恋人の冷淡に思われることも地理的に斟酌をしなければならないと、しいて解釈してみずから慰めることなどもできなくなって
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「そんなご斟酌は要りません。吉岡の侍と分っていればなおさらのことです、私が怖がる意味は少しもありません。……さあまいりましょう」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
皇国固有の国体と万国公法とを斟酌して御採用になったのも、これまたやむを得ない御事であると心得よと告げてある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
各種にわたった技術家諸職工等を招きそれらの考えを聞き、自分の考えと参考斟酌して概略のところをまず決定されておられたようなことであった。
幕末維新懐古談:52 皇居御造営の事、鏡縁、欄間を彫ったはなし (新字新仮名) / 高村光雲(著)
今までの手口から見て、無恥で、残酷で、手加減も遠慮もないところを見ると、どう斟酌して考えても、人間らしい心の持主とは思えなかったのです。
銭形平次捕物控:077 八五郎の恋 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット (旧字旧仮名) / ウィリアム・シェークスピア(著)
ところがそれではあまり乱暴すぎる、両親にはもう少し斟酌しなくちゃ、手紙だってもう少し穏やかに書かなくちゃと言って、非難するものがあったのです。
罪と罰 (新字新仮名) / フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
故に原始的刑法の盗罪に対する公権力制裁においては、この点を斟酌して、相当の区別を設けるのでなくては、もって私力的制裁に代わるに足りないのである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
こういう道義的アナーキズム時代における人の品行は時代の背景を斟酌して考慮しなければならない。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド―― (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「それは念には及び申さぬ、なまじ斟酌して射損ずるよりは、いささかも遠慮せず一矢に射落し候え」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
久保田米斎君の思い出 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その日における牛の機嫌とか、闘志とかを観察斟酌して、相手を定めるのである。つまり甲牛の戦歴、力量を基本とし、きょうの条件ならば、乙牛と組合わせるのが適当であろう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
農場において増殖し得られるものでもないという原理を斟酌せねばならぬ。
純粋経済学要論:01 上巻 (新字新仮名) / マリー・エスプリ・レオン・ワルラス(著)
いささか同情を表したり斟酌を加えたりできるのが、誰に限らずいい気持だったのである。しかしこの楽しみにほんとは充分加わり得る人たちの中にも、仲間入りをしない者がいくらかあった。
トリスタン (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
私は、年少の友に対して、年齢の事などちっとも斟酌せずに交際して来た。年少の故に、その友人をいたわるとか、可愛がるとかいう事は私には出来なかった。可愛がる余裕など、私には無かった。
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
おかみさんはしかし、その事情を斟酌しなかった。そして言った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記―― (新字新仮名) / 金子ふみ子(著)
「貴殿方の御好意はよく分かっている。そのお心なればこそ、拙者に中座せよといわれたのであろう。しかし、先ほども申した通り、私事は私事、公事は公事。この場合左様な御斟酌は、一切御無用に願いたい」
バグリオーニの意見を大いに斟酌したであろう。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から (新字新仮名) / ナサニエル・ホーソーン(著)
「弁官はまた特別に御用が多いから、忠誠ぶりを見ていただけないからといっても、少しは斟酌していただかないでは」
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
互いの事情を斟酌する必要がそこから起こって来る。それには「真知」をもってせねばならない。そもそも外国人は何のために日本へ来るのであるか。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
説明であり、忠告であり、多少横柄な斟酌であって、非難と容赦とを交じえているので自ら英知であると信じてはいるが、多くは半可通にすぎないものである。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)