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蚋
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ぶよ
ふりがな文庫
“
蚋
(
ぶよ
)” の例文
里近いだけに
蚋
(
ぶよ
)
の多いのには困ったが、あたりの草を薙ぎ倒して風上から火を放ったので、少し落ち着いて食事が済せた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
われは暑に苦み、この變化なき生活に
倦
(
う
)
みて、殆ど死せる如くなりき。風少しく動くと覺ゆるときは、蠅
蚋
(
ぶよ
)
なんど群がり來りて人の肌を刺せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その夕方も、又雉子の祟りか、野村君だけ
蚋
(
ぶよ
)
にやられて、足を腫らして、すこし參つたやうな顏をしてゐたよ。
夏の手紙:立原道造に
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
と
唱
(
とな
)
えつつ、自由にどこの家にも入って、
自在鉤
(
じざいかぎ
)
のあたりまでも
燻
(
いぶ
)
しまわったからで、ヨガとは日中のカすなわち
蚋
(
ぶよ
)
に対して、夜の蚊をそういうのである。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
だから
蚋
(
ぶよ
)
にくわれながら懐中電燈をもって叢のなかを明るく照らす、懐中電燈の明りは叢のなかを青写真のように映し出し、茎と葉との宮殿がならんで見える。
螽蟖の記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
大豆
(
だいず
)
にはくちかきむしの成虫がうざうざするほど集まった。麦類には黒穂の、
馬鈴薯
(
ばれいしょ
)
にはべと病の徴候が見えた。
虻
(
あぶ
)
と
蚋
(
ぶよ
)
とは自然の
斥候
(
せっこう
)
のようにもやもやと飛び廻った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
父
(
とう
)
さんが
幼少
(
ちひさ
)
な
時分
(
じぶん
)
に
晝寢
(
ひるね
)
をして
居
(
ゐ
)
ますと、どうかするとこの
蚋
(
ぶよ
)
に
食
(
く
)
はれることが
有
(
あ
)
りました。その
度
(
たび
)
に、お
前達
(
まへたち
)
の
祖父
(
おぢい
)
さんが
大
(
おほ
)
きな
掌
(
てのひら
)
で、
蚋
(
ぶよ
)
を
打
(
う
)
ち
懲
(
こら
)
して
呉
(
く
)
れました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「
蚋
(
ぶよ
)
が
螫
(
さ
)
す、蚋が螫すわ。どうじゃ、歩き出そうでないか。
堪
(
たま
)
らん、こりゃ、立っとッちゃあ
埒
(
らち
)
明かん、さあ
前
(
さき
)
へ
行
(
い
)
ね、貴公。美人は
真中
(
まんなか
)
よ、
私
(
わし
)
は
殿
(
しんがり
)
を打つじゃ、早うせい。」
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
禍害
(
わざはひ
)
なるかな、偽善なる学者、なんぢらは人の前に天国を閉して、自ら入らず、入らんとする人の入るをも許さぬなり。
盲目
(
めしひ
)
なる手引よ、汝らは
蚋
(
ぶよ
)
を
漉
(
こ
)
し出して
駱駝
(
らくだ
)
を呑むなり。
如是我聞
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
馭者たちは、無数の
遊糸
(
いとゆう
)
のような
蚋
(
ぶよ
)
があの
蛇神復讐女神
(
フュアリー
)
に代って自分たちの周りをぐるぐる𢌞っている中を、ゆったりと自分たちの鞭の革紐の先を繕っていた。
側仕
(
そばづかえ
)
は馬の脇を歩いて行った。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
赤く
薙
(
な
)
いだ阿房峠が低く走り、その上に乗鞍岳の頂上が全容をあらわした、左の肩の最高峰朝日岳には、雪が縦縞の白い
斑
(
ふ
)
を入れている、小さな
蚋
(
ぶよ
)
が眼の前を、粉雪のように目まぐるしく舞う
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
蚋
(
ぶよ
)
のむれ夕日にきほふしまらくは赤松の幹も暮れがたみあり
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
