タイプ)” の例文
そうして被害者と食事をした男が、犯罪者タイプの顔をしていることを知って、この男がその犯人であると考えてもよいと思いました。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
クリストフはしばしば、その一郭を歩き回っては、物珍しいまたかなり同情のある眼で、さまざまのタイプの女を通りがかりにうかがった。
青年のうちにまたなかなか複雑なタイプの類別が生じている。男の貞操とか女の貞操とか対比的によく問題となってきている。
若き世代への恋愛論 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
妻は所謂良妻賢母といったタイプの女で、几帳面に家事を整えてくれました。で僕達はまあ幸福な家庭を作ったわけです。
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
丁度あの頃私はトルストイの「アンナ・カレニナ」を読んでいたから、私は自分で想像したヴロンスキイのタイプをその参事官に当嵌あてはめてみたりなぞした。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
タイプ化された幽霊は、謡曲中の幽霊である。しまいには懺悔をし成仏をする。諦めのいい幽霊と言わなければならない。
妖異むだ言 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
例えば『三人妻』など云う作品だって如何いかにも三人の妻の性格を描き分けてあるけれども、それが世間に有り触れた常識的タイプに過ぎないのですからね。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それでも感受性の鋭いタイプの観覧者に取っては、彼等が場内にはいって後に作品から受取る表象の同化異化作用に何らかの影響を及ぼさないものだろうか。
帝展を見ざるの記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
太田はかつて何かの本で讀んだ記憶のある、この病氣の一つの特徴ともいふべき獅子面ライオンフエーズといふ顏のタイプを、その男の顏に始めてまざまざと見たのであつた。
(旧字旧仮名) / 島木健作(著)
その男は、服装みなりから見ても人柄から見ても、高等乞食こじきとでも称し得るようなタイプをそなえていた、すなわち非常な見窄みすぼらしさとともにまた非常な清潔さを。
此の役はロマンチスムの運動が作り出した若い女の一つのタイプで、「オボコ」らしくて実はコケットな、どうかするといくらかサンシュエルな女なのである。
芸術座の『軍人礼讃』 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
それが一人ひとり違ったタイプと服装で、ちょいとした若奥様みたいなのや、良家の令嬢と言ったのや、おきゃんな女学生風なのや、白エプロンの女給々々したのや
「それがバルザックに「タイプ」即ち、一箇きりの情熱に全く要約された存在を創造することを許したのだ。」
小説のことなど (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
逞しい繼父の小左衞門に似ず、華奢きやしやで、ちよいと良い男で、そして遊び好きらしい、にやけたところのある若者、八五郎などの嫌ひなタイプに屬する若旦那型です。
彼は生若なまわかい伍長が直立して敬礼するのに対して、馬鹿野郎と呶鳴った。軍人より匪賊ひぞくというタイプだった。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
(女の顔を見入りながらからかふやうな眼付になる)コーカサスタイプで以て、鼻筋だけは独逸女のやうに何処かかうキリツとしたところのある顔、と言へば好いのかな。
故松助演じるところの『梅雨小袖つゆこそで』の白木屋お駒の髪結かみゆい新三しんざをとっちめる大屋さん、かつおは片身もらってゆくよのタイプで、もちっとゴツクした、ガッチリした才槌頭さいづちあたまである。
つまり極度にヒステリックな変態的女丈夫じょじょうふとでも形容されそうなタイプの女であったが、それだけに又、自分の身体からだが重い肺病にかかっても、亭主の彼に苦労をかけまいとして
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ダンテもウフイツチ邸で見たラフワエルも美男子びだんしだが、これが昔からフイイレンチエの男のタイプなのであらう。今もこの土地の男にはダンテやラフワエル風の好男子が多い様だ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「ええ、奥さんと云う方は、古風な大店の御新造ごしんぞさんと云ったタイプの人ですからね。それに、これは去年の暮私が頼まれて作ったのですが、蜘蛛糸は本物の小道具なんですよ」
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
常識はひどく欠乏しているが、その代りには、悪事にかけては普通人の及ばぬ、畸形な感覚を持っているのかも知れない。所謂先天的犯罪者タイプに属する子供かも知れないのです。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
林黛玉の梅逢春がやっと一座に加わったのは、もう食卓のふかひれタンが、荒らされてしまった後だった。彼女は私の想像よりも、余程娼婦のタイプに近い、まるまると肥った女である。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しばらくして出て来たのは陰気なタイプのひょろ長い、胡麻塩ごましお頭の気の浮かない、給仕頭で、その男のブツブツ云うところによると、サレーダイン公爵はこの頃ずーッと不在であったが
