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ぶっちょうづら
ふりがな文庫
“
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)” の例文
旧字:
佛頂面
夫人は終始
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
で飯をかっこんでいました。酔った翌朝のことですから、味噌汁が非常においしかった。またつくり方も上手でした。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
並んで一緒にいると
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をして黙っているのが気に入らないので、私は少しも面白くなくって、物をもいわず、とっとと走った。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
叔父があわてて口の締まりをして
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
に立ち返って、何かいおうとすると、葉子はまたそれには
頓着
(
とんじゃく
)
なく
五十川
(
いそがわ
)
女史のほうに向いて
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
眼
(
め
)
に
掩
(
おお
)
い
被
(
かぶ
)
さってる
眉
(
まゆ
)
は
山羊
(
やぎ
)
のようで、
赤
(
あか
)
い
鼻
(
はな
)
の
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
、
背
(
せ
)
は
高
(
たか
)
くはないが
瘠
(
や
)
せて
節塊立
(
ふしくれだ
)
って、どこにかこう一
癖
(
くせ
)
ありそうな
男
(
おとこ
)
。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
しかし、あなたの身内の方々、それから、近しいお友達は、あなたが
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をしている時しか、あなたを見たことがないのです。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
▼ もっと見る
あの不景気な
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
が、俺のアブノーマルな
嗜好
(
しこう
)
に適したという訳でね。だから、俺は相当あの煙草屋については詳しいんだ。
二銭銅貨
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
米友もまた
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
で返事はしましたけれども、その大きな物体を、なんとなく間抜けた男だと思わないわけにはゆきません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
直ちに曹長の
許
(
もと
)
に行きて「飯の切符を下さい」と言へば曹長は
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
にて「飯の切符は
極
(
きま
)
りの時間に取りに来ねばいかん」
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
諸人は黙然としてただ
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をそむけていた。するとその不満組の一人たる周泰がすこしすすんで将台の上へ呼びかけた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主人公は答弁の限りでないというような
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をして又電文に眺め入った。鳥居氏の家系が猿から出たか何うかという討論は差当り延期になった。
或良人の惨敗
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
わざと思切って
吝
(
しみ
)
ったれな真似をした
挙句
(
あげく
)
に過分な茶代を気張って見たり、シンネリムッツリと
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をして置いて急に
噪
(
はしゃ
)
ぎ出して騒いで見たり
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
私は西村に日本語を教えにわざわざ渡来した次第でもないから、
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をして見せたぎり、何とも答えず歩き続けた。
長江游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
主人は
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
で何やらぶつくさ呟いていたが、これも一度ぺこんとした。すると親方コブセははじめて私に気付いたように、じろりとこちらを見上げた。
親方コブセ
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
支那人のボオイはますます
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をしだして、その男のために中央の円卓子の上を
不機嫌
(
ふきげん
)
そうに片づけ始めた。それを見ると私はなんだか急に微笑がしたくなった。
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「相変らずやかましい男だ。せっかく好い心持に寝ようとしたところを」と
欠伸交
(
あくびまじ
)
りに
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をする。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「承諾書に書いてあった
筈
(
はず
)
です。」
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
して答えてやった。これが試験か? あきれるばかりだ。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
無気力でしみったれた笑い声や
空咳
(
からせき
)
、「年ごろ」の会話をぎこちなくこねまわしている暗い物置のような詰所で、同じようなくすんだ
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をならべて黙りこくる気分には
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
若者は
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
で答えた。藤吉は化石したように突っ立ったきり——人々はその顔を見守る。
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
津の
国人
(
くにびと
)
は和泉の国人の顔をみるために
遣
(
や
)
って来るものとしか思えず、どちらも、珍しくもない
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をあわせるだけで、橘姫のしみるような顔の
柔
(
やさ
)
しさは絶えて見るべくもなかった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
しかし、ほんの一分か二分も経たない
中
(
うち
)
に、さっき彼の
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
に
忽然
(
こつぜん
)
として現われた歓喜の色が、同じように
忽
(
たちま
)
ち跡形もなく消え失せて、再びその顔には気懸りらしい表情が浮かんだ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
