成仏じょうぶつ)” の例文
旧字:成佛
兎も角もそのお住の得脱とくだつ成仏じょうぶつするように、仏事供養を営むが可かろうという事に一決して、一同その墓所へ参詣し、懇切ねんごろに回向した。
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この世で貧苦にいためつけられ、一生うだつのあがらない人たちは、せめて安楽往生、来世での成仏じょうぶつということに頼りたくなる。
最後の䬻別はなむけそちに進ぜる! 『現世において安心を得、後世成仏じょうぶつせんと思わば、神のくにに属しまつる御一方おんひとかたより、許すとの一言承われ!』
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして成仏じょうぶつの唯一手段最上秘密の方法としては僧侶たる者は女を持ち、肉を喰い、酒を飲み、踊りかつ歌うということが最も必要である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
私はその願いが念仏によって成仏じょうぶつする時に、満足するものと信じています。私は死ぬるまでこの願いを持ち続けるつもりです。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
したがって、「往生」することが、成仏じょうぶつすなわち仏になることです。仏となることは、つまり無限の生命を得ることなのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
吉「あ、あ、有難うがす、わっちも今更発心ほっしんしました、死ぬる命はおしみませぬ、うか楽に成仏じょうぶつの出来ますよう、念仏の一つも唱えて下せえまし」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
頭から尻までゴチャゴチャになってしまうんですからドンナに有難いお経を聞かされたって成仏じょうぶつ出来っこありません。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「いい成仏じょうぶつをしろよ!」と小林の差図で工夫の一人がショーブルで土を小さい棺桶の上に落した。私はせめてもの心やりに小石を拾って穴に入れる。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
私はかつて『俳諧須菩提経すぼたきょう』というものを書いた。これは仮りにも十七字という俳句に接したものはことごと成仏じょうぶつするという意味のことを書いたのである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
禅は「見性けんしょう」というが、それは本有の性を直ちに見よとの意である。これを見ることが「成仏じょうぶつ」なのである。美の世界にもこの成仏がなければならない。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
男が女を得て成仏じょうぶつする通りに、女も男を得て成仏する。しかしそれは結婚前の善男善女に限られた真理である。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「どうぞ親分。早く殺した奴を、捕えておくんなさいまし。せめて娘を、成仏じょうぶつさせてやりとうございまする」
父君の成仏じょうぶつの道の妨げをさえしているかと病女王もそれを聞いて、そのまま息も絶えんばかりに悲しんだ。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
彼曰く「人間僅か五十年、人生七十古来稀、何か腹のいえるような事をりて死なねば、成仏じょうぶつは出来ぬぞ」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「どこのどなた様か存じませんがあっしは少し急ぎます。成仏じょうぶつなすって下せえやし——南無阿弥陀仏。」
生々しょうじょうの父母、世々の兄弟のうち、一人を残さば我れ成仏じょうぶつせじというのが、菩薩の御誓いだと承りました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
浮かばれぬのだ! 早く、早く修羅しゅらのうらみを晴らしてくれぬことには、いつまでも成仏じょうぶつ出来ぬこの身なのだ——雪太郎よ! 雪太郎よ! この怖ろしのさまが見えぬか!
