山河さんが)” の例文
この話は、たちまち幾百里の山河さんがを隔てた、京畿けいきの地まで喧伝けんでんされた。それから山城やましろの貉がける。近江おうみの貉が化ける。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さら彼女かのじょはその生涯しょうがいもっと重要じゅうようなる時期じき、十七さいから三十三さいまでを三浦半島みうらはんとうらし、四百ねんぜん彼女かのじょ守護霊しゅごれいしたしめる山河さんが自分じぶんしたしんだのでありました。
この細いものを、するすると抜けば鹿児島県と埼玉県の間には依然として何百里の山河さんがよこたわっている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
国ほろびて山河さんがかわらずという。しかし、人の転変てんぺんはあまりにはなはだしい。たとえば、いま甲府こうふ城下じょうかを歩いて見ても、うものはみな徳川系とくがわけい武士ぶしばかりだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてこの意味で遠く隔たった日本の山河さんがや田園や風俗や、さらにヨーロッパの芸術とはまるで異なっている東洋の固有の芸術に対して多大の興味をいだかれたので
武矦ぶこう西河せいがうかびてくだる、中流ちうりうにしてかへりみて呉起ごきつていはく、『なる哉乎かな山河さんがかため、魏國ぎこく寶也たからなり』と。こたへていはく、『((國ノ寶ハ))とくりてけんらず。 ...
洛陽伽藍記らくやうがらんきふ。帝業ていげふくるや、四海しかいこゝに靜謐せいひつにして、王侯わうこう公主こうしゆ外戚ぐわいせきとみすで山河さんがつくしてたがひ華奢くわしや驕榮けうえいあらそひ、ゑんをさたくつくる。豐室ほうしつ洞門どうもん連房れんばう飛閣ひかく
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寂しい山河さんがである。そこにはわれらの寄るべき港とてはほとんどないのであった。人煙まれなる森林地帯ででもあるように、原始的な草原ででもあるように感じさせる景色けしきであった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
痛嘆すべきこの二つの歴史は、畿内の山河さんががいつも自分に向つて消極的教訓を語るに反して、長崎の風景に対して一種名状しがたき憤恨ふんこんと神秘の色調を帯びさせてゐるやうに思はれる。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さびし山河さんがの すべもなく
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
国土こくど山河さんがも何ならむ。
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
古来こらい山河さんがひいでたる
県歌 信濃の国 (新字新仮名) / 浅井洌(著)
街道かいどうとおくはなれて、人もとおらぬ山河さんがえ、ようよう遠江の国へはいったが、こんな厳重げんじゅうさでは、さきに桑名くわなを立った伊那丸いなまるたちも、やすやす、無事ぶじにここを通れたとは思われない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十年の後われ遠国えんごくより帰来してたまたま知人をここに訪ふや当時の部屋々々空しく存して当時の人なく当時の妙技当時の芸風また地を払つてなし正に国亡びて山河さんがとこしえにあるの嘆あらしめき。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
逆に、地方の山河さんがを怒らし、諸民は新政府の非情を冷たい目で見た。