さば)” の例文
「果てしない押問答、むだな争いというものだ。このうえは、西山荘へ参って、老公に是か非かのおさばきを仰ごう。さあ、歩け」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村長は税を割り当て、各人に正当な負担を負わせ、無報酬で争いをさばき、無料で遺産を分配し、無費用で判決を下しています。
「ましてお前の父さんは、お主の家を思つてしたことだし、相手は兇状持だ。精々遠島か所拂ひ、極く/\輕いおさばきで濟むかも知れない」
「苅田壮平のためになにかしよう」と功兵衛は呟いた、「罰するだけがさばきではないからな、明日は靱町へいって相談しよう」
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もし現代の科学を一通り心得た大岡越前守おおおかえちぜんのかみがこの事件をさばくとしたら、だまされたほうも譴責けんせきぐらいは受けそうな気がする。
路傍の草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
されどドアジォ、リルラ、ガンド、及びブルーゼスの力足りなばむくい速かにこれに臨まむ、我また萬物をさばき給ふ者にこの報を乞ひ求む 四六—四八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
神のさばきは、着々と進んで、私は大きな不幸に出逢であひ、死の蔭の谷間を通ることを、餘儀なくさせられた。
いいやな、これ程申してもお用立出来ぬと仰せあるならば、致し方がおじゃりませぬゆえな、今から江戸へ急飛脚飛ばして、寺社奉行様のおさばきを願いましょうわい。
すると、罪人たちは地獄の底から主に感謝して、『主よ、かくさばきたるなんじは正し』と叫ぶのだ。
二つ折れに屈んで地面をしらべると、井戸の縁に片足かけて刀に滴る血潮を振りさばいたものとみえて、どす黒い点が土の上を一列に走ってもよりの油障子の腰板へ跳ねて
こう云ったとて私は、世の義人に偽善者をさばく手心をゆるめて貰いたいと歎願するのではない。偽善者は何といっても義人からきびしく裁かれるふしだらさを持っている。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
彼女かのぢよはそのとき自分じぶん境遇きやうぐうをふりかへつて、再婚さいこんこゝろうごくのは無理むりもないことだとみづかさばいた。それを非難ひなんするひとがあつたならば、彼女かのぢよ反對はんたいにそのひとめたかもしれない。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
おれさばくがいい。俺も貴様を裁いてやる。百年たってから顔を合わせようじゃないか!」
去年三月の片手落ちなおさばきから見ても、また今度の大学様の手重い御処分から見ても、吉良家に乱入したものをそのまま助けておかれるはずはない。必定ひつじょう一党の死はきわまった!
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
禁断きんだんそのに忍び入ったる罪は、今、さばかれようとしているのだ。僕はもう観念した。たとえ針の山であろうと無間地獄むげんじごくであろうと、追いやられるところへ素直すなおに行くしかないのだ。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかしわしはそれをさばく権利を持っていないのだ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「いゝえ、言論じゃありません。兄弟のさばきです」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
映画の絵看板は「さばかるるジャンヌ」であった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「こんな人間たちにさばかれるなんて」
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
「それが公平なさばきだ」
座談の時とはちがって、慈円僧正は、やや恐いようなおごそかな顔をもって、七条の袈裟けさを、きちっとさばいて正面に坐っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それくらゐのことなら、お前でもさばけるだらう。——綺麗で我儘で身勝手な妾を殺すのは誰か——くらゐのことは、直ぐわかるぢやないか」
けれども要屋は御定法をたてにとって、どうしても正式なさばきを願う、と云ってきかないのだそうであった。
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
報罪は全く自発的のもので罪ある者自ら自分をさばき自分にそれを課するのである(報罪の coulpe と罪ある者の coupable は同じ語原である)
神は、我々人間のやうな見方ではなく、もつとずつと明らかに御覽になり、人間のやうなさばき方ではなく、もつとずつと賢明なさばき方をなさるのだ。私は間違つたことをした。
