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ほう
ふりがな文庫
“
呆
(
ほう
)” の例文
だが、彼女は職業の場所に出て、好敵手が見つかると、はじめはちょっと
呆
(
ほう
)
けたような表情をしたあとから、いくらでも快活に
喋舌
(
しゃべ
)
り出す。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ゆたりゆたりと
呆
(
ほう
)
けたように空を流れ、浜の子供たちがワーッと歓声をあげ
乍
(
なが
)
ら、一かたまりになって、それを追かけて行くところであった。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
人々ががやがやと集って来て、そこら辺に立ち
呆
(
ほう
)
けて、右手奥の方を眺めている。験者達の呼ばい声、鈴の音は、次第次第に熱ばんで来る調子。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
呆
(
ほう
)
けたように陰気で無表情な顔、油っ気のない
髷
(
まげ
)
、どこから見ても、お舟と一緒に置いて、「男性」の不安を感じさせるような人間ではありません。
銭形平次捕物控:097 許嫁の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
遊び
呆
(
ほう
)
けたあとの憂鬱が身体に沁みとおり、わけもなく飲みつづけたコクテールやジン・フィーズの酔いで手足が
痺
(
しび
)
れ、そのまま、ふと夢心地になる……
肌色の月
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
今でいえば
新開
(
しんかい
)
の町だけに、神田区上町との間に流れる
溝
(
どぶ
)
川の河岸についた、もとの大牢の裏手の方は
淋
(
さび
)
しいパラッとした町で、
呆
(
ほう
)
けたような空気だった。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
成田の
祇園会
(
ぎおんえ
)
を八日で切上げ九日を
大手住
(
おおてずみ
)
の
宿
(
しゅく
)
の親類方で遊び
呆
(
ほう
)
けた小物師の与惣次が、商売道具を
振分
(
ふりわけ
)
にして
掃部
(
かもん
)
の宿へかかったのは昨十日そぼそぼ暮れ
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
終
(
つ
)
いには円陣までもが身動きもならぬほどに立込み、大半の者は足踏のままに浮れ
呆
(
ほう
)
け、踊り
痴
(
ほう
)
けていた。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
遊
(
あそ
)
び
呆
(
ほう
)
けるのも一快でしょうが、そのうえまた、彼女らの世界に
楮銭
(
ちょせん
)
の価値を教えてやって流行らせます。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しばらくすると、忠直卿の目の前に、病犬のように
呆
(
ほう
)
けた与四郎の姿が現れた。数日来の心労に疲れたと見え、色が蒼ざめて、顔中にどことなく殺気が漂っている。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
あの時の火事で入道さまが将軍家よりおあずかりの
貴
(
とうと
)
い御文籍も何もかもすっかり灰にしてしまったとかで、御所へ参りましても、まるでもう
呆
(
ほう
)
けたようになって、ただ
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ビセートルの観念のつぎにノートル・ダームの塔の観念が現われた。——あの旗の立ってる塔に登ったらよく見えることだろう。と私は
呆
(
ほう
)
けた微笑をうかべながら考えた。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
したがって、その日になって海へとびだし、遊び
呆
(
ほう
)
けていたことも、さして叱りはしなかった。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
師匠が言うのでそっちを見ると仕切りを
外
(
はず
)
した次の部屋に、
呆
(
ほう
)
けた面相の年増が二人いた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
白い靴下に白靴を
穿
(
は
)
いて、黒の地味な洋傘を持って……白麻の幌をかけた美事な籐製の乳母車を押しているのが何となく似合わしくなかったが、しかし病み
呆
(
ほう
)
けた昂作の眼には
童貞
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
梶は玉手箱の
蓋
(
ふた
)
を取った浦島のように、
呆
(
ほう
)
ッと立つ白煙を見る思いで
暫
(
しばら
)
く空を見あげていた。技師も死に、栖方も死んだいま見る空に彼ら二人と別れた横須賀の最後の日が映じて来る。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
周平は
呆
(
ほう
)
けた気持で、彼女の顔を見つめた。今迄気づかなかったことだが、額から眼の下へかけて薄い
雀斑
(
そばかす
)
