取敢とりあ)” の例文
ればといいこれを幕府の方に渡せば、殺さぬまでもマア嫌疑けんぎの筋があるとか取調べるかどがあるとかいっ取敢とりあえず牢には入れるだろう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
云うのであろうそのうちには本音をくであろうともうそれ以上の詮議せんぎめて取敢とりあえず身二みふたつになるまで有馬へ湯治とうじにやることにした。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
侍「いや是は手前が此の刀屋で買取ろうと存じまして只今中身なかごて居ましたところへ此の騒ぎに取敢とりあえず罷出まかりでましたので」
当日は自分は同道できないが、さだめしきょうある御清談が交わされよう。取敢とりあえず、御返辞までを、としたためてあった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれ、貴兄に機会があればお詫びするとして取敢とりあえず原稿を御返却いたします。匆々。『秘中の秘』編輯部。
二十世紀旗手 (新字新仮名) / 太宰治(著)
やはり取敢とりあえずの息つぎとして、このお薬園をえらんで、七兵衛のツイ眼と鼻の先へ来て、かがんで額をあつめたから、七兵衛も苦笑をしないわけにはゆきません。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
折節おりからいづれも途方とほうれてりましたから、取敢とりあへずこれツて見樣みようふので、父親ちゝおや子供こども兩足りようあしとらへてちうつるし、外面そとかしてひざ脊髓せきずいきました、トコロガ
コンナ計劃が違法か、違法でないかは、希望者が司法官連中と来ているんだから、先ず先ず別問題としても、そうした思い附きの奇抜さ加減には取敢とりあえず度肝どぎもを抜かれたよ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
検事は古参の憲兵曹長と警察署長と協議の上、取敢とりあえず邸内の人々の取調べを行った。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
最寄もより区役所は取敢とりあえず溺死漂着人と見做みなして仮に埋葬し新聞紙へ左の如く広告したり
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
わたくしは取るものも取敢とりあえずその夜のうちに随心院へ参り、雑兵劫掠ぞうひょうきょうりゃく顛末てんまつを深夜のことゆえお取次を以て言上ごんじょういたしましたところ、太閤たいこうにはお声をあげて御痛哭つうこくあそばしましたよし
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
私のペン・ネエムは知っていても本名は知らなかったので失礼した、アトでっと気がついて取敢とりあえずおびに上ったがお留守で残念をした、ドウカ悪く思わないでた遊びに来てくれという
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
虎は何処どこだと叫びながら、尻をまくって取敢とりあえず飛び出して見たりする。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
現に独逸どいつ伯林べるりんでも今より十二、三年前各処の水道の支線から不意に水が出なくなって大騒ぎをした事がある。取敢とりあえずその支線を掃除して水を通すとまた十日ばかり過ぎて水が通らなくなる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
今夜は取敢とりあえず花束にでもしようかと貞之助が云い出して、そんな買物をするために、食事を済ますと五人は早めに神戸へ出た。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
来た所で取敢とりあえず久振りといって茶を出して、茶も飲め、ついでに飯も喰えと勧めて、れから握飯を出して、私もべるから君も一つ喫べなさい
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これから小三郎音羽だけは姿の見えないように屋根船に乗らせ、仙太郎も重三郎も取敢とりあえず政七方へ出てまいりました。
娘は或る知合いの法華の家へ嫁にやるようにきまっています、というむごい返事、次郎右衛門は聞いて仰天して、取敢とりあえずお蘭に、伝六なんの役にも立たざる事、ならびに
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
安手やすでに出て、そうして、まあ取敢とりあえず木曾街道を塩尻まで無事に同行したと思い給え。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたくしは取るものも取敢とりあへずその夜のうちに随心院へ参り、雑兵劫掠ぞうひょうきうょりゃく顛末てんまつを深夜のことゆゑお取次を以て言上ごんじょういたしましたところ、太閤たいこうにはお声をあげて御痛哭つうこくあそばしましたよし
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
何や彼やあとさきになりましたが、取敢とりあえず今日までのところをお知らせ申します。私はこれから又病院へ行って見ます。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今度薩州の人が江戸に来て英人との談判に付き、黒幕の大久保市蔵おおくぼいちぞう取敢とりあえず清本卯三郎を頼み、かくにこの戦争をしばら延引えんいんして貰いたいと云う事を
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
取敢とりあえず文治には乱暴者として揚屋入あがりやいり仰付おおせつけ、其のの者は当分仮牢留置とめおきを申付けられました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「まことに穏かならぬことが出来ましたから、それで取敢とりあえず御注進に参りました」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まず取敢とりあえず吹き出してしまったかも知れないのですが、今日のは、最初の出が緊張していた上に、鳴物入りの凄味すごみまで加わってここへ来ているのですから、ただ若干の失笑を余儀なくされただけで
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
先は取敢とりあえず御報まで
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)