敷物しきもの)” の例文
家の中はまっくらで、しんとして返事へんじをするものもなく、そこらにはあつ敷物しきもの着物きものなどが、くしゃくしゃらばっているようでした。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
長い敷物しきものを敷きつめた廊下を横切つて、私は滑らかな樫の階段を下りた。そして廣間に出た。そこで、私は、ちよつとの間、足を停めた。
には、くさがしげっていましたが、いまはもう黄色きいろくなって、ちょうどやわらかな敷物しきもののように地面じめんたおれていました。
町はずれの空き地 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ガンの仲間たちは、この花の敷物しきものを見たとき、びっくりしました。南部地方で、すこしぐずぐずしすぎたと思ったのです。
それが部屋の大きさにくらべると、丸でり合が取れないから、敷物しきものとしていたといふよりは、色のい、模様のな織物としてほうりだした様に見える。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そこへ茣蓙ござなんぞ敷きまして、その上に敷物しきものを置き、胡坐あぐらなんぞかないで正しく坐っているのがしきです。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
床には黒い敷物しきものがしかれた。そして、その前に、棺桶かんおけの様な木箱と、一箇のテーブルが持出された。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すべすべとしてきぬ敷物しきもののうえに、二ひきの蛇をのせて見ると、さわいではいまわるほうが雄蛇おすへびであり、じっと静かにしているのは雌蛇めすへびということを知っていたので
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ものの二ちょうばかりもすすんだところひめ御修行ごしゅぎょう場所ばしょで、床一面ゆかいちめんなにやらふわっとした、やわらかい敷物しきものきつめられてり、そして正面しょうめんたなたいにできた凹所くぼみ神床かんどこ
夫婦づれで出て来て、国王はただ羅紗ラシャの服を着て居ると云うくらいな事、家も日本で云えば中位ちゅうぐらいの西洋造り、宝物たからものを見せると云うから何かとおもったら、鳥の羽でこしらえた敷物しきものもって来て
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
デカとピンとチョンが、白茶しらちゃのフラシてん敷物しきものを敷きつめた様な枯れてかわいた芝生しばふ悠々ゆうゆうそべり、満身に日をびながら、遊んで居る。過去は知らず、将来は知らず、現在の彼等は幸福こうふくである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「おおせをお伝えいたしましたが、みこはお聞き入れがございません。おれの妹ともあるものを、あんなやつの敷物しきものにやれるかとおっしゃって、それはそれは、刀のつかに手をかけてご立腹になりました」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
きれいな敷物しきもの
それからたまらずまたたちあがって、手さぐりでゆかをさがし、一枚の敷物しきものを見つけて敷布の上にそれをました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大空おおぞらは、まんまんとして、はらうえあお天蓋てんがいのように、無限むげんにひろがっているし、やわらかなくさは、うつくしい敷物しきもののごとく、地上ちじょうのとどくかぎりしげっていました。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして始めてた勝利であつた。私はブロクルハーストさんの立つてゐた敷物しきものの上に、しばらくつゝ立つて征服者の孤獨の感を樂しんでゐた。最初おのづと微笑が浮び、昂然と氣勢が上つた。
だまってそのを聞いていると、そこらにいちめん黄いろや、うすいみどりの明るい野原のはら敷物しきものかがひろがり、またまっ白なろうのようなつゆ太陽たいようめんをかすめて行くように思われました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)