があった。けれど、くっきりと切れた上眼瞼の二重が、如何にも美しかった。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
噫
(
ああ
)
、
噫
(
あ
)
、世も許し、人も許し、何よりも自分も許して、今時も河岸をぞめいているのであったら、ここでぷッつりと数珠を切る処だ!……思えば、むかし、
夥間
(
なかま
)
の飲友達の、遊び
呆
(
ほう
)
けて
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無い時もあった。此のような生活をしながらも、目に見えぬ何物かが次第に輪を
狭
(
せば
)
めて身体を
緊
(
し
)
めつけて来るのを、私は痛いほど感じ始めた。歯ぎしりするような気持で、私は連日遊び
呆
(
ほう
)
けた。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
過去は
悔
(
くや
)
まぬこと——かれは平生からそれだけの心構えはしていた。その根本さえ立てておけば好い。そう思ってみてもかれはやはり弱かった。自分の考に考え
呆
(
ほう
)
けて、その
挙句
(
あげく
)
ぼんやりする。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
残された妻は深い
溜息
(
ためいき
)
をついてそう云った。彼女だけの重い苦しみに疲れはてて、見境いも無くなった。今では袖をひいた伜を邪険に突きとばし、彼女の
呆
(
ほう
)
けた頭には何か
閃
(
ひら
)
めくものがあったらしい。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
呆
(
ほう
)
けた表情で見てゆくだけ
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
こころに
呆
(
ほう
)
け見ゐたりけむ
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
だが、彼女は職業の場所に出て、好敵手が見つかると、はじめはちょっと
呆
(
ほう
)
けたような表情をしたあとから、いくらでも快活に
喋舌
(
しゃべ
)
り出す。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
猪狩りは名目だったが、思いたてば、なにをやりだすかしれない放埓な連中のことだから、面白ずくに巻狩りでもはじめ、二子山のあたりで遊び
呆
(
ほう
)
けているのでもあろうか。
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「ははは。そちは信長を
盲
(
めくら
)
と思うているな。京では京の浮かれ
女
(
め
)
とあそび
呆
(
ほう
)
け、
近江路
(
おうみじ
)
へ来ては、長浜のさる
豪家
(
ごうか
)
まで、そっと
於
(
お
)
ゆうを呼んでおいて、
密
(
ひそ
)
かに会って来たであろう」
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
箪笥
(
たんす
)
の引手でもよい、
逞
(
たく
)
ましい
火箸
(
ひばし
)
でも構わない、そんなものを使って絞めさえすれば、自分で自分の命を絶てないこともないというのが、首縊りの言い伝えだが、この竜吉というのは、病み
呆
(
ほう
)
けて
銭形平次捕物控:244 凧の糸目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「どうも先生もお年のせいで少し
呆
(
ほう
)
けて来たのではないか」
半化け又平
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかし、わたくしが
朧
(
おぼ
)
ろに眺めたという猫柳は、今もちゃんと座敷の隅の花器に挿されて、花房は萼を
悉
(
ことごと
)
くほうり落し、銀の毛は黄ばむほど咲き
呆
(
ほう
)
けています。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「どうも、都ではちとやり過ぎたかもしれません。なぜか公卿どもはこの直義を、尊氏のふところ刀だの、切れ者だのといって、いたく恐れられております。鎌倉では、当分、
呆
(
ほう
)
けておりましょう」
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若旦那の松次郎は羽を伸ばして遊び
呆
(
ほう
)
けてゐる樣子でした。
銭形平次捕物控:221 晒し場は招く
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
呆
(
ほう
)
けてやがる、なにが大変だ」
初午試合討ち
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
枝を縫って学園の庭を蝶や鳥のように遊び
呆
(
ほう
)
けられたものだと、先ずそのことが先に胸を突き、有難く
忝
(
かたじ
)
けなく、しかし、この
睦
(
むつ
)
びももうこの先そう永いこともあるまい。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
呆
漢検準1級
部首:⼝
7画
“呆”を含む語句
痴呆
呆然
呆気
阿呆
寝呆
呆痴
呆痴者
呆返
阿呆鳥
阿呆顔
痴呆性
阿呆面
痴呆者
癡呆
痴呆奴
呆々
呆作
呆氣
空呆
阿呆陀羅経
...