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愁然
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しゅうぜん
ふりがな文庫
“
愁然
(
しゅうぜん
)” の例文
「加うるに君が居ても差支えない。諸君のような人ばかりなら、
幾人
(
いくたり
)
居たって私は心配も
何
(
なんに
)
もしないが。」と梓は
愁然
(
しゅうぜん
)
として
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし干渉は来らないが、感傷の起るのはぜひもないと見えて、茂太郎は
愁然
(
しゅうぜん
)
として、同じ調子を二度繰返されてしまいました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
高橋信造は
此処
(
ここ
)
まで話して来て
忽
(
たちま
)
ち
頭
(
かしら
)
をあげ、西に傾く日影を
愁然
(
しゅうぜん
)
と見送って苦悩に
堪
(
た
)
えぬ様であったが、手早く
杯
(
さかずき
)
をあげて一杯飲み干し
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ああ
如何
(
いかん
)
して可ならん、
仮令
(
たとい
)
女子たりといえども、
固
(
もと
)
より日本人民なり、この国辱を雪がずんばあるべからずと、
独
(
ひと
)
り
愁然
(
しゅうぜん
)
、苦悶に沈みたりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
大原
怨
(
うら
)
めし顔「お登和さん、どうぞモーその事をおっしゃって下さいますな。アアとんでもない事を言ってしまった」と
愁然
(
しゅうぜん
)
として不快の色あり。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
▼ もっと見る
けれど金蓮はたちどころに、
愁然
(
しゅうぜん
)
と泣き
窶
(
やつ
)
れた身をやっと奥から起たせて来たように、見事自分を作り変えている。そして、武松の前へ出てくるやいな
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
後に残った甚五衛門は、
杯盤狼藉
(
はいばんろうぜき
)
たる座敷の中に一人
愁然
(
しゅうぜん
)
と坐ったまま、容易に動こうとはしなかった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
初さんの隣りが
長
(
ちょう
)
どんでこれは
昨日
(
きのう
)
火事で
焚
(
や
)
き出されたかのごとく
愁然
(
しゅうぜん
)
と
算盤
(
そろばん
)
に身を
凭
(
もた
)
している。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「アクーリナ」は「ヴィクトル」の顔をジッと視詰めた……その
愁然
(
しゅうぜん
)
とした眼つきのうちになさけを含め、やさしい
誠心
(
まごころ
)
を込め、吾仏とあおぎ敬う気ざしを現わしていた。
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
あまりに多くありすぎるのを考えて
愁然
(
しゅうぜん
)
とし、『人生は短かすぎる』と
幾度
(
いくど
)
も言って
嘆息
(
たんそく
)
した。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その音は、今井と僕との
永久
(
とわ
)
の別れを告げる悲しい響きであった。年上の娘は、顔を両手で隠して
慟哭
(
どうこく
)
した。人々は
愁然
(
しゅうぜん
)
として、墓場の
黄昏
(
たそがれ
)
を
背後
(
あと
)
にしながら、桜堂の山を下った——。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
青地は頭をたれ、長いあいだ
愁然
(
しゅうぜん
)
としていたが、そろそろと顔をあげ
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
先生のわが身に対する交情こそさる
通一遍
(
とおりいっぺん
)
のものにてはなかりしなれ。火鉢を間にしてわれらは互に日本服着たる姿を怪しむ如く顔見合せ今更の如く
昨日
(
きのう
)
となりにし巴里のこと語出でて
愁然
(
しゅうぜん
)
たりき。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
一同はこの
分裂
(
ぶんれつ
)
の不幸に、
愁然
(
しゅうぜん
)
として首をたれた。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
と、雪之丞は、手をつかえて、
愁然
(
しゅうぜん
)
と立ち上がる。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
Sは、
愁然
(
しゅうぜん
)
として、こういった。
扉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
裳
(
もすそ
)
すらすら入りざま、ぴたと襖を
立籠
(
たてこ
)
めて、
室
(
へや
)
の
中央
(
なかば
)
に進み寄り、
愁然
(
しゅうぜん
)
として
四辺
(
あたり
)
を
眴
(
みまわ
)
し、坐りもやらず、
頤
(
おとがい
)
を襟に
埋
(
うず
)
みて
悄然
(
しょうぜん
)
たる、お通の
俤
(
おもかげ
)
窶
(
やつ
)
れたり。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
愁然
(
しゅうぜん
)
として、老先生の頬に、寂しい影がさした。子供に返って、おいおいと、泣きたいような沈黙であった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とかく言われてお登和嬢
俄
(
にわか
)
に
愁然
(
しゅうぜん
)
と
差俯
(
さしうつむ
)
きぬ。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
愁然
(
しゅうぜん
)
としてまず早や
頭
(
こうべ
)
を垂れたのは、都下京橋区尾張町東洋新聞、三の面軟派の主筆、遠山金之助である。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
暗涙をのんで
愁然
(
しゅうぜん
)
とした独りごと——「傷はとにかく、あの男の気性として、ここまで来ながら
落伍
(
らくご
)
しては、さだめし、それが無念にたえまい。ああ
遺憾至極
(
いかんしごく
)
」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と叫べる声、奥深きこの書斎を
徹
(
とお
)
して、一種の音調打響くに、謙三郎は
愁然
(
しゅうぜん
)
として、思わず涙を催しぬ。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
悲涙をたたえ、
愁然
(
しゅうぜん
)
と藩へ訴え出た。——願わくば死を賜わらんことを、一同、自決を覚悟してである。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いえいえご酒宴を賜りながら、
愁然
(
しゅうぜん
)
とふさぎこみ、私こそ申しわけありません。仔細はこうです。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と若山は花屋の奥に端近く端座して、憂苦に
窶
(
やつ
)
れ、
愁然
(
しゅうぜん
)
として肩身が狭い。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
主従三人、
愁然
(
しゅうぜん
)
と手をつかねて湖水の
闇
(
やみ
)
を見つめていると、
瀬田川
(
せたがわ
)
の川上、——はるか
彼方
(
あなた
)
の
唐橋
(
からはし
)
の上から、
炬火
(
きょか
)
をつらねた一列の人数が、まッしぐらにそこへいそいできた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
少年も
愁然
(
しゅうぜん
)
として無言で居たが、心すともなく極めて平気な調子で
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、
愁然
(
しゅうぜん
)
、口のうちでつぶやきながら、駒の歩むにまかせて行った。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主翁は拒むことあたわずして、
愁然
(
しゅうぜん
)
としてその実を語るべきなり。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ばらばらとそこを降りて、己れの部屋へ向いかけたが、その途中、先刻立った廻廊のところまでくると、そこに老臣や多くの者が寄り集まって、
愁然
(
しゅうぜん
)
たるうちに、どこやら物騒がしく駈け廻っていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と民弥は言って、
愁然
(
しゅうぜん
)
とすると、梅次も察して、ほろりと泣く。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と玄徳に促されて、心なしか
愁然
(
しゅうぜん
)
と、成都へ帰った。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
愁然
(
しゅうぜん
)
として
襦袢
(
じゅばん
)
の袖
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一読、
愁然
(
しゅうぜん
)
としたきりであった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と云いかけて
愁然
(
しゅうぜん
)
たり。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
愁然
(
しゅうぜん
)
とゆくその影が。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
愁
常用漢字
中学
部首:⼼
13画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“愁”で始まる語句
愁
愁眉
愁歎
愁傷
愁嘆場
愁訴
愁歎場
愁嘆
愁色
愁夜曲