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慴伏
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しょうふく
ふりがな文庫
“
慴伏
(
しょうふく
)” の例文
一度烈風が襲来すると、雪は吹き捲られて煙の如く渦を巻いて昇騰し、面を向くべき方もなく、ただその猛威に
慴伏
(
しょうふく
)
するばかりである。
尾瀬沼の四季
(新字新仮名)
/
平野長蔵
(著)
白雲によって悪い方は
慴伏
(
しょうふく
)
される。悪い方が慴伏されると勢い、いい部分だけの能力を現わすから、マドロスを抑えるには白雲に限る。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ほとんど衆みなその方の
威権
(
いけん
)
に
慴伏
(
しょうふく
)
し、あえてその非を鳴らす者もなかろうが、かかる時こそ、そち自身は、
一
(
いっ
)
そう慎まねばなるまいぞ
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「今のはベラントの
失言
(
しつげん
)
でございます。博士、世界をたちまち
慴伏
(
しょうふく
)
させる新兵器といたしましては、どんなものを
御在庫
(
ございこ
)
になっていましょうか」
共軛回転弾:――金博士シリーズ・11――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
謙信馬返し岩は粟沢の奥にあるという謙信ヶ洞と同じく、其猛威に
慴伏
(
しょうふく
)
した土地の人が命名したもので、
所謂
(
いわゆる
)
弁慶と同様に意昧のないものと信ずる。
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
「彼は被告として公判廷に
出
(
い
)
ずる度に猛烈な兇暴態度を示しながら、且つ其雄弁と剛腹とは全法廷を
慴伏
(
しょうふく
)
していた」
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
而しそれは自己の
慴伏
(
しょうふく
)
によつて到達せらるゝのである。最善の愛は信実と忍耐とである。それのみが独りよく深遠なる精神力を釈放し、人間を神聖の域に結び付ける。
恋愛と道徳
(新字旧仮名)
/
エレン・ケイ
(著)
それは無限の彼方を、万物を
慴伏
(
しょうふく
)
させつつ渡つてゐた。轟々と天伝うてゐた。ピタゴラスの説いてゐる天体音楽といふことを、私はたしか心理の講義で聞いたことがある。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
卑陋
(
ひろう
)
な
賤民
(
せんみん
)
扱いにされていた小説等の散文学が、最近十八世紀末葉以来、一時に急速な勢力を得て、今や
却
(
かえ
)
って昔の貴族が、新しい平民の為に
慴伏
(
しょうふく
)
され、文壇の門外に
叩
(
たた
)
き出された。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「つまり彼は威嚇をもって、相手を
慴伏
(
しょうふく
)
させたのだ」将監は先へ語りつづけた。「こいつと目差した船があると、まずその進路を
要扼
(
ようやく
)
し、ドンと大砲をぶっ放すのだ。だがそいつは空砲だ。 ...
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
年の頃は三十五六歳、
険高
(
けんだか
)
な、蒼味がかった面の、唇ばかり毒々しく赤い、異相というのではないが、なんともいい表しがたい凄惨な色が流れていて、なにか人を
慴伏
(
しょうふく
)
させるような気合がある。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
祖父は
体躯
(
たいく
)
は小さかったが、声が
莫迦
(
ばか
)
に大きく、怒鳴ると皆が
慴伏
(
しょうふく
)
した。中島兼吉と言い、後に兼松と改めたが、「
小兼
(
ちいかね
)
さん」と呼ばれていて、小兼さんと言えば浅草では偉いものだったらしい。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
朝の小雨さえなくば、常勝将軍ナポレオンはその異常なる軍事的天才を以て、見事に敵を破り得たであろう。かくて欧州全土は彼の暴威の下に
慴伏
(
しょうふく
)
したであろう。しかしながら神は地を治め給う。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
天下はその威武の前に
慴伏
(
しょうふく
)
した。
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかし信長の左右すべての人々が、信長の
震撼
(
しんかん
)
に
慴伏
(
しょうふく
)
して、一瞬、
寂
(
せき
)
としたまま、声もないので、しばらく彼もそこを起ちかねていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
況
(
いわ
)
んや、その他親族、家人らに至っては
慴伏
(
しょうふく
)
あるのみで、誰ひとり、お銀様に当面に立とうという者があろうはずがありません。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
大統領はもちろん、幕僚も建艦委員も共に金博士の
智力
(
ちりょく
)
の下に
慴伏
(
しょうふく
)
した感があった。
不沈軍艦の見本:――金博士シリーズ・10――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
これではいつまで待っていても埓が明かぬと思って、縁から座敷へ上ると、一同の狼狽ぶりは見るもあわれなくらいで、動顛して腰も立たず、雷にでも撃たれたようにその場に
慴伏
(
しょうふく
)
してしまッた。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
人寰
(
じんかん
)
との交渉を断続した筈の高い処に、
尚
(
な
)
お余り小さいながらも縮図されたる下界が存在し、そこに風雨氷雪の危険と威嚇とに打ち克って、私達の心を威圧し
慴伏
(
しょうふく
)
せんとする山岳の絶対権威に抗して
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
人はただ彼の彫刻の前に
慴伏
(
しょうふく
)
する外はなかった。
ミケランジェロの彫刻写真に題す
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
「百獣を
慴伏
(
しょうふく
)
あそばしませ。……」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
逆鱗
(
げきりん
)
は申すまでもない。お留守をあずかっていた
公卿輩
(
くげばら
)
はもちろんのこと、
行幸
(
みゆき
)
に
従
(
つ
)
いてもどった人々も、その
御気色
(
みけしき
)
に
慴伏
(
しょうふく
)
して
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いや、太閤という人は、
派手師
(
はでし
)
で人気を取るのが上手、いつもそんなことを言って人を
慴伏
(
しょうふく
)
させるのだが、信玄とても、それほどやすくはない。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
徐盛も丁奉も、夫人の烈しいことばの下に、まったく
