地蔵じぞう)” の例文
旧字:地藏
でもこれがもしほんとうだったとすれば、はなのきむら人々ひとびとがみなこころ人々ひとびとだったので、地蔵じぞうさんが盗人ぬすびとからすくってくれたのです。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
こちらでは道祖神どうそじん・山の神またはほうきの神、或いは地蔵じぞう観音かんのんを誘いにくるともあって、土地ごとに少しもまっていない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
むらさき色のへ、金泥きんでい地蔵じぞうさまのおすがたが刷ってある。そしてそのわきには、こんな文句もんくが書いてあるのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日がみじかい頃で、葬式が家を出たのは日のくれ/″\であった。青山あおやま街道かいどうに出て、鼻欠はなかけ地蔵じぞうの道しるべから畑中を一丁ばかり入り込んで、薄暗うすぐらい墓地に入った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
地蔵じぞうさまと毘沙門びしゃもんさまのおぞうの、あたまにもむねにも、手足にも、肩先かたさきにも、幾箇所いくかしょとなくかたなきずやきずがあって、おまけにおあしにはこてこてとどろさえついておりました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
背丈せたけはヒトミよりすこし高い。お地蔵じぞうさまを青石でこしらえている途中のようなものに見えた。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「エエ、じれったいお地蔵じぞうさん」の唄声に合わせて、お美夜ちゃんは両の袂を振りまわし、さもじれったそうな態度こなしよろしく、「石では口がきけないね」で口に両手を重ねて
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
雑誌『三田文学』を発売する書肆しょし築地つきじ本願寺ほんがんじに近い処にある。華美はで浴衣ゆかたを着た女たちが大勢、殊に夜の十二時近くなってから、草花を買いに出るお地蔵じぞうさまの縁日えんにち三十間堀さんじっけんぼり河岸通かしどおりにある。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
地蔵じぞうさんが草鞋わらじをはいてあるいたというのは不思議ふしぎなことですが、なかにはこれくらいの不思議ふしぎはあってもよいとおもわれます。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
木之本は、山の東麓とうろくに沿う街道の一宿駅で、山上軍の一部は、ここにたむろし、宿端しゅくはずれのあざ地蔵じぞうという所には、屋根なしの井楼せいろう(物見やぐら)を設けて斥候陣地としていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子安こやすは近世は主として地蔵じぞう観世音かんぜおん霊験れいげんと結合しているが、そういう中でもなお古い頃の民族信仰の名残が見つけ出されるということは、四十年も前に一度書いてみたことがあり
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「ではさっそく、その地蔵じぞうさまと毘沙門びしゃもんさまにおまいりをしてよう。」
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「むこうの辻のお地蔵じぞうさん よだれくり進上、お饅頭まんじゅう進上……」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
地蔵じぞうさんもなにもないのに、なんでこんなとこに賽銭箱さいせんばこがあるのじゃろ。」そしておばあさんはってしまいました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そうつぶやくと、殺気さっき形相ぎょうそうは一しゅんにさめて、かれの顔は地蔵じぞうのとうとい微笑びしょうてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中の中の地蔵じぞうさん
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「ここに大御所はお見えでないが、兄上はまた、奥で、地蔵じぞうのお絵でも描いておられるのか」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜなら、どういうわけか、この地蔵じぞうさんには村人むらびとたちがよく草鞋わらじをあげるので、ちょうどそのあたらしいちいさい草鞋わらじ地蔵じぞうさんのあしもとにあげられてあったのである。——というのでした。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
宮内くない血相けっそうには多少おどろいたが、多寡たか地蔵じぞうさまを背負せおってあるくかねたたき、なんの意気地いくじがあるものかと、頭から見くびって、思うぞんぶん、つばをとばして罵詈ばりするので、いまはもう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地蔵じぞうの顔も、三度という。それを、十度も越す催促じゃ。……あの、辛抱づよい、徳川どのが、とぼけ頭巾ずきんも、そらつかいの仮面めんいで、ついに、かんしゃく玉を破った顔が目に見ゆるようだぞよ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
網引あみひ地蔵じぞう
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のぼ地蔵じぞう
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)