)” の例文
いくら聞かれても曖昧あいまいな返事ばかりしていて、最後に退きならないところまで来てしまってから、強情を張り出した点であった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
退きなく手術を受けさせる妙案です。私は次男へ電報を打ってやりました。『俺が手術をしてやる。明日立つ』とはうです?」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
美奈子が、退きならぬ境遇に苦しんでいることを、夢にも知らない瑠璃子は、前のように落着いた声で静にった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
人相書は全市の与力よりきおかきにいきわたり、別動隊として、近江之介を殺された上自分は閉門をうけて、切歯扼腕せっしやくわんに耐えない脇坂山城守の手から
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
早苗はその時、お悦の糸切り歯が怖ろしく思われたほど、彼女は退きならぬ土壇場に立たされてしまった。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
また、そういう悪い条件は、いつでも、退きならない場合を計って、突然、ほこをあらわすものでもあった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「じゃ、もうようござんす! あっしも江戸のおかきだ、手を貸してやろうっていったって頼むことじゃねえんだから、あとでじだんだ踏みなさんなよ!」
……それに、アタフタ和泉屋を庇うような真似をすると、むこうが気取って手を出すまいから、退きならぬ現場をおさえてギュッと言わせるわけにはゆかない。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
退きならない先口をみんな断っておしまいになったというお話で御座いましたが……ところが旦那方の前でげすが、西洋人の惚れ方ってえものはヨッポド変梃へんてこでネ。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
源「へえ、その……大概その外療をいたしましたり、ま其のかぜきぐらいを治すような工合ぐあいで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
退きならぬ彼女との別離は来りぬ、事件の進行して罪否いずれにか決する時の近づきしをば、めてもの心やりにして。堀川にてはある一室の全部を開放して、しょうを待てり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
だから退きならぬ人間の相しか現はれぬし、動じない美しい形しか現はれない、と仰有おつしやる。生きてゐる人間を観察したり仮面をはいだり、罰が当るばかりだと仰有るのである。
これは友人に勧められて、退きならぬ事になって、論文を出した結果である。
挙止動作から衣服きものの着こなし方に至って、ことごとくすいを尽くしていると自信している。ただ気が弱い。気が弱いために損をする。損をするだけならいいがきならぬ羽目はめおちる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
退きならぬ証拠を作ろうとしたのだ。あとでわかる。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
安達君は或晩字が拙くて困るとこぼしたら、指導してやると言われて、退きならず、一週間ばかり前から始めたのだった。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
へんに問題をコジレさせて退きならないやうにしたのは、庄造の態度が大いに原因してゐるのである。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かぎつけることにしてからが、同心やおかきじゃ手が出ねえんだからな。こういう場合の伊豆守様だよ
ぎょッとして振り顧ったが、蚊帳の中の侍は依然たる様子。だのに、引いても、もがいても、すそは何物かに食い止められて、お延の体は、それより一寸も退き出来なかった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから退きならぬ人間の相しか現われぬし、動じない美しい形しか現われない、と仰有おっしゃる。生きている人間を観察したり仮面をはいだり、ばちが当るばかりだと仰有るのである。
と聞くならば、退きならぬ瀬戸際せとぎわまであらかじめ押して置いて、振り返ってから、臨機応変に難関を切り抜けて行くつもりの計画だから、一刻も早く大森へ行ってしまえば済む。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
話し過ぎるおかきの高声……お艶と弥生は、たがいに探るように瞳の奥を見つめていたが、筒抜けていったお藤については、ふたりとも何も言わずに、そのうちに戸外の物音もしずまりかけると
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
へんに問題をコジレさせて退きならないやうにしたのは、庄造の態度が大いに原因してゐるのである。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし、それにしても、あいつをしょっぴいていこうと気がついたなあ、さすがおめえも江戸のおかきだな。そのおてがらに免じて、逃げたものならほっとくさ。
と鳥居氏はもう退きならなかった。一回戦に負けた良人は二回戦でイヨ/\泥を吐いたのである。
或良人の惨敗 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と、ひどくいかめしく、退きならないような辞をもって、面会を申し入れた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕かね、僕だってうんとあるのさ、けれども何分貧乏とひまがないから、篤行とっこうの君子を気取ってねこと首っきしているのだ。子供の時分には腕白者わんぱくものでけんかがすきで、よくアバレ者としかられた。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
永井信濃守ながいしなののかみは、一きに丸屋三ツ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
へんに問題をコジレさせて退きならないようにしたのは、庄造の態度が大いに原因しているのである。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
与力、同心、おかき、目明かし、手先、慰労の宴の無礼講だから、むろん席に上下の差別はない。
と僕はもう退きなく出掛けた。門のところでお隣の文一君に会った。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
自分はお十夜の眼からのがれるため、わざとこの松原に姿を隠し、もし矢走やばせへ出る渡船わたしがあったら、草津あたりで宿をとろうと考えている間に、今夜の大嵐おおあらしに逢って退きならなくなったのだけれど
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうなると自然気をもみだしたのは右門の手下のおかき、おなじみのおしゃべり屋伝六です。
君とは年来の兄弟分だからと新太郎君も退きさせないように申入れている。それで翌朝店へ行って仕事をしながらも、何と切り出したものかと気になって、チョク/\伯父さんの顔をぬすみ見た。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「その辺もお察しはするが、何もかも、不運とおあきらめなさるよりしかたがあるまい。郁次郎の身にも、花世どのにも、しからぬ証拠は山のごとくある。——よほど手加減いたしていたが、もはや、きょうとなっては、退きならぬところです」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同僚の同心たちはもちろんのこと、上席の与力たちも、下席の目あかしおかきのやからにいたる者たちまでも、いつのまにかふたりを敬遠するともなく敬遠してしまって
と尚おも小首を傾げたものゝ、退きならず持込料を支払って
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
町方の者たちがするように遠出をすることはできなかったのですが、でも屋敷うちの催しながら、ともかくもその日一日は無礼講で骨休みができるので、上は与力から下おかきに至るまで
と私は退きならず御馳走になった。閣下は大いに召上った。
閣下 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
というと、いつのまにか伝六が棟梁とうりょうにでも商売替えをしたように思えるが、不思議なことに三年一日のごとく依然としておかきなのですから、世の中にこのくらい出世のおそい男もまれです。
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
と畑君は私の平素を知っているから、退きさせない。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
だのに、伝六というやつはおよそ捕捉ほそくしがたいおかきです。
と女中の一人が退きさせないという態度を示した。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と俊一君はもう退きならない。奥さんが出て来て
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
退きさせませんわ。お化粧で分るんですって」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「何うも退きなりませんな。此奴は大失策おおしくじりだ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と赤羽君は退きさせなかった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と山下夫人も退きならない。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)