不仕合ふしあはせ)” の例文
もとよりおのれの至らん罪ではありますけれど、そもそも親の附いてをらんかつたのが非常な不仕合ふしあはせで、そんな薄命な者もかうして在るのですから
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
分ておもらひ申さにやならぬと血眼ちまなこになりて申にぞ安五郎は當惑たうわくなし我等とても段々の不仕合ふしあはせ折角せつかく連退つれのいたる白妙には死別しにわかれ今は浮世うきよのぞみもなければ信州しんしう由縁ゆかりの者を頼み出家しゆつけ遁世とんせい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして、その上に、一度はある種の幼稚な優しい心を持つてゐたのです。私もあなた位の年頃にはまつたく多感な男で、未熟ものや、撫育されないものや、不仕合ふしあはせなものには心を惹かれました。
のみめづらしいとはおもひませぬけれど出際でぎは召物めしものそろへかたがわるいとて如何いかほどびても聞入きゝいれがなく、其品それをばいでたゝきつけて、御自身ごじゝん洋服ようふくにめしかへて、あゝ私位わしぐらゐ不仕合ふしあはせ人間にんげんはあるまい
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そんな徒爾いたづらな色恋は、為た者の不仕合ふしあはせ、棄てた者も、棄てられた者も、互にい事は無いのです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大いにしかり四郎右衞門來たらば留守るすと云て歸せと申に若い者お宿やどに居らるゝ旨申せしかば今更然樣には申されずと云故三郎兵衞不承々々ふしよう/″\に面會なし何用有て來られしやと申ければ四郎右衞門段々だん/\との不仕合ふしあはせ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
假初かりそめならぬ三えんおなじ乳房ちぶさりしなり山川さんせんとほへだたりし故郷こきやうりしさへひがしかたあしけそけし御恩ごおん斯々此々かく/\しか/″\はゝにてはおくりもあえぬに和女そなたわすれてなるまいぞとものがたりかされをさごゝろ最初そも/\よりむねきざみしおしゆうことましてやつゞ不仕合ふしあはせかたもなき浮草うきくさ孤子みなしご流浪るらうちからたのむは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何とつたら可いのだらう——私があんなに不仕合ふしあはせな身分にしてしまつたとさう思つて、さぞ恨んでゐるだらうと、気の毒のやうな、可恐おそろしいやうな、さうして、何と無く私は悲くてね。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
扨も幸手宿の三五郎は藤澤宿の大津屋方へ度々たび/\金の無心に來りし故に此節このせつは段右衞門も厭倦果あぐみはてて居たりしが又或時三五郎來り我等われら此節このせつ不仕合ふしあはせ打續うちつゞことほかこまるにより金子三十兩かしくれよと頼みけるに段右衞門も當惑たうわくの體にて我此家へ入夫に參りてやうやく一年ばかりなれば勿々なか/\然樣さやうに金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)