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一色
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ひといろ
ふりがな文庫
“
一色
(
ひといろ
)” の例文
それは「無」——実際は、無といふにはあまりにも
一色
(
ひといろ
)
の「心」に満ちた、蕭条とした路であつた。それは事実、路といふ感じがした。
黒谷村
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
したがって余の意識の内容はただ
一色
(
ひといろ
)
の
悶
(
もだえ
)
に
塗抹
(
とまつ
)
されて、
臍上方
(
さいじょうほう
)
三寸
(
さんずん
)
の
辺
(
あたり
)
を日夜にうねうね行きつ戻りつするのみであった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでも身綺麗にした若い人達の間を揉まれ揉まれしてゆるゆる歩いて居る時にはいかにも軽い
一色
(
ひといろ
)
の気持になって居た。
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
闇は見る見る追いのけられて、不気味な
紅
(
くれない
)
の
一色
(
ひといろ
)
に染め替えられて行った。渦巻く
焔
(
ほのお
)
は、数知れぬ巨獣の赤い舌であった。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
然し今はただ
一色
(
ひといろ
)
に
穢
(
よご
)
れはてた、肩揚のある綿入を着て、グル/\卷にした髮には、よく
七歳
(
なゝつ
)
八歳
(
やつつ
)
の女の子の用ゐる赤い塗櫛をチョイと揷して、
二十
(
はたち
)
の上を一つ二つ
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
それはホンの三
尺
(
じゃく
)
四
方
(
ほう
)
位
(
くらい
)
の
小
(
ちい
)
さい
社
(
やしろ
)
なのですが、
見渡
(
みわた
)
す
限
(
かぎ
)
りただ
緑
(
みどり
)
の
一色
(
ひといろ
)
しかない
中
(
なか
)
に、そのお
宮丈
(
みやだけ
)
がくッきりと
朱
(
あか
)
く
冴
(
さ
)
えているので
大
(
たい
)
へんに
目立
(
めだ
)
つのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
その内広がつて来る闇が、とうとう煖炉を、包んでしまつた。己の
周囲
(
まはり
)
は只
一色
(
ひといろ
)
の闇である。只三個所だけ、
微
(
かす
)
かに、ちらちら光つてゐる所がある。それは氷つた窓である。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
風が強くなつて来ると、その音がゴオーと
一色
(
ひといろ
)
に集つて、滝でも落ちて来るやうに聞えます。
天童
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
果ては山も空もただ
一色
(
ひといろ
)
に暮れて、三階に立つ婦人の顔のみぞ夕やみに白かりける。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
東京理科大学の標本室には、加賀の
白山
(
はくさん
)
で取ったのと、信州の
駒
(
こま
)
ヶ嶽
(
たけ
)
と
御嶽
(
おんたけ
)
と、もう
一色
(
ひといろ
)
、北海道の札幌で
見出
(
みだ
)
したのと、四通り黒百合があるそうだが、私はまだ見たことはなかった。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
青も赤も黄色も眼中にない、かれの目にはもう
一色
(
ひといろ
)
になっているのだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雪の原
霧華
(
きばな
)
咲き満つまさしくも白くさやけきこれや
一色
(
ひといろ
)
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
野はいま
一色
(
ひといろ
)
に物悲しくも
蒼褪
(
あをざ
)
めし
彼方
(
かなた
)
ぞ。
詩集夏花
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
乾ける旅に
一色
(
ひといろ
)
の物憂き姿、——
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
「ただ
一色
(
ひといろ
)
に染めますので」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
みな
一色
(
ひといろ
)
に薄白し。
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
世は
一色
(
ひといろ
)
の雪の夕暮
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
けれども
時節柄
(
じせつがら
)
に
頓着
(
とんじゃく
)
なく、当人の
好尚
(
このみ
)
を示したこの
一色
(
ひといろ
)
が、敬太郎には何よりも
際立
(
きわだ
)
って見えた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ妙に
嫋嫋
(
じょうじょう
)
として和やかな、まるで
一色
(
ひといろ
)
の闇のやうに潤んだものが彼をトップリ包んでゐた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
海も山も
一色
(
ひといろ
)
に打ち
煙
(
けぶ
)
り、たださえ
永
(
なが
)
き日の果てもなきまで永き
心地
(
ここち
)
せしが、日暮れ方より大降りになって、風さえ強く吹きいで、戸障子の鳴る
響
(
おと
)
すさまじく、怒りたける
相模灘
(
さがみなだ
)
の
濤声
(
とうせい
)
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
然し今はただ
一色
(
ひといろ
)
に
穢
(
よご
)
れはてた、肩揚のある綿入を着て、グル/\巻にした髪には、よく
七歳
(
ななつ
)
八歳
(
やつ
)
の女の児の用ゐる赤い塗櫛をチヨイと揷して、
二十
(
はたち
)
の上を一つ二つ、頸筋は垢で真黒だが
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ぐるぐる廻りに
畝
(
うね
)
って流れる、小川の両方に
生被
(
おいかぶ
)
さった、雑樹のぞうぞう揺れるのが、
累
(
かさな
)
り累り、所々
煽
(
あお
)
って、高い所を泥水が走りかかって、田も
畑
(
はた
)
も山も
一色
(
ひといろ
)
の、もう
四辺
(
あたり
)
が
朦朧
(
もうろう
)
として来た
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
誰が吹くのか、その笛の
音
(
ね
)
は、ただ
一色
(
ひといろ
)
に響いている。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
この門は色としては、古い心持を起す以外に、特別な
采
(
あや
)
をいっこう具えていなかった。木も瓦も土もほぼ
一色
(
ひといろ
)
に映る中に、
風鈴
(
ふうりん
)
だけが器用に緑を吹いていただけである。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一色
(
ひといろ
)
とうしろに蒼き夏の潮角の御堂はいつくしくして
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
糠雨
(
ぬかあめ
)
とまでも行かない細かいものがなお降りやまないので、海は一面に
暈
(
ぼか
)
されて、
平生
(
いつも
)
なら手に取るように見える向う側の絶壁の樹も岩も、ほとんど
一色
(
ひといろ
)
に
眺
(
なが
)
められた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
よく響く冬は暁ふる雨のただに
一色
(
ひといろ
)
の音ぞ立ちたる
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
今まで
後姿
(
うしろすがた
)
を
眺
(
なが
)
めて物陰にいた時は、彼女を包む
一色
(
ひといろ
)
の目立たないコートと、その背の高さと、大きな
廂髪
(
ひさしがみ
)
とを材料に、想像の国でむしろ自由過ぎる結論を
弄
(
もて
)
あそんだのだが
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれども一匹の怪物に出逢う前に、日は全く暮れてしまった。目に余る赤黒い草の影はしだいに
一色
(
ひといろ
)
の
夜
(
よ
)
に変化した。ただ北の方の空に、夕日の
名残
(
なごり
)
のような明るい所が残ったのである。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
眼が
覚
(
さ
)
めたら雨はいつの間にか
歇
(
や
)
んで、
奇麗
(
きれい
)
な空が磨き上げたように
一色
(
ひといろ
)
に広く見える中に、明かな月が出ていた。余は
硝子越
(
ガラスごし
)
にこの大きな色を
覗
(
のぞ
)
いて、思わず是公のために、舞踏会の成功を祝した。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“一色”の意味
《名詞》
一つの色。単色。
場の雰囲気などがほとんど同じであること。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
色
常用漢字
小2
部首:⾊
6画
“一色”で始まる語句
一色右馬介
一色村
一色別納
一色刑部
一色宮内
一色道庵
一色清五郎