飯屋めしや)” の例文
彼がその茶屋でありまた一ぜん飯屋めしやでもある家にはいって行くと、二人の男は後ろ向きに土間の炉縁に腰をかけ焚火にあたっていた。
路端みちばた飯屋めしやは昼前の大繁昌おほはんじやうで、ビスケットを袋に詰める者もあれば、土産みやげにウォットカを買ふ者もあり、又は其場で飲んでしまふ者もある。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
あるいは高等工業の先を曲って柳橋の方へ抜けて見ても好いなどと、まるで時分どきに恰好かっこう飯屋めしやでも探す気で歩いていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちょうど、甲府こうふ城下じょうかへはいってから、二日ふつか三日目みっかめひるである。宮内は、馬場はずれの飯屋めしやなわすだれを分けてはいった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「分かってようございました。エ、あのひとですか、たしか淡路あわじの人だと云います。飯屋めしやをして、大分儲けると云うことです」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一時に昼食をとって以来、何も口へ入れなかった泉原はしきりに空腹を覚えてきたので、本通りの裏手へ入って、入りいゝ飯屋めしやをさがそうと思った。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
そして、暫く遠慮して居った銭湯へも行けば、床屋へも行く、飯屋めしやではいつもの味噌汁と香の物の代りに、さしみで一合かなんかを奮発するといった鹽梅あんばいであった。
二銭銅貨 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此處こゝまでこらへたのは、飯屋めしや飼猫かひねこだ、とおもつたからで。う、ぢいさまのとゞかないのを見澄みすまして
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
狹い柳町の通は、造兵歸ざうへいがへりの職工で、にえくり返るやうである。軒燈けんとう徐々そろ/\雨の中から光出して、暖かい煙の這出はひだして來る飯屋めしや繩暖簾なはのれんの前には、腕車くるまが幾臺となく置いてある。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
東より順に大江橋おおえばし渡辺橋わたなべばし田簑橋たみのばし、そして船玉江橋まで来ると、橋の感じがにわかに見すぼらしい。橋のたもとに、ずり落ちたような感じに薄汚うすぎたない大衆喫茶店きっさてん飯屋めしやがある。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
相変らず飯屋めしやの払いに困っている。
落合町山川記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
おくにはきゃくがきているのだ。昼間ひるま飯屋めしやでぶつかった地蔵行者じぞうぎょうじゃ菊村宮内きくむらくないを引っぱってきて、ひさしぶりにけるのをわすれて話しているあんばい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したに、火箸ひばしさきつゝいた、きずがポツツリえる、トたしかおぼえてわすれぬ、瓜井戸うりゐど宿しゆくはづれで、飯屋めしや縁側えんがはしたから畜生ちくしやうを、煙管きせる雁首がんくびでくらはしたのが、ちやうおなひだりした
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
阿爺おとッつぁんおらこのしまやァだ」と、毎々阿娘おむすの苦情が出る。其等の車が陸続として帰って来る。東京場末の飯屋めしやに寄る者もあるが、多くは車を街道に片寄せて置いて、木蔭こかげで麦やひえの弁当をつかう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
城外のいぶせき飯屋めしやでひるめしの白麺うどんを二人してすすっていると、隣の床几しょうぎでも一人の老人がお代りを急いでいた。折ふし客が混んでいたのでなかなかお代りのめんが来ない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地蔵行者じぞうぎょうじゃ卜斎ぼくさいは、かたをならべて、飯屋めしやのきをでていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)