めひ)” の例文
「そんなことぢやありません。金貸しの鍵屋金右衞門がやられましたよ。手代の喜三郎も斬死で、めひのお縫が泣いてばかり居ります」
喚出よびいだし三四度御自分樣じぶんさま引合ひきあひたる家も有り殊に御自分の云はるゝには小夜衣は我がめひなれば行末ゆくすゑ共にねんごろに私にたのむと小夜衣が文を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし紀伊は自分達の家世を語つて、めひを妾にすることを辞退した。そこで綱宗と初子とは、明暦元年の正月に浜屋敷で婚礼をしたのである。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
残念なことに、母は五年前に亡くなりました。私の妻はこの母のめひにあたる女です。私たちには四歳になる娘があります。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「兄さんは矢張やつぱり叔母さんの生家さとへ知らずに買物に行つたのよ。三度も。なんでもハイカラな娘が居たなんて——きつとおきみさん(叔母さんのめひ)のことよ。」
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
我には世に、名をアラージヤといふひとりのめひあり、わがうからの惡に染まずばその氣質こゝろばへはよし 一四二—一四四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
今一人の妹とか、幾人かのめひをひ、又従姉妹いとこたち——その他の人達とも話をまじへたりして、各人のその後の運命や生活内容にも、久しぶりで触れることができた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
一心に長い手紙をひろげてゐる、お文の肉附のよい横顔の、白く光るのを、時々振り返つて見ながら、源太郎は、めひう三十六になつたのかあアと、染々しみ/″\さう思つた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
夕方の燈がく。稲の葉のにほひが際立つて鼻をついて来た。野良帰りには不思議に逢はなかつた。唐もろこしに囲まれためひの家まで来た。背後うしろの山はもう真黒に暮れてゐた。
反逆の呂律 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
叔父御をぢごカピューレット殿どのおなじく夫人ふじんおなじく令孃達むすめごがたうるはしきめひのローザライン。リヸヤ。
不在中泊りに来てゐためひや、又訪ねて来た母などの話をきくと余程孤独を感じてゐた様子で、母に、あたし死ぬわ、と言つた事があるといふ。丁度更年期に接してゐる年齢であつた。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
主人の家内のめひに当ります者が、内に引取つて御座いまして、これを私にめあはせやうと云ふ意衷つもりで、前々ぜんぜんからその話は有りましたので御座いますが、どうも私は気が向きませんもので
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今はかく芸人の片端かたはしぢや、此頃の乱暴はうぢや、めひを売つて権門にへつらふと世間に言はれては、新俳優の名誉にかゝはるから、其方そちを取り戻すなどと、イヤ、飛んだ活劇をし居つたわイ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
婆やは息子が一人ありながら、いろんな訳があつて、その子にかゝることが出来なくて、五十六の年に、一人で、こちらにゐためひの方へたよつて来て、それからこゝへ奉公に来たのださうであつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
もう一人、お稻の後ろに引添ふやうに、美しい顏を俯向うつむけて居るのは、お由といつて先代の配偶つれあひの遠いめひで、十九になつたばかり。
五十兩九郎兵衞里兩人の養育料やういくれうとしてつかはし候儀に御座候其後九助同村の周藏喜平次木兵衞等が取持とりもちにて私しめひ節儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私は今踊つた人がM—氏の令嬢で、もう一人の美しい人がめひで、今一人の娘さんが友達だことを知つた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
鶴子は信徳の傍に行つて夕刊を渡すと、嫂の隣に腰かけて小さいめひの袖口のほころびをなほしはじめた。——彼女が万事派手な嫂とそのやうに居並ぶと、その対照は一寸妙だつた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
重三郎は主人のをひで、音松は主人の弟だ。この二人とお染を殺せば、萬といふ金が遠縁乍らめひの自分へ入つて來るとお今は考へたのさ。
