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惚々
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ほれぼれ
ふりがな文庫
“
惚々
(
ほれぼれ
)” の例文
杏桃
(
すもも
)
はあまり多く食はなかつた。小さい時にあてられたことを思ひ出して瑪瑙色の色彩には
惚々
(
ほれぼれ
)
するのであるがあまり手が出なかつた。
死線を越えて:02 太陽を射るもの
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
人妻になった万竜を一度見掛けた事があったが、
惚々
(
ほれぼれ
)
とするような美しい女であった。きんはその見事な美しさに
唸
(
うな
)
ってしまった。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
片里は煙草盆を引き寄せて、紫煙をゆるくくゆらせつつ、
惚々
(
ほれぼれ
)
と呉羽之介を眺めていましたが、やがて感に堪えぬげに言い出すのでした。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
沈着、
明眸
(
めいぼう
)
、ことば静かに話してなどいると、ひき込まれるような魅力があり、真に
惚々
(
ほれぼれ
)
する侍だが、わしはむしろ中国武士の
鈍骨
(
どんこつ
)
を愛する。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の
聡明
(
そうめい
)
な物象の把握力、日本人特異の単純化と図案化。それに何という
愛憐
(
あいれん
)
の深い美の象徴の仕方でしょう。私はいつも彼の画を見て
惚々
(
ほれぼれ
)
とします。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
お雪はいま改めて、群山四囲のうち、北の方に当って、最も高く雪をかぶって、そそり立つ山を
惚々
(
ほれぼれ
)
と見ました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あまりの不思議さに我を忘れて、しばしがほどは
惚々
(
ほれぼれ
)
と
傾城
(
けいせい
)
の姿を見守つて居つたに、相手はやがて
花吹雪
(
はなふぶき
)
を身に浴びながら、につこと
微笑
(
ほほゑ
)
んで申したは
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
以前の美くしかった時分、ほんとうに『
碧眼
(
あおめ
)
』だった時分には、見る人を
惚々
(
ほれぼれ
)
とさせたものだが、もうすっかり変ってしまった。今は単に
憫憐
(
あわれみ
)
の対象にしか過ぎないのだ。
碧眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「縁側で背伸をすると、土手を歩いているお前の姿がよく見えたよ、——若い娘と摺れ違うたんびに、一々振り返って、
惚々
(
ほれぼれ
)
と眺めるのだけは止せよ。見っともないからな」
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
総縫の振袖に
竪矢
(
たてや
)
の字、
鼈甲
(
べっこう
)
の
花笄
(
はなこうがい
)
も艶ならば、
平打
(
ひらうち
)
の差しかたも、はこせこの胸のふくらみも、
緋
(
ひ
)
ぢりめんの
襦袢
(
じゅばん
)
の袖のこぼれも、
惚々
(
ほれぼれ
)
とする姿で、立っているのだった。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
僕は自分の残り
尠
(
すくな
)
い命数を知るにつけても何か焦慮を覚えるのだ、僕は自身でも
惚々
(
ほれぼれ
)
するほどの作品を残したかった……そして到々決心した、この世の中で最も尊いカンヴァス
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
左内の瞳に映っているものは、お菊のうつむけた形のよい額で、それが紅潮を呈していて、そこへ前髪の影がさして、眉毛のあたりの暗く見えるのさえ、左内には
惚々
(
ほれぼれ
)
しく悩ましかった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ギリシアの神話にある美少年ナルチスは、自分の青春の姿を鏡に映して、
惚々
(
ほれぼれ
)
と眺め暮していたということであるが、芸術家という人種は、原則として皆一種の精神的ナルチスムスである。
老年と人生
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
女人をして
惚々
(
ほれぼれ
)
させないではいない有名なる
巨躯紅肉
(
きょくこうにく
)
が
棒鱈
(
ぼうだら
)
のように
乾枯
(
ひか
)
らびて行くように感ぜられるに至ったので、遂に彼は一大決心をして、従来の
面子
(
めんつ
)
を捨て、忍ぶべからざるを忍び
奇賊悲願:烏啼天駆シリーズ・3
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
俤
(
おもかげ
)
は近く桂木の目の前に、
瞳
(
ひとみ
)
を
据
(
す
)
ゑた目も
塞
(
ふさ
)
がず、
薄紫
(
うすむらさき
)
に変じながら、言はじと誓ふ口を結んで、
然
(
しか
)
も
惚々
(
ほれぼれ
)
と、男の顔を
見詰
(
みつむ
)
るのがちらついたが、今は
恁
(
こ
)
うと、一度踏みこたへてずり
外
(
はず
)
した
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
壮い女は左枕に
隻手
(
かたて
)
を持ち添えて
惚々
(
ほれぼれ
)
するような顔をして眠っていた。
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
珠子は彼女自身の裸身に
惚々
(
