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可恐
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こは
だつて、
緋だの、
紫だの、
暗い
中に、
霰に
交つて——それだと
電がして
居るやうだもの……
其の
蔀をこんな
時に
開けると、そりや
可恐いぜ。
文ちやんが余計にお節を慕つたのは、
可恐い思をした時とか、さもなければ
酷く叔父さんから叱られた時だ。
陽氣の
加減か、よひまどひをして、
直き
町内の
大銀杏、ポプラの
古樹などで
鳴く
事があると、
梟だよ、あゝ
可恐い。
「……
螢だ、それ
露蟲を
捉へるわと、よく
小兒の
内、
橋を
渡つたつけ。
此の
槐が
可恐かつた……」
可恐いもの
見たさで、
私もふツと
立つて、
框から
顏を
出すと、
雨と
風とが
横なぐりに
吹つける。
空模樣が
怪しくつて、
何うも、ごろ/\と
來さうだと
思ふと、
可恐いもの
見たさで、
惡いと
知つた
一方は
日光、
一方は
甲州、
兩方を、
一時に
覗かずには
居られないからで。
「おつかさんが
呼んでるぢやないか。
葉の
中へ
早くお
入り——
人間が
居て
可恐いよ。」
但し
浮氣だつたり、おいたをすると、それは/\
本當に
可恐いのである。
……そのうち
場所の
事だから、
別に
知り
合でもないが、
柳橋のらしい
藝妓が、
青山の
知邊へ
遁げるのだけれど、
途中不案内だし、
一人ぢや
可恐いから、
兄さん
送つて
下さいな、といつたので、おい
こんな、
寂しい
時の、
可恐いものにはね、
鎧なんか
着たつて
叶はないや……
向つて
行きや、
消つ
了ふんだもの……
此から
冬の
中頃に
成ると、
軒の
下へ
近く
來るつてさ、あの
雪女郎見たいなもんだから
「
犬なんか
可恐くないよ。ちツちツちツ。」
「
面白くはないよ……
可恐いよ。」