信用がない次第わけだ。社長令息が何かの問題について
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「どういう次第わけだか知らないけれど、折角あんなにお謂いのだから持って行くが可いよ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と奥さんはその次第わけの説明が長かった。安達君のところでは長兄が某私立大学へ入ると間もなく金を使い始めて、半途退学の余儀なきに至った。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
……その次第わけは「島津は近頃浮気をして、余所よそおんなと、ここで逢曳あいびきをするらしい。」……
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「場で顔を合せるだけです。別に仲違いをしたって次第わけでもありませんから、話もします。しかしもう一緒に歩きません」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
売溜うりだめ金子かねはいくらあろうと鐚一銭びたいちもんでも手出てだしをしめえぜ。金子で買ってしのぐような優長な次第わけではないから、かつえてるものは何でも食いな。寒い手合は、そこらにあるきれでも襯衣しゃつでも構わず貰え。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
持ちかけるのさ。それじゃ西遠寺さんにお目にかゝる研究が一番出世の近道ですわねと言っていたよ。本当です。大いにやりましょうってな次第わけ
善根鈍根 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
学円 その鳴らしてならないというは、どうした次第わけじゃね?
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「実は僕もそれを言ったんだけれど、突っ込まれて返辞に困った。単に君が貰ってくれるだろうという想像で有力な縁談を断る次第わけには行かない」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ええ、いや、てまえの方で、気にしない次第わけには参りません。」
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし広く世間へ出て探す次第わけに行かないから、親が然るべき候補者を吟味して当てがう。娘は交際して見て、その中から気に入ったのを極める。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ああ、じゃあ、それからまたよりが戻った次第わけだな。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬は毎回馬槽うまおけ一杯当てがわれて、後は文句を言わない。袖の香組は実力組に較べると、背景があるから裕福な次第わけだ。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
次第わけと申すは、余の事、別儀でもござりませぬ。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「溝淵閣下の令嬢を貰う。落伍したんでも何でもない。仲人に横領されてしまったんだ。自分ながら次第わけが分らない」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「自分でも次第わけが分らない。僕を採用した校長が転任して、教頭の野郎が昇格したんだ。すると単に学校の都合だから余所よそへ行ってくれという相談さ」
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「今に何かやるよ。屹度やる。まあ/\き立てないでお呉れ——食うに困るという次第わけでもないんだからね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『さあ、この怪我人を何うして下さる』というような次第わけで、今度は車屋仲間が私達を取り巻きました。江戸っ子も斯うなると全然から意気地がありません
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「しかし不思議なものだよ。皆、兎に角食っていく。金持になったって胃袋の大きさが倍になる次第わけでもなかろう」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「東金も格式が出来た。娘さんの嫁入り先のお母さんは華族さんから来ているそうだ。して見れば華族さんと親類になった次第わけだから素晴らしいものだ」
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「残っているものが少ないから当りくじが多い次第わけさ。しかし我輩は死ぬのを恐れてこんなことを言うのじゃない」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そういう家庭の事情なら本当の仕事は出来ないからという次第わけで、到頭引かなければならないことになりました
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昨今は本業以外に芝居の方も引受けて、雑誌を発行している。義太夫のことなら何でも鐘太夫のところへ持って行けという次第わけだ。仕事が一ところに集まる。
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
見たいのですが、人目がありますから、会社の玄関まで来て貰う次第わけに行きません。それで有り得る中で一番近い而も一番安全な地帯で待っていて貰ったのです
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
僕は特別に女が好きという次第わけではないが、一番綺麗なのに目を留めて、其奴がどれくらい菊太郎君に好意を持っているかを考えて見る。当り前なら構わない。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「教員会議で定ったことを私一人で動かす次第わけに行きません。この問題丈けなら、もうこれで失敬します」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「大丈夫でございますよ。未だ肺炎と定まった次第わけではありませんから、御心配なすっちゃいけません」
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)