ほれぼれ
)
とすることがあった。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その話がまた、いちいち
該博
(
がいはく
)
で、
蘊蓄
(
うんちく
)
があって、そして
衒
(
てら
)
わず
媚
(
こ
)
びずである。
惚々
(
ほれぼれ
)
と人をして聞き入らしめる魅力がある。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
親方の女は、また煙草を吹かしながら、自分が結んでやった島田髷の
手際
(
てぎわ
)
を、自分ながら
惚々
(
ほれぼれ
)
と見ています。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
惚々
(
ほれぼれ
)
とするような手紙でも書いて、ほんの少しの為替でも入れてやりたいような気がして来る。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
自らの若さに就ては
惚々
(
ほれぼれ
)
するほどの信頼と愛着とを持つ人たちばかりでした。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しばらくすると、その自分が、やや
身体
(
からだ
)
を
捻
(
ね
)
じ向けて、
惚々
(
ほれぼれ
)
と
御新姐
(
ごしんぞ
)
の後姿を見入ったそうで、指の
尖
(
さき
)
で、薄色の
寝衣
(
ねまき
)
の上へ、こう山形に引いて、下へ一ツ、△を書いたでございますな、三角を。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
北見之守は大盃を上げて、いとも
惚々
(
ほれぼれ
)
とお金に見入ります。
新奇談クラブ:08 第八夜 蛇使いの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
智深が
法衣
(
ころも
)
の
諸肌
(
もろはだ
)
を脱いだからだ。そしてその
酒身
(
しゅしん
)
いっぱいに
繚乱
(
りょうらん
)
と見られた百花の
刺青
(
いれずみ
)
へ、思わず
惚々
(
ほれぼれ
)
した眼を吸いつけられたことであろう。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
惚々
(
ほれぼれ
)
とこの池の水を見ていましたが、やおら立ち上って池のほとりをさすらいはじめました。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
全く
惚々
(
ほれぼれ
)
するような声なり。おいたわしやのこの人なき真昼。窒息しそうだなぞと云っても、こんなに沢山空気があっては陽気にならざるを得ない。只、空気だけが運命のおめぐみだ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
とものぐるわしく、
真面目
(
まじめ
)
になりたる少年を、
惚々
(
ほれぼれ
)
と
打
(
うち
)
まもり
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
つつまずにそういった関羽の大人的な態度に、曹操はまた、
惚々
(
ほれぼれ
)
見入っていたが、やがて酒も半ばたけなわの頃、戯れにまたこんなことを訊ねだした。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「声だけ聞いていると、まさに
惚々
(
ほれぼれ
)
したいい声であったが……姿を見ると案外の
代物
(
しろもの
)
、
後弁天前不動
(
うしろべんてんまえふどう
)
という例も多いことだから、むしろ見ない方が我々の幸福であったかも知れない」
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「——赤穂の敵は、立派だなあ。戦いながら、
惚々
(
ほれぼれ
)
した。
武士
(
さむらい
)
はやっぱり武士に、成り切らなくっちゃ、嘘なんだ。丈八……貴様あ、立派な武士になれ」
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
挨拶を返すことを忘れて、
惚々
(
ほれぼれ
)
とこう言って感歎の声を放ちます。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それを色街の
姐
(
ねえ
)
さん芸者だの料理屋の楼主が
惚々
(
ほれぼれ
)
と見ては噂して、ずいぶん養女にくれの何のといわれたものさ
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お仙の眼は、兇状廻しの人相書へ、
惚々
(
ほれぼれ
)
と吸われていた。胸のなかには、すぐその男の声や、冷たさや、強さや、いろいろな感情が脈を
搏
(
う
)
ってひびいてくる。
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
姿態
(
しな
)
、ことば、水々しさを、その母親たるおかみさんは
惚々
(
ほれぼれ
)
と見ているのだった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
土民の中にもよい
面魂
(
つらだましい
)
の子があるもの——と武蔵はなお
惚々
(
ほれぼれ
)
と見るのであった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秀吉は
惚々
(
ほれぼれ
)
と見入っていた。首級の若い唇は、紫いろを呈していたが白い歯なみを少し見せ——君、君タラズトイエ臣、臣タリ——の義をつらぬいた
本懐
(
ほんかい
)
を自ら
微笑
(
ほほえ
)
んでいるようだった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
惚
漢検準1級
部首:⼼
11画
々
3画
“惚”で始まる語句
惚
惚気
惚氣
惚込
惚氣交
惚合
惚薬
惚苦
惚言
惚拔