トップ
>
安穏
>
あんのん
ふりがな文庫
“
安穏
(
あんのん
)” の例文
旧字:
安穩
少しばかりの
貯
(
たくわ
)
えを廻して三十年の間
安穏
(
あんのん
)
に暮し、主取りをする気もなく、江戸の下町に住んだのが、私の仕合せだったかも知れません
銭形平次捕物控:087 敵討果てて
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
今生
(
こんじょう
)
の
果報
(
かほう
)
に
更
(
か
)
えて 後生たすけさせ
給
(
たも
)
うべく候 こんじょうの果報をば 直義にたばせ候て 直義を
安穏
(
あんのん
)
に まもらせ給い候べく候
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
祝言さするは、これ
眼前
(
まのあたり
)
。ただ、恨めしきは伊右衛門殿。喜兵衛一家の者ども、ナニ、
安穏
(
あんのん
)
に置くべきや。思えば思えば、エエ恨めしい。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
二人が兄弟も
只
(
ただ
)
ならず、懇意だということを、岡ッ引きに告げてやりゃあ、雪さんだって、
安穏
(
あんのん
)
にいられるわけがないんだ——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
彼女と兄との関係が悪く変る以上、自分の
身体
(
からだ
)
がどこにどう飛んで行こうとも、自分の心はけっして
安穏
(
あんのん
)
であり得なかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
安穏
(
あんのん
)
にこうして牢名主をつとめさせていただいている、これというのも親が仏師で徳人であったおかげというものだから
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
祖母は向島の小さい穏かな住居で、維新の革命も彰義隊の戦争も、
凡
(
すべ
)
て対岸の火事として
安穏
(
あんのん
)
に過して来ました。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それから、きょうまで、私たち二人きりの山荘生活が、まあ、どうやら事も無く、
安穏
(
あんのん
)
につづいて来たのだ。部落の人たちも私たちに親切にしてくれた。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
安穏
(
あんのん
)
に捨てて置くことは出来ません。この場合、損得などはどうでもいいのです。たとい親子が乞食になっても構いませんから、あの男を殺させてください
中国怪奇小説集:12 続夷堅志・其他(金・元)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
なるべくならば社会の
隅
(
すみ
)
に小さく、つつましく、あまり人目に立たないように、そして先祖の
位牌
(
いはい
)
にも傷をつけないようにして
安穏
(
あんのん
)
に生きて行きたかった。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
鬼は熱帯的風景の
中
(
うち
)
に
琴
(
こと
)
を
弾
(
ひ
)
いたり踊りを踊ったり、古代の詩人の詩を歌ったり、
頗
(
すこぶ
)
る
安穏
(
あんのん
)
に暮らしていた。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
当時の時代思潮は何かといえば、つまり平和を愛し一身の
安穏
(
あんのん
)
和楽
(
わらく
)
をもとめるようになったということだ。
家康
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
たとえあの乞食坊主がいつどこで飛び出したところで、帰途の旅は
安穏
(
あんのん
)
しごくというものだ——
身拵
(
みごしら
)
えは江戸へはいる前にでもよッく話してなおしてもらおう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「おまえは
安穏
(
あんのん
)
な家と、立派な亭主と、可愛い子供を二人も持っている、そういう仕合せな者は文句を云っちゃあいけねえ、なにか云うとすればこのおれのほうだ」
やぶからし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
清水寺の僧信海、勅を奉じて敵国を調伏し万民を
安穏
(
あんのん
)
にせんことを
祷
(
いの
)
る。事、幕忌に触れ、捕えられて獄に下り、病を以て没す。実に
今茲
(
ことし
)
四月某日なり、遺歌一首有り。曰く
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
安穏
(
あんのん
)
に眠を
貪
(
むさぼ
)
っていた官吏社会をはじめての恐慌が襲ったのである。維新当座どさくさまぎれに登用された武士階級中の老年者とか無能者とか、たいていそういう人々が
淘汰
(
とうた
)
された。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
何か一心に思い詰めたような決心の色が明らかに
眉宇
(
びう
)
の間に現われている。思うところあって来たらしい。しかしそれはとにかくとして、南蛮屋の店へはいった以上、
安穏
(
あんのん
)
ではいられまい。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
どうして処罰をも受けないで
安穏
(
あんのん
)
に暮しているかと申しますと、その人殺しは私自身直接に手を下した訳でなく、いわば間接の罪なものですから、たとえあの時私がすべてを自白していましても
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一人前の若い者、ゆくゆくは、
家
(
いえ
)
の一軒も持って、女房子供と共に暮らす
安穏
(
あんのん
)
の日が、来るだろうことを信じているらしい眼付が、
嘗
(
かつ
)
ての少年時代の兵さんを思い合せて、私は涙ぐましい気になった。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「なまいきなことをほざく
下郎
(
げろう
)
だ、汝らがこのご城下で
安穏
(
あんのん
)
にくらしていられるのは、みなわれわれが敵国と戦っている
賜物
(
たまもの
)
だぞ。
罰
(
ばち
)
あたりめ」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、奥さん! 僕は貴女から選まれると云うことが可なり危険なことであるような気がするのです。僕は、
安穏
(
あんのん
)
な家庭の幸福で、満足している平凡な人間です。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
平凡に妻をもらい子を
儲
(
もう
)
けて、
安穏
(
あんのん
)
に一生をくらせたかもしれない、だがこの男はそうはならなかった、三河以来という
由緒
(
ゆいしょ
)
ある家柄と、八百石の禄を捨てたうえ
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
刺戟
(
しげき
)
の少い田舎の町で
安穏
(
あんのん
)
に暮して行くのには適しているし、定めし本人にも異存はあるまいと極めてかかったのが、案に相違したのであったが、内気で、
含羞
(
はにかみ
)
屋で
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
上役人に刃向かって左膳を救い出すか……それとも、友を見棄てておのれの
安穏
(
あんのん
)
を全うすべきか?
