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こうこうや
ふりがな文庫
“
好々爺
(
こうこうや
)” の例文
宗十頭巾に
十徳
(
じっとく
)
姿、
顎鬚
(
あごひげ
)
白い、
好々爺
(
こうこうや
)
然とした
落語家
(
はなしか
)
仲間のお稽古番、
桂
(
かつら
)
かん治爺さんの姿が、ヒョロヒョロと目の前に見えてきた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
その時、大柄ののっぽうの、それでいていつも
棗
(
なつめ
)
のような顔をして眼の細い、何か脱俗している
好々爺
(
こうこうや
)
が著て来たのがこれであった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
(その
好々爺
(
こうこうや
)
は、クリストフが祖父とともに初めて官邸へ伺って、ハスレルに会ったあの晩から、すでにその地位にいたのである。)
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
たとえ血脈の間がらとはいえ、幼少の子を果し合いの名目人に提供して惜しまないほどの
好々爺
(
こうこうや
)
である。一も二もなく他説に従って
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
市長になる前にはどこかの県知事も務めたそうであったが、見るからに詰らん
好々爺
(
こうこうや
)
で年がら年中朝顔と菊の栽培でばかり苦労していた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
そのときの上野介は
宗匠頭巾
(
そうしょうずきん
)
をかぶった
好々爺
(
こうこうや
)
で彼は道で、すれちがう誰彼の差別もなく、和やかな微笑を
湛
(
たた
)
えて話しかけた。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
奈良屋三郎兵衛は五十五六、江戸の大町人で、
苗字帯刀
(
みょうじたいとう
)
を許されているというにしては、
好々爺
(
こうこうや
)
という感じのする仁体でした。
銭形平次捕物控:107 梅吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分の意見などと云うものは持ち合せない
淳朴
(
じゅんぼく
)
な
好々爺
(
こうこうや
)
のようであるが、母親と云う人は父親よりは大分しっかりしたところがあるらしい。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
臼木はX病院の忠実な会計のおじさんとして、病院のみならずその附近の町の人達からも信用されるような
好々爺
(
こうこうや
)
になった。
老人
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
先生は一面非常に強情なようでもあったが、また一面には実に素直に人の言う事を受けいれる
好々爺
(
こうこうや
)
らしいところもあった。
夏目漱石先生の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼は中傷によってへつらわれた
好々爺
(
こうこうや
)
らしい快い微笑を浮かべて、その赤児をながめた、そして
他人事
(
ひとごと
)
のように言った。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
エバン船長は欧洲大戦生き残りの勇士で、いまなおおかすべからざる
気概
(
きがい
)
をもっていたが、一面
好々爺
(
こうこうや
)
でもあった。
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人のよい
好々爺
(
こうこうや
)
になり切って、夕方東京から帰って来る時には、瑠璃子の心を
欣
(
よろこば
)
すような品物や、おいしい食物などをお土産にすることを忘れなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ただ、和服を着ておられるので、これがあの有名な将軍だとは思われないほど親しみやすい
好々爺
(
こうこうや
)
に見えた。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
老いて愚に返った
喜
(
き
)
の字の祝いのようで、まるで置き物かなんぞのように至極穏当な
好々爺
(
こうこうや
)
としか見えない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ただ相も変らぬ芸無し猿、天才的な平凡児として持って生まれた天性を、あたり
憚
(
はばか
)
らず発揮しつくしながら悠々たる
好々爺
(
こうこうや
)
として、
今日
(
こんにち
)
まで生き残って御座る。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
かうしてブラウエンベルグ氏は、雷雲たたなはる英雄の座から悠然と降り立つて、今やカラマンケンあたりの山村の
瓢々
(
ひょうひょう
)
たる一
好々爺
(
こうこうや
)
になりすましたのである。
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
ラザルスは例の無関心で、大勢のなすがままに任せていたので、たちまちにして如何にも好く似合った頑丈な、孫の大勢ありそうな
好々爺
(
こうこうや
)
に変わってしまった。
世界怪談名作集:14 ラザルス
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
秀子さんのお父さまは新太郎君が想像していた通りの
好々爺
(
こうこうや
)
だった。病後の衰弱を見せながらも
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
玄関払いなどされないように。斎藤氏って、どんな
爺
(
じい
)
さんだろう。案外、
好々爺
(
こうこうや
)
で、おうよく来たね、と目を細めて、いやいや、そんな筈はない。甘く考えてはいけない。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
タウンゼンド氏は頭の
禿
(
は
)
げた、日本語の旨い
好々爺
(
こうこうや
)
だった。由来西洋人の
教師
(
きょうし
)
と云うものはいかなる俗物にも
関
(
かかわ
)
らずシェクスピイアとかゲエテとかを
喋々
(
ちょうちょう
)
してやまないものである。
保吉の手帳から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
菩提樹
(
ぼだいじゅ
)
