おつし)” の例文
道翹だうげうこたへた。「豐干ぶかんおつしやいますか。それは先頃さきころまで、本堂ほんだう背後うしろ僧院そうゐんにをられましたが、行脚あんぎやられたきりかへられませぬ。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこで趙は堪へかねて笑ひ出して、「何とおつしあります、唐氏の定鼎は方鼎ではございませぬ、円鼎で、足は三つで、方鼎と仰あるが、それは何で」
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
なに叔母をばさんのはうぢや、此方こつち何時迄いつまで貴方あなたことはふしたまんま、かまはずにくもんだから、それであゝおつしやるのよ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そのあなたがわたくしを連れて逃げて下さるとおつしやるのは、いつ頃でせうか」と、娘はたゆたひながら尋ねた。
駆落 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
ときは、警察けいさつ飛込とびこんでもみたさうですけれど、大久保おほくぼさんのおつしやることが、やはり真実しんじつらしくきこえたものでせうか、そのときもどされてしまひました。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「だつてをばさんに薔薇を上げなくては。花も持たないで行つては、をばさんがなんとおつしやるか知れないわ。ヰクトルや。もう一本お切りよ。もう一本。沢山切るのだよ。」
薔薇 (新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
はいじつは……川上宗治かはかみそうぢ弟子でしでございます。主「フーン……お姓名なまへいてもおつしやるまいね。 ...
「まあ。何をおつしやるの。それではわたくしに御笑談ごぜうだんを仰やるやうにしか思はれませんね。昔わたくしの小さい時も、好くわたくしを馬鹿にしてお遊びなすつた事がありましたが。」
「柵が結つてあるとおつしやるのは、壽阿彌一人の墓の事ですか。それとも石塔が幾つもあつて、それに柵が結ひめぐらしてあるのですか。」
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「広田先生は、よく、あゝ云ふ事をおつしやるかたなんですよ」と極めて軽く独りごとの様に云つたあとで、急に調子をへて
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おつしやられてはじつに胸が一ぱいになります……お菓子かなにかあるだらう……賓客きやくたしてつてしまつたか……困つたなア……なにかないかなア……ンー一けんおいて隣家となり大仏餅だいぶつもちでも
こんな事を申して御機嫌を損じまするかも知れませんが、何でも夫婦の間では隠し立を致してはならないと、いつもおつしやるのでございますから申すのでございます。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
貴方あなたあのこと叔父をぢさんにおつしやつて」といた。宗助そうすけはそれできふおもしたやう
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今朝けさ早く佐々木さんが御いでになつて、小川が病気だから見舞に行つてつてください。なに病だかわからないが、なんでも軽くはない様だ。つておつしやるものだから、わたくしも美禰子さんも吃驚びつくりしたの
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
先年出水しゆつすゐの時、城代松平伊豆守殿へ町奉行が出兵を願つたが、大切の御城警固おんしろけいごの者を貸すことは相成らぬとおつしやつたやうに聞いてをります。一応御一しよにことわつて見ようぢやありませんか。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
妙なのね、そんなにいやがるのは。——いやなんぢやないつて、くちではおつしやるけれども、もらはなければ、いやなのとおんなしぢやありませんか。それぢやだれきなのがあるんでせう。其方そのかたの名をおつしやい
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おつしやらなかつたので、後にはわたくしは餘り其席へ出ませんでした。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
いやなのを無理むりおつしやらなくつてもいわ」と御米およねこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)