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それにしてもどうして成仏じょうぶつされずにお迷いになっていらっしゃるのでございますか。
ホラ、ホラ、ホラ、下は紅蓮ぐれん白蓮びゃくれんの花ざかりですよ。観音様のオシッコみたいでさ。蓮の花や葉の上に、瑠璃白玉るりしらたまとなって、オシッコがすぐ成仏じょうぶつしているでしょ。ネ……お坊ッちゃま。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれは生易なまやさしいことで救える男ではない。政治なんぞで成仏じょうぶつできる男ではない。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
「定命はこれ定命で厶る。一切空と観じ、雑念あっては、成仏じょうぶつなり申さぬぞ」
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
... さればわれその厚意こころざしで、おつつけ彼の黒衣とやらんをうって、爾がためにうらみすすがん。心安く成仏じょうぶつせよ」「こは有難き御命おおせかな。かくては思ひ置くこともなし、くわが咽喉のどみたまへ」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
獲た当初より成仏じょうぶつの後はこれを枕山に貽そうと思っていたのである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「お岩、もういいかげんに成仏じょうぶつしてくれ」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「善人すら成仏じょうぶつすいわんや悪人をや」
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
水鬼はめいもとめるという諺があって、水に死んだ者のたましいは、その身代りを求めない以上は、いつまでも成仏じょうぶつできないのである。
釈迦牟尼如来が成仏じょうぶつなされた樹の下で私がまた坐禅することの出来るのは実に幸福しあわせであると我を忘れて徹夜致しましたが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
成仏じょうぶつなすってくださいまし。そうしてどうぞこのわたしを、お許しなすってくださいまし。妾は一人になりました。みよりのないものになりました。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
目に見ゆるものそのままが成仏じょうぶつの姿で、人間の職業などに何の甲乙があろう。それもよくあれもよい。今の自分の境遇を一番いいとも思わぬがまた悪いとも思わぬ。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ちょうどあの「往生」ということばが、「死」ということ、と同じように思われているごとく、「涅槃ねはん」とか、「成仏じょうぶつ」などといえば、死と同一に考えられているのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
ファウストのグレートヘンの「審判された」が「救われた」となるように、私も親鸞の煩悩に苦しみつつ死ぬるのを成仏じょうぶつと読者に感ぜられるように描きたいと思っています。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
老人にろくなものがいないのはこの理だな、吾輩などもあるいは今のうちに多々良君のなべの中で玉葱たまねぎと共に成仏じょうぶつする方が得策かも知れんと考えてすみの方に小さくなっていると
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あれは生易なまやさしいことで救へる男ではない。政治なんぞで成仏じょうぶつできる男ではない。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
『大事を妻にもらすな、おんなは知恵浅く、無遠慮なるによって、他に洩して仇となるぞ』とありますが、仏様のお教えにも女は成仏じょうぶつができない、孔子様も女子と小人など仰せられまして
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何年限りきたれば気が済むことか、前の目途でもあることか、浦島、武内も今は死人なり。人間僅か五十年、人生七十古来稀。何か腹のいえるような事をりて死なねば成仏じょうぶつは出来ぬぞ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
君等には関係のない事かも知れんが、これから行って大いに弔問してやらなくちゃならん。……もっとも今更、線香を附けてやったって成仏じょうぶつ出来まいとは思うがね。ハッハッハッハッハッ……
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私の考えでは、美しい物とは、成仏じょうぶつした物という意味がある。成仏は救われたもの、目覚めたものを意味し、道元禅師の言葉を借りれば、美しいものは「仏が行ぜられた図」だといってよい。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
船「おゝ合点がってんだ、客人成仏じょうぶつさっせえ、それ/\江戸の客人危ねえぞ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「何事も、約束事じゃ。成仏じょうぶつしてたもよ……怨むなよ」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「迷わず成仏じょうぶつ——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
とは云え、世になき人の執念は、法華経の功力くりきによって、成仏じょうぶつ解脱げだつのすべもあれど、容易に度しがたいは、世にある人の執念……。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すなわち酒を飲み肉を喰い女色を愛しつつ禅定ぜんじょうを修めて、直ちに即身成仏じょうぶつすることが出来るのであるという。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「現世において安心を得、死後成仏じょうぶつせんと思わば、神のくにに属する御一方おんひとかたより、許すの一言承われ!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ただ、中に「隅田川すみだがわ」とか、「あやつづみ」の如きものがあって、これらはどこまでも苦悶くもん憂愁執著しゅうじゃくが続くのであるが、こういうものは異例である。大概成仏じょうぶつして舞を舞うという事に終る。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
その人は如何なる意味から見ても悪いということをおこなったにせよ、ありのままをありのままに隠しもせず漏らしもせず描き得たならば、その人は描いた功徳くどくに依ってまさ成仏じょうぶつすることが出来る。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仏になるにはどうしたらよいかということを、とにかく朝から晩まで、それは精進している人も、怠けている人もありますけれども、とにかく成仏じょうぶつするか、しないかということを問題としている。
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
思うも涙、後生ごしょう成仏じょうぶつを思うてよろこぶにも涙こぼるるなり、鳥と虫とは鳴けども涙落ちず、日蓮は泣かねど涙ひまなし……と御遺文のうちから、私が清澄におります時に、朋輩から教えられたのを
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この世には天才ならずとも、独創ならずとも、立派に美しさを示し得る道が、凡夫ぼんぷのために用意されているのであります。美の世界においてもまた、「凡夫成仏じょうぶつ」の教えが確立されねばなりません。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「……兄さん、どうかこれで成仏じょうぶつしておくんなさい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)