言訳いひわけ)” の例文
旧字:言譯
やが父親てゝおやむかひにござつた、因果いんぐわあきらめて、べつ不足ふそくはいはなんだが、何分なにぶん小児こどもむすめはなれようといはぬので、医者いしやさひはひ言訳いひわけかた/″\親兄おやあにこゝろもなだめるため
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いまみると、この言訳いひわけ、なぜこんなことをいはなければならなかつたのか、といふ気がします。その気兼ねが、ぐるりとまはつて、ばか/\しくさへ感じられます。
一葉の日記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
美奈子は其の金子かねをも大部分生活くらしの方に遣い込んで妹が上京して来た時余り体裁きまりが悪いので、言訳いひわけばかりに古道具屋を探して廉物やすものを買つて来たのが此の箪笥であつた。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
平岡の言葉は言訳いひわけと云はんより寧ろ挑せんの調子を帯びてゐる様にこえた。襯衣シヤツ股引もゝひきけずにすぐ胡坐あぐらをかいた。えりたゞしくあはせないので、胸毛むなげが少しゝゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
コレお半、ここは三条愛宕道あたごみち、露の命の置所おきどころ、草葉の上と思へども、義理にしがらむこの世から、やいばでも死なれぬ故、淵川へ身を沈めるがせめても言訳いひわけ、あとに残せしわが書置、さぞ今頃は女房が……
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そんな言訳いひわけはどうでもいんですよ。貴方あなたから見れば、みんな馬鹿にされる資格があるんだから」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それつゝかけに夜昼よるひるかけて此処こゝまでたなら、まだ/\仕事しごと手前てまへやまにもみづにも言訳いひわけがあるのに……彼方あつち二晩ふたばん此方こつち三晩みばんとまとまりの道草みちくさで、——はなにはくれなゐつきにはしろく、処々ところ/″\温泉をんせん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
帰りみちに与次郎が三四郎に向つて、突然借金の言訳いひわけをしした。月の冴えた比較的さむい晩である。三四郎は殆んどかねの事などは考へてゐなかつた。言訳を聞くのでさへ本気ではない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ながれと一しよわたしそばにおいでなさいといふてくれるし、まだ/\そればかりでは自身じぶんしたやうぢやけれども、こゝに我身わがみ我身わがみ言訳いひわけ出来できるといふのは、しきり婦人をんな不便ふびんでならぬ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたし本当ほんとうまない事をしたと思つて、後悔してゐるのよ。けれども拝借するときは、決して貴方あなただましてうそつもりぢやなかつたんだから、堪忍かんにんして頂戴」と三千代は甚だくるしさうに言訳いひわけをした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)