呉々くれぐれ)” の例文
その節は、亡父のよしみもあり、東海道愛好者としても呉々くれぐれ一臂いっぴの力を添えるよう主人に今から頼んで置くというのであった。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「牧野を援助するように」と呉々くれぐれも言われたそうであったが、某氏はしかし私に対しては極めて冷淡であり、援助もやがて途絶えてしまった。
夫人はあなたからの贈物を大変喜んで、近日中是非御礼に伺うけれど、呉々くれぐれもよろしく申上げてくれという事でした。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
芥川ヒロシ氏の友人の由で、明日、芥川家を訪ねると云ふから、その節は、葛巻義敏に呉々くれぐれもよろしく、とたのむ。
御膝下を離れてむしろ今、人となる道をおしえられ、また、御両親様の大愛の一しお身に迫るものを新たに覚えておりまする。では呉々くれぐれも、御自重のほどを。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでないとこの先の見込みがつかないからと諄々じゅんじゅんと清吉の不勉強や不品行や物覚ものおぼえの悪い点を列挙して、清吉の教育法について呉々くれぐれも心配してくれたのである。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その深い罪のお詫びは、仮令たとえ、このはかない玉のが絶えましてもキットお側に付添うて致します。……お別れしたくない……子供の事を呉々くれぐれもお願いします。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おわりのぞみ、私の妻もあなたのわれ負わるゝ数々かずかずの重荷に対し、真実御同情申上げる旨、呉々くれぐれも申しました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこで泰さんもやむを得ず、呉々くれぐれも力を落さないようにと、再三親切な言葉を添えてから、電車では心もとないと云うので、車まで云いつけてくれたそうです。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
秀子の為に人を劫かし、又は法律の力を借りなどする事は有るまいと見て取ったのだ、秀子が若し夏子でなければ、成るほど甚蔵は余に巴里へ行けなど呉々くれぐれも云う筈はない。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
外国人は矢ツ張り目がえて居りますのネ、ゼームスつて洋琴オルガンを寄附した宣教師さんがネ、米国くにへ帰る時、ぜんの奥様に呉々くれぐれも仰つしやつたさうですよ、山木様は余り悧巧りかうだから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
私をなにか若木山の熊の仔の如き鈍物とは呉々くれぐれも思わないで欲しい。
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
木村父子に対して氏郷を親とも主とも思えと秀吉の呉々くれぐれも訓諭したのは、善意に解すれば氏郷を羊の番人にしたのに過ぎないが、人を悪く考えれば、羊が狼に食い殺された場合は番人には切腹させ
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「一阿弟あてい官吉御督責成し下され候様呉々くれぐれも願上げ候。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
文庫のことは呉々くれぐれも頼むと仰せがございました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
呉々くれぐれも身体を大切にしてネ。
偽悪病患者 (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
あれほど呉々くれぐれも言つたではないか。お前もよく納得したことではないか。今更そんなことを言つてどうなるものか。
狼園 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
もちろんその儀は仔細しさいなしという事ではあったが、呉々くれぐれも無理をせぬようにと、重ねて信長は見舞をよこした。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ。……その……別にソンナ訳じゃありませんけど、あの後家さんがツイこの間来ましてね。呉々くれぐれもよろしく……買手があったら安く売りますからってね」
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ついてはどうか呉々くれぐれも、恩人「ぽうろ」の魂のために、一切他言たごんつつしんで下さい。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
見当違いに恥じたりなさるな。と呉々くれぐれも申し聞かせたのですが駄目です
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
文庫のことは呉々くれぐれも頼むと仰せがございました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
芥川あくたがわヒロシ氏の友人の由で、明日、芥川家を訪ねると云うから、その節は、葛巻義敏くずまきよしとし呉々くれぐれもよろしく、とたのむ。
などと一同をよろこばせ、また呉々くれぐれも念を押して町へ帰って行った。それがよいいぬこくころだったのである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思わずせかえってゴホンゴホンとせきをしたが、それにしてもこの際呉々くれぐれも残念なことは、自分の受持区域でありながら、被害者のうちに見舞に行けない事であった。
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ただ呉々くれぐれも妻は己の職業に慢心まんしんして大切にしてもらう夫にれ、かりにも威張いばったり増長ぞうちょうせぬこと。月並のいましめのようなれど、余程よほどの心がけなくてはいわゆる女性のあさはかより、このへいおちいやすかるべし。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
八月九日までには帰ってきますが、歌川先生御夫妻は呉々くれぐれも御注意下さい。部屋の鍵は紐でグルグル巻きに結びつけるのも結構です。食べ物にも御注意下さい。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「かたじけないが後も大事だ。万一、毛利家に豹変あるときは、おことらの力につものが多い。ここの一塁は、毛利への抑えとして、筑前がたのみおくもの。呉々くれぐれ、抜からぬように」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉々くれぐれも女車掌なんて止して頂戴。ね。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
父の莫逆ばくげきの友だつた市島春城翁、政治上の同輩だつた町田忠治といふやうな人の話に、長男のことを常に呉々くれぐれも頼んでをり、又、長男のことを非常によく話題にして
石の思ひ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
と、使いの口上にも意中をふくませて、その将来を呉々くれぐれも頼んだのであった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉々くれぐれよろしくお頼み申します。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
父の莫逆ばくげきの友だった市島春城いちしましゅんじょう翁、政治上の同輩だった町田忠治というような人の話に、長男のことを常に呉々くれぐれも頼んでおり、又、長男のことを非常によく話題にして
石の思い (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「ぬかりもあるまいが、油断すな。呉々くれぐれ、身に気をつけよ」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉々くれぐれも云いおいて行った。
衝突心理 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
青木は長平と会うたび、礼子から呉々くれぐれもよろしくとのことだったよ、とか、上京の節はぜひ泊りにきてくれと頼まれたよ、などと付け加えるのが例であったが、あるとき
街はふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「立ち帰ったら劉玄徳へはよろしく伝えてくれい。そしてもし、曹操の大軍にささえ難く、徐州も捨てるのほかないような場合になったらいつでも我が冀州きしゅうへ頼って参られるがよいとな。……呉々くれぐれ、悪く思わないように」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴殿の女房が丸まげに結ひかんざしさしてゐる時にはいかなる油断を見すましてこれを逆手に貴殿の脾腹や眼の玉をブスリとやるか知れないことを呉々くれぐれも心得てゐなければならぬ。
総理大臣が貰つた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
千谷さんから呉々くれぐれも云われたように、当時の私はまだ恢復が充分ではなかったところへ、暑気に当てられ、決して多くの催眠薬を服用したとは思わぬうちに、春の病状をくりかえしていた。
わが精神の周囲 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)