酒場さかば)” の例文
酒場さかばへ、ずかずかとはいってくるなり、ぶるるんと、からだをゆさぶってゆきをはらいおとし、黒馬旅館の女あるじに向かって、そう言った。
それゆえに、結局けっきょくへとへとになって、揚句あげく酒場さかば泥酔でいすいし、わずかにうつらしたのです。かれは、芸術げいじゅつ商品しょうひん堕落だらくさしたやからをもいきどおりました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
おお眼の前を走る多數の襤褸の市の民、貧者ひんじや酒場さかばの町、の影暗祕密の路次
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
さて、その宿屋の下のへやの、大きな酒場さかばには、おおぜい人があつまっていました。人形芝居をもって旅まわりしている男が来て、ちょうどそこへ小さい舞台をしかけたところでした。
なにも知らない警部モロは、上陸すると、すぐその足で、酒場さかば雑草園へいった。それは、まず忠実にいいつけられた用事をはたし、ほかからうたがいの眼をむけられないためであった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まるで酒場さかばひどれのやうな兵士へいし集團しふだんしめつた路上ろじやうおもくつりながら、革具かはぐをぎゆつぎゆつきしらせながら劍鞘けんざやたがひにかちあはせながら、折折をりをり寢言ねごとのやうなうなごゑてながら
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
薄れたしろつぽい日の酒場さかばゆか吐散はきちらしたたんのやうで
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ひとみ青きフランス酒場さかばたは湯浴ゆあみのさまを思ひやり
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
酒場さかばのおやじが気のない調子ちょうしで言ったとたん、ばたばたと足音が近づき、ドアをさっとひらいて、あの浮浪者ふろうしゃのトーマスがとびこんできた。
また、そのみなと景色けしきや、まちさまや……小路こうじかどには、たばこがあって、果物屋くだものやがあって、あかはたっている酒場さかばのあることも、はなしました。
お父さんの見た人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ホテル・クナンの、しずかな酒場さかば片隅かたすみに、ロッセ氏は、私を連れていった。
人道にむかひて開く酒場さかばこそは
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
酒場さかばの薄い硝子から
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
博士はくしの家は町をみおろす、おかのうえに建っている。そこからは、丘のふもとの『ぎんねこ』酒場さかばや、バスの停留所ていりゅうじょが、ひと目でみることができた。
うつくしいおんなたちは、かなしい、やるせないうたをうたいながら、酒場さかばまえをあるいていました。若者わかものたちは、夕焼ゆうやけのようにあかい、サフランしゅさかずきを、くちびるにあててあじわっていました。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
酒場さかばまえを、うつくしいおんながやさしい、いいこえうたをうたってとおりました。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
汽船きせんが、みなとくと、人々ひとびとは、りく見物けんぶつするために、あがったのです。父親ちちおやも、ぶらぶらとあるいてみました。どこの船着ふなつも、そうであるように、まちはにぎやかでした。酒場さかばもあれば、宿屋やどやもある。
お父さんの見た人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)