)” の例文
冬でもの笠をかぶって浜へ出て、えさを拾って、埠頭場はとばに立ったり幸神潟こうじんがたの岩から岩を伝ったりして、一人ぼっちでよく釣魚をしていた。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
枕元の刀をって斬るつもりの伊織は、もんどり打って、刀と共にまろび、さっと動いたすだれに、むささびの影が黒く止まっていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のツンツン生えてゐるその尖頭に黒いヤンマが留つてゐて、その羽に日影の当つてゐるのが、何とも言へず沼の静けさを私に思はせた。
ある日の印旛沼 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
また後に自分の「田の青やぎていさぎよき」の心像が膠着してそれが六句目の自句「しょろしょろ水にのそよぐらん」に頭をもたげている。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一陣の颶風ぐふうはその長さ六十尺の帆桁をもわらくずのごとくに砕き、烈風はその高さ四百尺のマストをものごとくに折り曲げ
それでも小砂利を敷いたつぼの広い中に、縞笹しまざさがきれいらしく、すいすいとが伸びて、その真青まっさおな蔭に、昼見る蛍の朱の映るのは紅羅がんびの花のつぼみです。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこには人の影はなく、ぴかぴかと黒光りのする板敷にで作ったスリッパのような上草履ぞうりが行儀よく並べてあった。
抱茗荷の説 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
蒸した豆をで囲んで、丸いわくを上から穿めて、二尺ばかりの高さになった時、クーリーはたちまちこの靴のままわくの中に這入はいって、ぐんぐん豆を踏み固める。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこには、がまだのだのが、灰白く、かさ/\にかたまり合って枯れていた。——風のない曇った空をうかべた暗い水がどんよりとそのかげに身じろがなかった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
なぜといって、薄ぼんやりではありましたが、その天井には、下の畳の目が、一本のの太さが二尺程に拡大されて、小さなごみまでがありありと映っていたからです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
運河の岸の、梢あざやかな長い並樹みち、水際には、高いの間に花が咲き、古ぼけた荷足り舟が、青い樽を積み、さまざまな旗をひらめかして、しずかにすべって行く。
屋根の葺材は特別な種類ので、高価ではあるが五十年以上ももつという。木材の棟木その他の部分は黒く塗ってあり、全体の構造が非常に手奇麗に、精巧に出来ている
そうしてあしとの茂るほりを見おろして、かすかな夕日の光にぬらされながら、かいつぶり鳴く水に寂しい白壁の影を落している、あの天主閣の高い屋根がわらがいつまでも
松江印象記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いぬそばやに似た草などの生えている水際みずぎわの線は、出入りや彎曲わんきょくが多く、対岸の林の樹影をうつす水は、たっぷりとあふれるほどの水量であるが、それは不透明に濁っていた。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
くろんぼのからだには、青い腰蓑こしみのがひとつ、つけられていた。油を塗りこくってあるらしく、すみずみまでつよく光っていた。おわりに、くろんぼはうたをひとくさり唄った。
逆行 (新字新仮名) / 太宰治(著)
琉球を細くいた、置き草と言われる仕切を一枚毎に挟まなければならない。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
この辺には珍らしい小湿原で、あたかも人の手を加えた畦とも紛う境界を作って、それぞれに水を湛え、その中にの類がまるで稲そっくりに生えている。田の畔には、毛氈苔なども点々。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
ふかふかした絹布の座蒲団ざぶとんが、入れ替えたばかりのの匂いのする青畳に敷かれてあった。浅井の金廻りのいいことが、ちょっとした手廻りの新しい道具のうえにも、気持よく現われていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
家の庭苑そのにも、立ち替り咲き替って、、草花が、何処まで盛り続けるかと思われる。だが其も一盛りで、坪はひそまり返ったような時が来る。池には葦が伸び、がまき、ぬきんでて来る。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
こう云うと敷いていたの円座を自分で払って押しやった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
敷つめてすゞし畳のの匂 野径
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
内の坪(中庭)へ面した広床の間に、を敷き、円座に坐って、酒を酌みあっている客と主人とは、さっきから、愉快そうに談笑していた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
路に沿った長い汚ないどぶには、あしの新芽や沢瀉おもだかがごたごたとえて、淡竹またけの雨をおびたやぶがその上におおいかぶさった。雨滴あまだれがばらばら落ちた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
舟の中央部には、藁の筵を敷いた四角な場所があり、ここで我々は数日間食事をしたり、睡眠したりしなくてはならなかった。我々の頭上には、厚いの筵が、屋根を形づくっていた。
藁床わらどこで編んだこの敷物は、湿気と塵埃を吸い、それを貯めておくのにもっとも都合よくできている、もちろん、裕福な生活をしている者は、畳替えをしたりよく掃除させたりすることで
一枚のむしろが敷いてあった。で編んだ新しい筵であった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、を敷いた床に人も見えず、ただ大きな炉の中に、ばちばちと松薪まつまきが燃え、その煙は、一つの窓からむうっと外へ吐き出されてくる。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町と村との境をかぎった川には、あし白楊やなぎがもう青々と芽を出していたが、家鴨あひるが五六羽ギャアギャア鳴いて、番傘とじゃがさとがその岸に並べて干されてあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼女の兄さんである増田氏は私に、この葺材は一種異様なで、屋根葺に用いる普通の藁よりも高価であると共に、余程長くもつと語った。かかる屋根は非常に重く、完全に水を通さぬ。
彼は、すだれを下ろし、草庵の中で眠りについた。灯を消しても、藺すだれの隙間から、露明りが、青白くしている。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、朗々と、のすだれの陰からは、伊織の読書の声がながれている。秋となっても、蝉の声はまださかんだったが、到底、その伊織の声にはかなわない。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深い洞窟の中は、三げんはばぐらいな板敷となっていて、そこに、ござや獣皮が敷いてあった。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縁の隅にあった笠を頬にしばりつけて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)