なかなか好い気持です。ただ、すこしぼんやりしていると、まだ生れたての小さな
蚋
(
ぶよ
)
が僕の足を
襲
(
おそ
)
ったり、毛虫が僕の
帽子
(
ぼうし
)
に落ちて来たりするので閉口です。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
木から落ちる
山蛭
(
やまびる
)
に、
往来
(
ゆきき
)
の人に取りつく
蚋
(
ぶよ
)
に、
勁
(
つよ
)
い風に鳴る
熊笹
(
くまざさ
)
に、旅するものの行き悩むのもあの
山間
(
やまあい
)
であるが、音に聞こえた高山路はそれ以上の険しさと知られている。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
コップの中には
蚋
(
ぶよ
)
に似た小さい虫が一匹浮いて、泡のうえでしきりにもがいていた。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
蚋
(
ぶよ
)
のむれ夕日にきほふしまらくは赤松の幹も暮れがたみあり
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
蚊
(
か
)
や
蚋
(
ぶよ
)
でどんなだろうねえ。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山蛭
(
やまびる
)
や
蚋
(
ぶよ
)
なぞの多い四里あまりのけわしい
嶺
(
みね
)
の向こうから通って来たのもその山道である。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その谷間の雑木林はやっと芽を出したばかりだが、今日なんぞ、そこで焚木を拾っていたら、ぶんと
蚋
(
ぶよ
)
らしいものがいきなり飛んできて、私の顔のまわりにいつまでもつきまとっていた。
卜居:津村信夫に
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
向日葵は
円蕋
(
えんずゐ
)
黒しまだ暑く子とかがみゐて
痒
(
かゆ
)
き
蚋
(
ぶよ
)
うつ
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「ええ、
蠅
(
はえ
)
だの、
蚋
(
ぶよ
)
だの……そういうものは
木曾路
(
きそじ
)
の名物です。
産馬地
(
うまどこ
)
の
故
(
せい
)
でしょうね」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
木から落ちる
山蛭
(
やまびる
)
、
往来
(
ゆきき
)
の人に取りつく
蚋
(
ぶよ
)
、
勁
(
つよ
)
い風に鳴る
熊笹
(
くまざさ
)
、そのおりおりの路傍に見つけるものを引き合いに出さないまでも、昼でも暗い森林の谷は四里あまりにわたっている。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
似
(
に
)
て、
違
(
ちが
)
ふもの——
蠅
(
はい
)
と
蚋
(
ぶよ
)
。
蠅
(
はい
)
はうるさがられ、
蚋
(
ぶよ
)
は
恐
(
こは
)
がられて
居
(
ゐ
)
ます。
蚋
(
ぶよ
)
は
人
(
ひと
)
をも
馬
(
うま
)
をも
刺
(
さ
)
します。あの
長
(
なが
)
くて
丈夫
(
ぢやうぶ
)
な
馬
(
うま
)
の
尻尾
(
しつぽ
)
の
房々
(
ふさ/\
)
とした
毛
(
け
)
は、
蚋
(
ぶよ
)
を
追
(
お
)
ひ拂
ふ
(
はら
)
のに
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
つのです。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
荒い
笹刈
(
ささが
)
りには
蚋
(
ぶよ
)
や
藪蚊
(
やぶか
)
を防ぐための
火繩
(
ひなわ
)
を要し、それも恵那山のすその谷間の方へ一里も二里もの山道を踏まねばならないほど骨の折れる土地柄であるが、多くのものはそれすらいとわなかった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
二○
蚋
(
ぶよ
)
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
“蚋(ブユ)”の解説
ブユ(蚋、蟆子、Black fly)は、ハエ目(双翅目)カ亜目ブユ科(Simuliidae)に属する昆虫の総称。ヒトなどの哺乳類や鳥類から吸血する衛生害虫である。関東ではブヨ、関西ではブトとも呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
蚋
漢検1級
部首:⾍
10画
“蚋”を含む語句
蚊蚋
毒蚋
蚋子