日光)” の例文
こまやかな肉が、ほどよく色づいて、強い日光にめげないように見える上を、きわめて薄くが吹いている。てらてらひかる顔ではない。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
来客らいかくの目覚しさ、それにもこれにも、気臆きおくれがして、思わず花壇の前に立留まると、うなじからつまさきまで、の葉も遮らずかっとして日光した。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さぐることも發見みいだすことも出來でき有樣ありさま——それがためにならぬのはれてあれど——可憐いたいけなつぼみそのうるはしい花瓣はなびらが、かぜにもひらかず、日光にもまだ照映てりはえぬうちに
としふゆ雪沓ゆきぐつ穿いて、吉備国きびのくにから出雲国いずものくにへの、国境くにざかい険路けんろえる。またとしなつにはくような日光びつつ阿蘇山あそざん奥深おくふかくくぐりりてぞく巣窟そうくつをさぐる。
寛文四年五月中旬のさわやかな日光は、この山国の旧家の庭いっぱいにあたっていた。
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
窓近くさしでたる一枝は、枝の武骨なるに似ず、日光のさすままに緑玉、碧玉へきぎょく琥珀こはくさまざまの色に透きつかすめるその葉の間々あいあいに、肩総エポレットそのままの花ゆらゆらと枝もたわわに咲けるが
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「女の人なんか日光の差し工合だって奇麗にもきたなくも見えるもんだよ。」
蛋白石 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
杉だか何だか日光とおって赤く見えるほど薄っぺらな障子しょうじの腰だのを眼にするたびに、いかにもせせこましそうな心持になる。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日光の差し工合だって女の人は奇麗に見えるよ」
千世子(三) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ヂュリ なりゃ、まどよ、日光うちへ、いのちそとへ。
それへ東窓ひがしまどれる朝日のひかりが、うしろから射すので、かみ日光さかいの所がすみれ色にえて、きたつきかさ脊負しよつてる。それでゐて、かほひたひも甚だくらい。くらくて蒼白あをしろい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何だか一面に粉がいて、光沢つやのない日光あたつた様に思はれる。かげところでも黒くはない。寧ろうすむらさきしてゐる。三四郎は此画を見て、何となく軽快な感じがした。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それへ東窓をもれる朝日の光が、うしろからさすので、髪と日光の触れ合う境のところが菫色すみれいろに燃えて、生きたつきかさをしょってる。それでいて、顔も額もはなはだ暗い。暗くて青白い。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今日けふは白いものを薄くつてゐる。けれども本来のかくす程に無趣味ではなかつた。こまやかなにくが、程よく色づいて、つお日光げない様に見える上を、極めて薄く粉が吹いてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんだかいちめんにが吹いて、光沢つやのない日光にあたったように思われる。影の所でも黒くはない。むしろ薄い紫が射している。三四郎はこの絵を見て、なんとなく軽快な感じがした。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)