なやみ)” の例文
旧字:
森の祖母君おほばぎみ此頃わがなやみみとらむとて、しばし留まりゐ給ひしが、今宵講釈のあれば、夜も更けなむ、われこそ共に往きて寝めとて、楼に登り給ひぬ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
翌朝よくちょうかれはげしき頭痛ずつうおぼえて、両耳りょうみみり、全身ぜんしんにはただならぬなやみかんじた。そうして昨日きのうけた出来事できごとおもしても、はずかしくもなんともかんぜぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
古疵ふるきずなやみを覚えさせまい、とそうやって知らん顔をしてくれるのはまことに嬉しい、難有ありがたいが……それではうらみだ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「民弥よ民弥よ、恐れるには及ばぬ、なやみある者は救われるであろう、悲しめる者は慰められるであろう」
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
感情のなやみに陥らせるようなものだ。10205
よろこびなやみとにおそろしくかわがわる襲われて
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
存命ながらへなやみの夢の曲節めろぢあも見るによしなみ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
し衆をねがうものはすなわち衆のなやみ
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
しかうしなやみける程にしににけり。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ちらちらと春風にちらめく処々ところどころうっすりと蔭がさす、何か、ものおもいか、なやみが身にありそうな、ぱっと咲いて浅くかさな花片はなびらに、くもりのある趣に似たが、風情は勝る、花の香はそのくまから、かすか
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よろこびなやみとにおそろしくかわる/″\襲われて
見えわかぬなやみよりいかりくさり巻かれて
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
もとより一借受かりうけて、逗留たうりうをしてつたが、かほどのなやみ大事おほごとぢや、大分だいぶんさねばならぬこと子供こどもろすにはからだ精分せいぶんをつけてからと、づ一にちに三ツづゝ鶏卵たまごまして
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくしのなやみを御覧なされて下さいまし。
ひたなげく、くいと、なやみと、戦慄をのゝきと。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
もとより一室ひとまを借受けて、逗留とうりゅうをしておったが、かほどのなやみ大事おおごとじゃ、血も大分だいぶんに出さねばならぬ、ことに子供、手をおろすには体に精分をつけてからと、まず一日に三ツずつ鶏卵たまごを飲まして
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くろなやみ旋律せんりつうづき起る。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夏の夜のなやみを刻む。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)