一番ひとつ)” の例文
「かねて承知なんじゃあないか、君、ここは一番ひとつ粋を通して、ずっと大目に見てくれないじゃあ困りますね。」となさけなそうにいった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今年卒業したらすぐに洋行でもしたいと思ふなら、又さう云ふ事に私も一番ひとつ奮発しやうではないか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わしも今日が書入日かきいれびでござりまする。この御寺に、月に二斎をたのしみにいたしております。どうぞ一番ひとつ御上人様へ御取次下されまし。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さあ、君を慰める為に一番ひとつ間の健康を祝さう」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
が、ここだ、と一番ひとつ三盃さんばいよいの元気で、拝借の、その、女の浴衣の、袖を二三度、両方へ引張り引張り、ぐっと膝を突向けて
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一番ひとつくはしくお話し下さらんか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「今度八丁堀のわっしの内へ遊びに来ておくんなせえ。一番ひとつ私がね、嚊々左衛門かかあざえもんに酒を強請ねだる呼吸というのをお目にかけまさ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気軽なら一番ひとつおどかしても見よう処、姉夫人は少し腰をかがめて、縁から差覗いた、眉のやわらかな笑顔を、綺麗に、小さく畳んだ手巾ハンケチで半ば隠しながら
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「酔興さ。私も酔興だから、おまえさんも酔興に一番ひとつ私の志を受けてみる気はなしかい。ええ、金さん、どうだね」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
田鼠化為鶉、親仁、すなわち意気となる。はッはッはッ。いや。当家こちらのお母堂様ふくろさまも御存じじゃった、親仁こういう事が大好きじゃ、ひら一番ひとつらせてくれ。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いずれおわびをする、あらためてお礼に来ましょうから、相済まんがどうぞ一番ひとつ腕車くるまの世話をしておくんなさい。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
君、その大事の、いや、御秘蔵のものではあろうが、どうぞ一番ひとつ、その感謝状を拝ましてもらいたいな。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
君、その大事の、いや、御秘蔵のものではあらうが、どうぞ一番ひとつ、その感謝状を拝ましてもらいたいな。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……おちなさりまし、晝間ひるま辨當箱べんたうばこいてります、あらつて一番ひとつれへ汲出くみだして差上さしあげませう。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ええ難有ありがたい、夢になるな夢になるな。「もうこれッ切り御苦労は懸けないが、もう一番ひとつ頼まれてくれ。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あんまり生意気だから一番ひとつおどしてやろうと思って、私があすこに隠れていたがね、男がやると差合さしあいだ、ちょうど可いからお前に頼む、ね、幽霊にならないか。愉快おもしろいよ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
というのは、今しがた誰も居ないのに声がかかって、人形が物を言うていこたあ無い筈だと思ったが、下枝のわざであったかも知れぬわい。待て、一番ひとつ家内うちしらべて見よう。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こっちへゆびさしをしたように見えたけれども、朧気おぼろげでよくは分らないから、一番ひとつ、そのあかりさいわい
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
価値ねだんひどうげす。植木屋だと、じゃあ鉢は要りませんか、と云って手を打つんでげすがな。画だけ引剥ひっぺがして差上げる訳にも参りませんで。どうぞ一番ひとつ御奮発を願いてえんで。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せんの向島の大連の時で、その経験がありますから、今夜は一番ひとつあかり晃々こうこうとさして、どうせあらわれるものなら真昼間まっぴるまおいでなさい、明白でい、と皆さんとも申合せていましたっけ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いかがでございましょう、頂く訳には参りませんか、どうです、蝶さん、ここに是非一番ひとつ君のお酌をという、厄介な、心懸こころがけの悪いのが出来上ったんですが、悪うございますか。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一番ひとつ何でもそういったものを、どしどし私たちが頂戴をすることにしようじゃないか。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さてお夏さん、思切っておくんなさい、二三日前から薄々様子は知っていなさろうがね、町内じゃあ大抵気にするッたらないんだから、一番ひとつね、思切って私等わたしどもとりをおくんなさい。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
剽軽ひょうきんな方で、一番ひとつ三由屋をお担ぎなさるのではないかと、申すものもござりまするが、この寒いに、戸外おもてからお入りなさったきり、洒落しゃれにかくれんぼを遊ばす陽気ではござりません。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところで聞かっしゃい、差配おおやさまのうのには、作平、一番ひとつ念入ねんいりってくれ、その代り儲かるぜ、十二分のお手当だと、膨らんだ懐中ふところから、朱総しゅぶさつき、にしきの袋入というのを一面の。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つい串戯じょうだんに、一番ひとつ驚かしてくれようと、おう、姉や、とそれ、雲助声を出しやしたが、棲折笠つまおりがさに竹の杖、小袖の上へ浴衣を着て、ふんどしにもつれながら、花道を出るのと違って、かたなし
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「だから待ちねえ、見せるてこッた、うんと一番ひとつ喜ばせるものがあるんだぜ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぜん申しました沢井様へ出入の大八百屋が、あるじ自分でまかり出ましてさ、お金子かねの行方を、一番ひとつ、是非、だまされたと思って仁右衛門にみておもらいなさいまし、とたって、勧めたのでございますよ。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにつけにつけましても時ならぬこの辺へ、旦那様のお立寄遊ばしたのを、私はお引合せと思いますが、飛んだ因縁だとおあきらめ下さいまして、どうぞ一番ひとつ一言ひとことでも何とか力になりますよう
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふむまた売卜乾坤堂うらないけんこうどう、天門堂とすれば可い、一番ひとつみてもらいたいくらいだ、むこうは仕立屋、何、仕立物いたしますか、これは耳寄、仕立屋に(ぬい)が居ようも知れねえ。ためしだ、ちょいと聞いてみよう。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃあ一番ひとつお手形を頂きたいね。」と円輔は詰寄った。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うぞ一番ひとつ構はず云つて聞かしてくれたまへな。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「も一番ひとつやれ!」
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わし一番ひとつ。」
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)