慴伏
(
しょうふく
)
してしまった。夫人はそれと見るや、車のうちへひらりと身を移して
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宇都宮や結城の軍が、去年から、しずめに赴いているが、遠いみちのく辺りでは、幕府の権威も、とんと、土軍を
慴伏
(
しょうふく
)
するには足らぬらしい。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さよう、とにかく、
群臣
(
ぐんしん
)
も
慴伏
(
しょうふく
)
する威風がござった。その頃江戸に将軍たる者は三代家光、この義伝公を怖るること
一方
(
ひとかた
)
ではありませんでした」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その武威にあらまし
慴伏
(
しょうふく
)
してしまったが、ここになお頑健な歯のように、根ぶかく歯肉たる旧領を守って、容易に抜きとれない一勢力が残っていた。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どんな人間も
唯々
(
いい
)
として、一令にうごき、目のまえに
慴伏
(
しょうふく
)
するなどのことは、たまらぬ御快事ではあったのだろう。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また、それらの人々も、今はまったく曹操の羽振りに
慴伏
(
しょうふく
)
して、いかなる政事も、まず曹操に告げてから、後に、天子へ奏するという風に
慣
(
なら
)
わされて来た。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
がしかし、宮には猫のごとく
慴伏
(
しょうふく
)
して何一ついやがるということはない。
御命
(
ぎょめい
)
とあれば水火の中へでもとびこんでゆく。宮にはこれがたまらない御快味だった。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は、
叡山
(
えいざん
)
を焼き、
根来
(
ねごろ
)
を攻め、日本在来の教団に対しては、かつての
平相国
(
へいしょうこく
)
すらなし得ない暴をもって
慴伏
(
しょうふく
)
させて来た。弾圧などという、手ぬるいものではない。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家人
(
けにん
)
眷族
(
けんぞく
)
の
慴伏
(
しょうふく
)
の上に坐し、
有徳
(
うとく
)
な長者の風を示している大掾国香も、常南の地に、今日の大をなすまでには、その半生涯に、信義だの慈悲だの情愛などというものは
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
左右すべて彼に
慴伏
(
しょうふく
)
し、威風払わざるものはなく、たとえ
神戸
(
かんべ
)
三七信孝たりとも、丹羽五郎左衛門長秀たりとも、全軍の指揮者たるその位置には、自然
憚
(
はばか
)
らざるを得なかった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その後で、一句、こういったまま、作事監督の両役人、大地へ
額
(
ひたい
)
をすりつけて
慴伏
(
しょうふく
)
する。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
信長の武威にも勿論
慴伏
(
しょうふく
)
したが、より以上、江州の民衆が、一致して彼を支援したのは
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
郷里の畑でこういえば、小作や村の者は、
慴伏
(
しょうふく
)
したものであった。しかし、御新開の江戸へ
遽
(
にわか
)
に流れて来て、荒い土をこねている左官屋職人は、こてをうごかしながら鼻で笑った。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すでに誰いうとなく「あれは虎退治の武松だ」「
陽穀
(
ようこく
)
県で兄のあだ
西門慶
(
せいもんけい
)
をころして流されてきた
武都頭
(
ぶととう
)
だ」との
囁
(
ささや
)
きが流れていたので、たれひとり彼の前に来て
慴伏
(
しょうふく
)
しない者はない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
無条件に眼をうばい、人を
慴伏
(
しょうふく
)
させる姿をそれは
巍然
(
ぎぜん
)
と備えているのである。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いや、むしろ近頃では、彼の明敏と鋭利なひとみに
慴伏
(
しょうふく
)
しすぎて、信長自身
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さすが、それからは仕返しも断念し、腹の底から
慴伏
(
しょうふく
)
したものに相違ない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
当今、大坂城の
主
(
あるじ
)
の声といえば、公卿百官はもちろん、天下の諸侯もみな
慴伏
(
しょうふく
)
せぬはないが、晴季から見ると、まるで児童のように他愛もないのだ。自分の手の上に置いたようなものだった。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もしいま、一人の大将を下し給うて、中国征討の大事を実行あそばさるるなら、
東播磨
(
ひがしはりま
)
の明石城、高砂城の梶原ごときは、毛利
麾下
(
きか
)
といわれていても、眼前のご威風に
慴伏
(
しょうふく
)
してしまうでしょう。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鬱
(
ふさ
)
ぎ
性
(
しょう
)
から急に手のつけられない暴れン坊になった、さすがの無二斎も黙ってしまった、十手を持って
懲
(
こ
)
らそうとすれば、棒を取って、父へかかって来る始末だった、村の悪童はみな彼に
慴伏
(
しょうふく
)
し
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
並いる百官も、
慴伏
(
しょうふく
)
して、もう誰ひとり反対をさけぶ者もなかった。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
縄目は
偽
(
にせ
)
結びにしてあったのだ。智深の行動とともに、楊志や曹正なども、
慌
(
あわ
)
てふためく賊の手下どもへ立ち向っていたのはいうまでもなく、また、彼らが手もなく
慴伏
(
しょうふく
)
してしまったのは勿論だった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夏侯惇は、庁上に
慴伏
(
しょうふく
)
して、問わるるまま
軍
(
いくさ
)
の次第を報告した。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一見、みなどうにでもなるものみたいに
慴伏
(
しょうふく
)
していた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
陳父子は
慴伏
(
しょうふく
)
して
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
慴
漢検1級
部首:⼼
14画
伏
常用漢字
中学
部首:⼈
6画
“慴”で始まる語句
慴
慴服
慴然
慴慄