や白樺の老樹が霜で真っ白になった姿には、いかにも
好々爺
(
こうこうや
)
然とした表情があって、糸杉や
棕櫚
(
しゅろ
)
よりもずっと親しみがあり、その傍にいるともう山や海のことを想いたくもない。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
このいわゆる「切支丹」訂正「西洋」大奇術の一座の
頭梁株
(
とうりょうかぶ
)
とも総支配人とも覚しいのは、頭のはげた五十
恰好
(
かっこう
)
の日本人で、白く肥った
好々爺
(
こうこうや
)
ですが、ドコかに食えないところがあって
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
赭
(
あか
)
黒い顔の頬が垂れ、眼袋ができていた、ちょっと見ると
好々爺
(
こうこうや
)
にみえるが、細い眼の底には相当するどい光りがあり、悪くいえば
狡猾
(
こうかつ
)
、ひいきめにみても
老獪
(
ろうかい
)
という感じはまぬかれない。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と
遣
(
や
)
りそうな、
串戯
(
じょうだん
)
ものの
好々爺
(
こうこうや
)
の風がある。が、歯が抜けたらしく、
豊
(
ゆたか
)
な肉の頬のあたりにげっそりと
窶
(
やつれ
)
の見えるのが、
判官
(
ほうがん
)
に
生命
(
いのち
)
を捧げた、苦労のほどが
偲
(
しの
)
ばれて、何となく涙ぐまるる。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の
好々爺
(
こうこうや
)
の表情が忽ち緊張して、その鋭い両眼は、刺す様に輝き始めた。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
当主である清太郎の父の理兵衛は
放縦
(
ほうしょう
)
な
好々爺
(
こうこうや
)
である。じっとしてはいられない性分で、何かと事業に手を出したがる。今までに幾つかの事業に手を出しては人にも
騙
(
だま
)
され、
悉
(
ことごと
)
く失敗に終っている。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と彼はこの上もない
好々爺
(
こうこうや
)
らしい顔つきでつけ足した。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
他の者らのようにユダヤの
好々爺
(
こうこうや
)
とならないうちから、民族固有のあらゆる機才をもって、自分のもたない感情をも代わる代わる背負っていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼はその崇高な仕事を一つの賦役として機械的にやってはしないか。囚人馬車のなかで死刑執行人と相並んでるその
好々爺
(
こうこうや
)
を、一個の司祭だと諸君はいうのか。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「馬超は亡命の客将。黄忠はすでに老朽の
好々爺
(
こうこうや
)
。それらの人士と、われにも同列せよとのお旨であるか」
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つまり父はいつの間にか暴君の座から引きおろされて、
好々爺
(
こうこうや
)
式な父に変化して行きつつあつたのだ。もつとも雷雨はかなり頻繁に来た。厳しさも全く失はれたのではなかつた。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
パイプを
脂下
(
やにさが
)
りに
銜
(
くわ
)
えたままチェロを奏しているカサルスの写真を私はしばしば見受ける。あの
好々爺
(
こうこうや
)
然とした自由な態度は、やがて美しい音楽の流るるがごとく生れ出る原因でもあろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
親戚といっても、立入って口出しをする程の近しい人はなかったし、斎藤老人は実直一方の
好々爺
(
こうこうや
)
で、こんな時の力にはならなかった。乳母のお波は、多弁で、正直で、涙もろい外に取柄のない女だ。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これと反対に、すこぶる
好々爺
(
こうこうや
)
な白猫がやって来る。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
がこの
好々爺
(
こうこうや
)
はもはや故人となって、何物をも求めてはいなかったのである。——それゆえに、名手や管弦楽長や劇場主らは、多くの
憐憫
(
れんびん
)
を彼にかけてやっていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
郷里
宛城
(
えんじょう
)
の田舎に
引籠
(
ひきこも
)
っていた
司馬懿
(
しばい
)
仲達は、退官ののちは、まったく閑居の
好々爺
(
こうこうや
)
になりすまし、兄司馬
師
(
し
)
、弟司馬
昭
(
しょう
)
のふたりの息子あいてに、至極うららかに生活していた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
老人についてなら「
好々爺
(
こうこうや
)
だ」と言いたい気を起こさせるほどのものだった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
小男の顔が、まるで
好々爺
(
こうこうや
)
のように
笑
(
え
)
みくずれた。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
家の者たちはこの
好々爺
(
こうこうや
)
を馬鹿にしていましたが、それでもやはり自慢にしていました。「これは気違い
爺
(
じい
)
さんだ、けれど、天才であるかもわかったものではない……」
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
子供たちよ、この
好々爺
(
こうこうや
)
の祝福を受けてくれ。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
クリストフはその
好々爺
(
こうこうや
)
を長
椅子
(
いす
)
からなぐり落としてやろうかとも考えた。彼はリュシアン・レヴィー・クールがなんと言ってるか聞きたがっていた。攻撃の口実をねらいすましていた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
好
常用漢字
小4
部首:⼥
6画
々
3画
爺
漢検準1級
部首:⽗
13画
“好々”で始まる語句
好々
好々的
好々人
好々翁