さうしてそれよりもなほ彼女かのぢよにとつておそろしいことは、一人前にんまへになつた子供こどもが、どんなふう母親はゝおやのその祕密ひみつ解釋かいしやくし、そしてどんなさばきをそれにあたへるだらうかといふことであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
最高の神のさばきによって特別にのろわれたる破門者となって、異教徒と全然同じように、神聖な教会から追放されるに違いありません、ですからわたしが口をきる一瞬間というよりも
「おれが一つさばいてやろうか」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「わたくしに落度はありません。また、わたくしは殿さまの側小姓で、殿さまが、御家臣から迫られて、おさばきに困るようなことはつかまつりません」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
慣れない仕事で、自分ではどうにもさばきがつかず、さうかと言つて、評判のよくない三輪の萬七に全部を任せるのも甚だ進まなかつたのでせう。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「矢堂は放埓ほうらつ者かもしれませんが藩士です。それを白洲へ呼び出して、商人などと並べてさばきにかけるということは、家中かちゅうぜんたいの面目にかかわると思うんですがね」
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
クンベルランドのハンノーヴル驃騎兵ひょうきへいは、後にさばかれて罷免ひめんされることになった連隊長ハッケを頭として、全連隊が混戦の前に手綱をめぐらして、ソアーニュの森の中に逃げ込み
私はこの人を守り、抱き、慰めないといふことがあらうか。私の胸の中には、愛がないだらうか。私の決心には眞實がないだらうか。神さまのさばきの座ではそれがつぐなつてくれるのだ。
夫婦喧嘩は犬も喰わないというが、南蛮寺のばてれんが通りかかればその夫婦喧嘩にまで立ち入って、ねんごろにさばいてやる。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「薄情なやうだが、とつさんのためだ。子分衆を手一杯に働かせて、お品さん一人の手にこいつをさばいて見る氣はないか」
よってまず新たなる犯罪について処罰し、更に再犯については後にさばくべきである。——この起訴に対して、また証人らの一様なる供述に対して、被告は何よりもまず驚いたようだった。
「ほんに、どうしたらよい世なのでしょう。世の中を恨むべきではない、人間というこの魔性の者をみずからさばけと、あなたはさっき仰っしゃったけれど」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「物の道理を言ひ聞かせるなり、繩を打つなり、平次親分ならワケもなくさばいて下さるだらう——と」
彼は社会をさばいてそれを罪ありとした。
信長は、彼にも理由のあることかも知れぬと、北陸陣の諸将が帰るのを待ってからさばくつもりでいたが
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下手人ながら江戸追放といふ輕いさばきを受け、平次が預つてゐるお鶴をつれて、川崎在のお鶴の母を訪ね、そのまゝ土着して安らかに暮してゐるといふことでした。
尚更重要な位置にゐたり、日常人に接して要務をさばいてゐる者などは、殊に、自分の職業の上では、他人に壓されまい、負けまい、蔑まれまい、敗れまいと心がける。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
下手人ながら江戸追放という軽いさばきを受け、平次が預かっているお鶴をつれて、川崎在のお鶴の母を訪ね、そのまま土着して安らかに暮しているということでした。
このひでりでは、今から凶年の策をも立てておかねばなるまいと、近ごろは、まま遠くの領下まで、ようお歩きなされまする。それに、水喧嘩のおさばきやら、枯れ田の百姓衆を
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日頃錢形平次のたくましい智慧に推服し、むづかしい事件があると、何んの痩せ我慢もなく、後輩の平次を引つ張り出して、その明智のさばきに享樂すると言つた肌合ひの男です。
正成の声が「——入れ」と内でいたわっている。その側には、正季もいた。卯木は、さばきの前にすえられたように、ちょっと、良人の顔をうながして、共に片隅へ手をつかえた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次はこの美しい顏とみにくい心を持つた女の處置を、天のさばきにゆだねる氣で居るのでせう。
これは、一女性にょしょう、一地下人ちげびとの問題ではない。院の御徳おんとくくろうし、われら武者所の名にもかかわる。もし、刑部省の手にかかり、朝廷のおんさばきをうけては、われらなんの面目やある。
何んの、親分でもさばいてくれなきや、私は夜もおち/\眠れませんよ。昨日も窓を
藤助は五十前後のしつかり者らしい感じのする男、その代り支配人としては此上もない働き者でせう。秤座はかりざの仕事をして三十何年、今では主人彦太郎に代つて、大抵のことをさばいて居ります。