以て貴殿きでんめひ小夜衣を身請して御當家へおくとのお約束ゆゑ金子きんすをばお渡し申せしに何故なにゆゑ然樣のことを仰せられ候やと申に長庵大いにいかけしからぬことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「まア、口惜くやしいツ。第一私は、昨日一日、此處を一寸も動きやしません。嘘だと思つたら下に居るめひのお雪に訊いて下さい」
めひのお辰はどうでせう。——あの女はやけに綺麗だが、何を訊いても物を言はず、二人が殺された時刻にも、何處に居たか判りませんよ」
先々代のめひの子で、十歳とを孤兒みなしごになつたお夏に、佐渡屋の女主人や娘達、奉公人達まで殺す動機があらうとも思はれません。
あの時巴屋の若旦那は、めひのお照に逢ひ度さに、島田町から入船町あたりを、ウロウロして居たことでせう、どうぞ、重三郎さんをお助け下さい
めひのお咲は、いろ/\の用事で、昨日晝頃から參りました。歸りは夜になるが、同じ芝口二丁目の仕事場に、正亥刻よつ(十時)を合圖に順八さんを
が、あいにく金之助は前の日から、貸金の取立てに、八王子まで行つてまだ歸らず、下女のお徳は持て餘して、めひのお粂に相談をして見ました。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
もう一人はお半と言つて丸屋のかゝうどですが、死んだ六兵衞の女房のめひで、取つて二十二になる小意氣な年増女です。
「それではお前はいろ/\の事を知つて居るだらう、——先づ第一に二人のめひのこと、若旦那の民彌のこと、この家の主人のことなどを訊き度いが」
「それからお銀は邪魔物扱ひにされてゐるわけではないのか。あの通り口が惡くて、それに先代のめひに當るから、今の主人夫婦も遠慮があるだらう」
主人總兵衞の死骸は、今朝めひのお杉——下女同樣に働いてゐる二十五の大年増が、雨戸が一枚開いてゐるのに驚いて、その寢間を覗いて發見しました。
それに昨夜ゆうべは、越後屋のめひでお糸といふのが急病で、下男の寅藏とらざうは在所へ歸つて留守だし、小僧や下女では夜のことで役に立たず、親切者の金次郎が
身扮みなりは腹の立つほど地味で、頭の良いにしては、物言ひはハキハキしない方、めひのお紋の陽性なのに比べて、これはいくらか陰性な感じのする女です。
親分方の前だが、娘のおこのも良い女だが、めひのお糸といふのは、跛者びつこで病身だといふけれど、そりや美い女ですよ
默りこくつてゐる一座の中で、斯う最初に口をきつたのは、陽氣で明けつ放しで、一番美しい、めひのお紋でした。
内儀のお富は貧乏人の子で、金襴の帶どころか、ろくな前掛まへかけも持たずに嫁入して居るし、めひのお梅は、お轉婆で粹好いきごのみで、そんな大時代なものは大嫌ひ。
若旦那の新六郎とめひのお銀の履物はきものは兩國の橋の上に脱ぎ捨ててありましたが、二人の死骸は房州まで流れて行つたものか、到頭あがらなかつた樣子です。
その鬼の小左衞門にこんな可愛らしくて純情らしいめひがあるといふのは、何にか造化の神の大きな惡戯いたづらを見せつけれらるやうな氣がしないでもありません。
「上總屋のめひで、掛りうどになつてゐるお紋といふ、少し鐵火てつくわだが、滅法綺麗なのが、向柳原の叔母の知合ひで」
「主人夫婦には、めひのお縫を殺すわけはない。お縫は孤兒みなしごで、金も身分もなし、それに少し陰氣ではあつたが、申分なく綺麗で、上品で、優しくもあつた」
めひのお梅が、日頃から虐待ぎやくたいされて物置に寢泊りして居ることに氣が付いて、若しや氣取けどられたんぢやあるまいかと、はりに吊つて俺の眼から隱さうとしたんだ。
伯母をばめひ同士が奉公してゐると言ひますが、おさのの方は、彈三郎のめかけだつたといふ近所の噂が本當でせう。
その上、新六郎樣は先代の忘れ形見、お銀さんは先代の御内儀のめひ、二人は兄妹のやうに育つたんですもの
早く女房に死に別れて、跡をぐべき子供も無かつたので、二人のめひ——お道、お杉——を養つて淋しいが、しかし滿ち足りた暮しをして居る、有徳の米屋でした。
「では、御當家に御泊りの、園山樣若樣、鶴松樣に、この北と申すめひが御目通りいたしたいと申します。それを御叶おかなへ下されば、迷子札は相違なく差上げますが」
それでも、三日に一度、七日に一度づつは、泊りがけにやつて來て、めひのお雛の美しくひ立つのと病弱な富太郎が、少しづつでも丈夫になるのを見て歸りました。
「お萬は、めひのお信乃しのを歸せと、うるさく八五郎をめたさうだが、たつたそれ丈けのことで、若い男と幾晩も睨めつこをしたのか、——嘘を言つちやならねえよ」
萬兵衞はめひのお喜代を可愛がり過ぎた。内儀は病身で、義理の姪があんなに綺麗で陽氣でお轉婆だ。
めひのお粂さんに訊くと、滅茶々々でしたよ、あんなに言はれては、死んだ叔父さんも浮ばれない」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
親分のところに泊つて居るのは、田舍からめひが來て、向柳原の叔母の家が急に狹くなつたからだ。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
さう言ひ乍らもお時は、めひの小娘に眼顏で何やら含めさせて、狹い梯子をトントンと踏むのです。