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
現に百姓共が、
安穏
(
あんのん
)
に百姓をしていられるのも、この徳川の武力あればこそではないか。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「……
呪詛
(
のろ
)
われておれ窩人の一味! お前には
安穏
(
あんのん
)
はあるまいぞよ! お前は永久死ぬことは出来ぬ! お前は永久年を取らぬ! 水狐族の
呪詛
(
のろい
)
妾
(
わし
)
の呪詛! 味わえよ味わえよ味わえよ!」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
先代の死んだ時は泰道を説き落して卒中にさせ、それで自分の地位も、井筒屋の身上も
安穏
(
あんのん
)
にしたつもりでいたのですが、二度目の毒死人でその尻が割れ、銭形平次にうんと油を絞られました。
銭形平次捕物控:144 茶碗割り
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その後いよいよ御静養のことと思い安心しておりましたところ、風のたよりにきけば貴兄このごろ薬品注射によって
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
の
安穏
(
あんのん
)
を願っていらるる由。
甚
(
はなは
)
だもっていかがわしきことと思います。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
江を渡って、叔父を救け、いささか亡父の霊をやすめ、せめて母や妹たちの
安穏
(
あんのん
)
を見て再び帰って参りますから
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
安穏
(
あんのん
)
に牢名主をつとめさせていただくというようなのは、全く例外なんでございます。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あのままでいたら生活は
安穏
(
あんのん
)
かもしれないが、結局は下屋敷の師範として、小さく固まったにちがいない。そうだ、
淵辺
(
ふちのべ
)
道場を
逐
(
お
)
われたこともよし、伊達家から逐われたこともよい。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そのころこの
国府
(
こう
)
の代官萩原
年景
(
としかげ
)
によばれ
越路
(
こしじ
)
へ来ぬか、
国府
(
こう
)
の
館
(
やかた
)
へ来れば身の妻として、終生
安穏
(
あんのん
)
に暮らさせてやろうにと、ことば甘くいわれましたので
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それでも無事
安穏
(
あんのん
)
にいく夫婦もあるだろうが、二人はそうはいかなかった、おばさんに罪があるとは云わないが、千太郎という人がぐれだしたのにも、それなりのわけがあったのかもしれない
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「もし、呉の六郡と、呉の繁栄とを
安穏
(
あんのん
)
に保ち、いよいよ富強安民を計らんとするなれば、ここは曹操に降って、彼の百万の鋭鋒を避け、他日を期すしかありません」
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
母は気にするようすもなく、
安穏
(
あんのん
)
な顔つきで立っていった。
おばな沢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
『多年、領主の
御庇護
(
ごひご
)
によって、
安穏
(
あんのん
)
に
生業
(
たつき
)
を立てて参ったのに、御恩も忘れ、殿の凶事に際して、すぐ損徳を考え、藩札の取付けに
押
(
お
)
し
襲
(
か
)
けるなどとは
憎
(
にっく
)
い行為だ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれど、黄巾党が
跋扈
(
ばっこ
)
すればするほど、
楽土
(
らくど
)
はおろか、一日の
安穏
(
あんのん
)
も土民の中にはなかった。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
裸の一
流人
(
るにん
)
に過ぎない身軽な頼朝よりは、位置もあり財宝もあり、妻も子も一族も多い——そしてこれから余生を
安穏
(
あんのん
)
に楽しもうとすれば楽しめる——時政のほうが非常に
躍起
(
やっき
)
となって来た。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小手をかざして山上から
兵霞
(
へいか
)
の
退
(
ひ
)
くのをながめていた関羽は、やおら黒鹿毛をひいて麓にくだり、無人の野を疾駆して、間もなく下邳城に着き、城内民
安穏
(
あんのん
)
を見とどけてから城の奥へかくれた。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「戦わずに、しかも国中
安穏
(
あんのん
)
にすむ、良い計策があるといわるるか」
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おれだって、後生は
安穏
(
あんのん
)
に送りてえからな」
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とても長く
安穏
(
あんのん
)
に暮すことはできますまい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「めっそうもないおことば、ほかならぬ戦陣の留守、
安穏
(
あんのん
)
で暮していられるさえ、朝夕もったいないこととぞんじておりますのに、さびしいなどと考えては、
罰
(
ばち
)
があたりましょう。ただお
母
(
か
)
あ様には、はや御老年でございますから」
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
安
常用漢字
小3
部首:⼧
6画
穏
常用漢字
中学
部首:⽲
16画
“安穏”で始まる語句
安穏寺