俗人も山師も新聞記者も種々雑多なものが来ている。先生
閑
(
ひま
)
があると、煙草盆を下げて出て誰にでも会って話をする。気に喰わぬから門前払いを
喰
(
くらわ
)
すとか、
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をして話すとかいう事が更にない。
福沢先生の処世主義と我輩の処世主義
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
おはまは省作と並んで刈りたかったは山々であったけれど、思いやりのない満蔵に妨げられ、
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をして姉と満蔵との間へはいった。おとよさんは絶対に自分の夫と並ぶをきらって、省作と並ぶ。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
金原は気を悪くしたみたいな
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
のまま黙っていた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
とど助は、
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
で
顎十郎捕物帳:17 初春狸合戦
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
例の
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
した中川淵之助は、あだかも自分が、この手の指揮者でもあるように、
逸
(
はや
)
りかける他の六名を
戒
(
いまし
)
めて云った。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ルピック夫人は、
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をして、戸を開ける。
盲人
(
めくら
)
の腕をとって、あわただしく引きずりこむ。自分が寒いからだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
仏頂寺は
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をしながら、でも、松茸の土瓶蒸がまんざらでもないと見えて、しぶしぶ引返して行くのです。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
『ダントン小伝』を寄稿したのは俺だといって自分を紹介したら、円山さんは
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
に笑い一つ見せないで、そんなら上れといった。俺もそんなら上った。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「何というすばらしい仕掛けでしょう、ホラ、御覧なさい。主人の
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
が大きく写っていますよ」
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
自分は今でも雨に
叩
(
たた
)
かれたようなお重の
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
を覚えている。お重はまた石鹸を溶いた
金盥
(
かなだらい
)
の中に顔を突込んだとしか思われない自分の
異
(
い
)
な顔を、どうしても忘れ得ないそうである。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ちぇっ、こんなものを食わせやあがるのか?」と
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をしていると
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
親分藤吉一流の手だ、こう
真正面
(
まとも
)
にどやしつけられては、江戸っ子の手前勘次と彦兵衛、即座に
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
を忘れて、勇みに勇んで駈け出さざるを得ない。彦の合羽の裾を
銜
(
くわ
)
えて、甚右衛門が先に立った。
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何だか気に入らぬことでもあると思われて
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をしていう。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
昼ごろ、
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をした太陽が、霧の晴れ間から
覗
(
のぞ
)
きかけて、
蒼
(
あお
)
白い眼を薄目にあけたが、またすぐつぶってしまう。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それまでやや
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
していた市松が、急に顔を
赧
(
あか
)
らめて、はっと指先を下へつき、喜色を姿にかがやかしている。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
太鼓叩
(
たいこたた
)
きも、よくもまあ、あんな
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
がしていられたものだと、よそ目には
滑稽
(
こっけい
)
にさえ見えているのだけれど、彼等としては、そうして思い切り
頬
(
ほお
)
をふくらしてラッパを吹きながら
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
若い男が
破舟
(
やれぶね
)
の中へ
這入
(
はい
)
ってしきりに
竿
(
さお
)
を動かしている。おいこの池は湯か水かと聞くと、若い男は
類稀
(
たぐいまれ
)
なる
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をして湯だと答えた。あまり
厭
(
いや
)
な奴だから、それぎり口を
利
(
き
)
くのをやめにした。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それを意識する事が彼れをいやが上にも
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
にした。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
初めからこの若い夫婦者の境遇に、他意ない同情をよせてきた妙達だけに、こうなると、理解のほかなものがわいて、親切者の
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
といったような顔にもなる。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこまで問答が進むと、
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
で答えていた刑事の顔に、ただならぬ不安の色が現われた。博士がなぜこんなことを、根掘り葉掘り訊ねるのか、その意味がおぼろげに分って来たのだ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
婆は娘の
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
に気をつかいながら、お
酌
(
しゃく
)
して
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“仏頂面”の意味
《名詞》
愛想のない顔つき・表情。ふくれつら。
(出典:Wiktionary)
仏
常用漢字
小5
部首:⼈
4画
頂
常用漢字
小6
部首:⾴
11画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“仏頂”で始まる語句
仏頂
仏頂顔