こういう人物が我々の側から見ますと、時に非常な犯罪を企図するタイプなのですが、このフリオ・ベナビデスもやはり御多分に洩れずまことに恐るべきことをいたしておりますのです。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
ジュッド医師は、四十八歳の温厚な小市民タイプである。気の毒な程取り乱していた。
アリゾナの女虎 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「いやなに、夫の一つのタイプなんですがね……説明すると長くなります。それよかそろそろ引き上げて頂きましょうか、もう歸っておやすみになる時刻ですよ。あんたにはうんざりしましたよ!」
私達が、冗談半分に、どこの奥さんが美しいとか、誰のタイプは好きだとか話しますと、大変嫌な顔をいたしましたし、新聞などの情事事件をあれこれ批評することも、父の前では出来ませんでした。
落ちてゆく世界 (新字新仮名) / 久坂葉子(著)
「流行の朗かタイプ?」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
従兄の悲しさに、あんたも私も、どうもサディストのタイプに属するらしいね。アッペルバッハの新しい性格分類法で行くと。
一本の花 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
またごく話し上手で、多少鈍重ではあるが様子がよく、ドイツにおいて古典的な美男子とさるるタイプに属していた。
この石川五郎という男が、定型的な犯罪者タイプを備えているに反して、大村さんは骨相学上から言えば、どうしても善人としか考えられない顔をしているよ。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
年々すくなくなりつつある Good Girls というタイプが、電話線の向端で標準国語を使っている。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
典型的な忠義者、——と言つた感じの、几帳面きちやうめんに、忍從で少し片意地で、そのくせ愛嬌のある——こんなのが飛んだ喰はせ者かも知れないと思つたほど『番頭タイプ』の人間です。
ベネディクト修道女というよりもむしろベネディクト修道士と言ったふうなタイプだった。
いはゆる老嬢オールドミスには違ひないが、その風丰と云ひ、挙止と云ひ、殊に、多少鼻にかかる言葉の調子に至つては「オールド」の色よりも「ミス」の気が勝ち、世間タイプで云ふ先生タイプのなかでも
荒天吉日 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
厳密にいったなら美人ではなかったかも知れないが、野性ワイルド魅力チャームが非常にあるタイプだ。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
まだ二十代の若い男らしかった。太田はかつて何かの本で読んだ記憶のある、この病気の一つの特徴ともいうべき獅子面ライオンフェースという顔のタイプを、その男の顔に始めてまざまざと見たのであった。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
昔から自分の気に入ったタイプの人物にしか関心しようとしない自分の習癖しゅうへき
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
これはもう仰しゃるようなタイプじゃなく、洟っ垂れの大供にすぎませんさ。
たゞ、洗練された常識に過ぎないのですよ。例へば『三人妻』など云ふ作品だつて如何にも三人の妻の性格を描き分けてあるけれども、それが世間に有り触れた常識的タイプに過ぎないのですからね。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
まだ純然たる書生タイプで、院長らしい気取った態度は微塵みじんもない。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ジャアナリズムの触手の通信員タイプの人物だった。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
彼はアフリカや極東と取引をしてる商館にはいっていた。新しいドイツ人の一つのタイプを具えていた。
典型的な忠義者、——といった感じの、几帳面きちょうめんに、忍従で少し片意地で、そのくせ愛嬌あいきょうのある——こんなのがとんだ喰わせ者かも知れないと思ったほど「番頭タイプ」の人間です。
性格的「タイプ」を創造することはできなかつたが、現代社会を形造る階級的乃至職業的「タイプ」を捉へて、微細な観察を下し、これを特殊な「境遇シチュエション」の中に投げ込んで、一種のグロテスクな
仏国現代の劇作家 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
仏蘭西フランスのヴィドックという探偵は、眼だけ見れば犯罪者か否かが分かるとさえ言っているが、眼が窪んでいて割合に大きく、しかも何となく光がにぶくうるんで見えるのは、殺人者タイプに属するもので
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
あらゆる価値の相対性、それらをタイプ化せんとする偏執狂的熱中。
性格的「タイプ」を創造することはできなかつたが、現代社会を形づくる階級的乃至職業的「タイプ」をとらへて、微細な観察を下し、之を特殊な「境遇」の中に投げ込み、一種のグロテスクな
迎へてくれた主人鈴川主水もんどは、三十五、六の立派な男でした。滑らかな皮膚の色、高い鼻、精練された聲など、年はとつても、何樣一とかどの美男で、藝人などによくあるタイプの男前です。
“男まさり”というタイプの、水のような冷たい表情です。