ちょう)” の例文
最近少し余裕が出来たので、音楽好きの子供にねだられて、やっとセロを一ちょう買ってやった妻に、彼はあまり好い顔をしなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それからルグランは、自分で一ちょうすきを取り、ジュピターに一梃、私に一梃渡して、できるだけ速く掘りにかかってくれと頼んだ。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
勇ましくけて来た二ちょう人力じんりきがまた追い越すのかと思ったら、大仏を横に見て、西洋軒のなかに掛声ながら引き込んだ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すこしおそいが、大引おおびけ過ぎのこぼれを拾いに、吉原なかへでもかせぎに行こうと、今し本所ほんじょのほうから、吾妻橋の袂へさしかかっていた一ちょうの辻駕籠。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
隊列を整えて馬橋まばしから南へみちをとり、中野で銃口つつぐちを城に向け、三十ちょう一時に放発して、君臣手ぎれの狼火のろしに代えた。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
そこで二ちょうをつけて、一梃に二人がかかって一里くと交替した。笑う者もあった、喋舌しゃべる者もあった。その声は水を切ってく音と入り交った。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
ちょうの夜駕籠しきりと道をいそぎ行くかたわらに二匹の犬その足音にも驚かず疲れて眠れる姿は、土手下の閉ざせる人家の様子と共に夜もいたくけ渡りしのみか
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
卵色の壁には大型のシェイフィルド銃と、古風な村田銃との二ちょうの猟銃が横に架けられてあった。その下前には弾嚢帯だんのうたい折釘おれくぎからだらりとるされていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ちょうこてを持って逃走し、アントウェルプ府に赴き、それから国境を越えようとする時に、一書をオランダ議会に送って、そのえんを訴えて脱獄の理由を弁明し
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
晩秋の日はれるのが早く、街には、もう灯がつきはじめていた。駕籠かごでゆこうと思ったが、自分だけということにはいかないし、二ちょう雇うにはぜにが惜しかった。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
つまり二ちょう拳銃さ。きみたちは、だれももうピストルはもっていない。こうなったら、おれの命令にしたがうほかはないね。さあ、そこをのくんだ。ニコラさまのお通りだ。
超人ニコラ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
叛軍に対する所罰としては、銃五十ちょうの没収、未納の税金徴収、二十マイルの道路工事等が課せられたに過ぎなかった。前のマターファの場合の厳罰と比べて余りにも不公平である。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
享保十年の春、主水は元服して鉄砲三十ちょう頭に任命され、本知行ほんちぎょう二百石取になり、その年、同藩の物奉行明良あきら重三郎の次女安をめとった。翌年、太郎を生み、つづいてお徳が生れた。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「われわれの知るところによれば、フォーブール・ポアソンニエール街五番地(乙)の武器商の中庭に、五、六千ちょうの小銃がある。わが区隊は目下武器をまったく有していない。」
提灯ちょうちんが二ちょう、平次と八五郎は、番頭の為之助に案内させて、お勝手から入りました。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
けれども大人おとなかしこい子供らは、みんな本当にしないで、笑っていました。第一それをいだしたのは、剃刀かみそりを二ちょうしかもっていない、下手へた床屋とこやのリチキで、すこしもあてにならないのでした。
毒もみのすきな署長さん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
乗馬倶楽部くらぶの者だと云って新しい藁切庖丁わらきりぼうちょうを一ちょう買って行った。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
長刀なぎなたふた振。——まさかり二ちょう。——弓、半弓二張ずつ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
波止場へ着くと、一ちょう大鎌おおがまと三梃のすきとが我々の乗って行こうとするボートの底に置いてあるのに気がついた。どれもみな見たところ新しい。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
その、大迫玄蕃と浅香慶之助のところへ、喬之助が前記の如く抹殺線まっさつせんを引いて、一番首二番首と書き入れをした時、おもてに、三ちょう駕籠かごまった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
駕籠のそばには、矢崎舎人とねりと成瀬久馬が待っていた。駕籠は二ちょうあり、うしろの駕籠を見ると、伊東七十郎がにやっと笑い顔を見せた。「考え直しましてね」と七十郎は云った。
ふいに、十数ちょうのピストルを、向けられたのですから、どうすることもできません。
魔法博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たしかにみんなそう云う気もちらしかったのです。製板の小屋こやの中はあいいろのかげになり、白く光る円鋸まるのこが四、五ちょうかべにならべられ、その一梃はじくにとりつけられて幽霊ゆうれいのようにまわっていました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
何等罪状の指摘できないマターファ(彼は、いわば喧嘩けんかを売られたに過ぎぬのだから)が千カイリ離れた孤島に流謫るたくされ、一方、島内白人の殲滅せんめつ標榜ひょうぼうして立った小タマセセは小銃五十ちょうの没収で済んだ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そこから、二ちょう拾って日本橋へ走らせた。いつのまにか、空気が寒くひき締まって、降雪ゆきを思わせていた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
どなり声といっしょに、二ちょうのピストルが、こちらをねらっています。
妖星人R (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おみやはつじ駕籠を二ちょうよび、「真崎の渡しまで」と命じた。
ちょう鉄梃かなてこをもって下流の方からのぼって来るのを見ました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
駕籠かごが二ちょう、夕やみのなかにとまっている。と、その時、後の駕籠の垂れをはぐってのぞいていた武士さむらいの顔!
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
縁起棚の下に、さっき弾きあきたらしい三味線が一ちょう、投げだしてあるきり、まことに夏向きの、ガランとした家で、花がるたを散らしに貼った地ぶくろも、いかさまお藤姐御あねごの住まいらしい。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
駕籠は二ちょう——早籠はやです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)