米原まいばら)” の例文
さっき米原まいばらを通り越したから、もう岐阜県のさかいに近づいているのに相違ない。硝子ガラス窓から外を見ると、どこも一面にまっ暗である。
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
米原まいばら北陸線ほくりくせん分岐道ぶんきだうとて、喜多きたにはひとり思出おもひでおほい。が、けるとかぜつめたい。所爲せゐか、何爲いつもそゞろさむえきである。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
十四日にあたかも露西亜から帰着した後藤男を敦賀つるがに迎え、その翌日は米原まいばらまで男爵と同車し、随行諸員を遠ざけて意見を交換したそうだ。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
伊吹山はあたかもこの関所の番兵のようにそびえているわけである。大垣おおがき米原まいばら間の鉄道線路は、この顕著な「地殻ちかくの割れ目」を縫うて敷かれてある。
伊吹山の句について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
米原まいばら駅の前で、ちょっと休む。というよりは道に迷って来過ぎたらしい。しかしここでK氏が買って車へ入れてくれた一個十円のドラやきの美味さは忘れかねるものだった。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやしくも事、朝鮮の産業に関する限り、米原まいばら物産伯爵、浦上水産翁といえども、一応は必ず、吾輩、轟技師に伺いを立てなければ、物を云う事が出来ないという……吾輩の得意想うべしだったね。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
東京市の大地図を一枚買って、東京駅から、米原まいばら行の汽車に乗った。遊びに行くのでは、ないんだぞ。一生涯の、重大な記念碑を、骨折って造りに行くのだぞ、と繰返し繰返し、自分に教えた。
併し尚ほ京都は断念あきらめられなかつたので、汽車が北陸線との乗換場の米原まいばらまで行く間に長い時間があるから、兎に角それまでに今一度考へ直して愈〻分岐点に行つて何うにか決しようとも思つた。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
汽車が米原まいばらへつくと、大鹿が乗りこんできたのです。
投手殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
岐阜ぎふではまだ蒼空あおぞらが見えたけれども、後は名にし負う北国空、米原まいばら長浜ながはま薄曇うすぐもりかすかに日がして、寒さが身に染みると思ったが、やなでは雨、汽車の窓が暗くなるに従うて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
米原まいばらでおちあった大阪の学芸部長S氏や支局の人も加えて、一同車をつらね、三時半ごろ、峠をおりる。彦根市には入らず、南の山岳寄りの方へ二十キロほど走りぬく。——目的は甲良村の勝楽寺。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岐阜ぎふでは蒼空あをそらえたけれども、あとにし北国空ほくこくぞら米原まいばら長浜ながはま薄曇うすぐもりかすかして、さむさがみるとおもつたが、やなではあめ汽車きしやまどくらくなるにしたがふて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
重湯おもゆか、薄粥うすがゆあるひ麺麭パン少量せうりやうはれたけれども、汽車きしやで、そんなものはられなかつた。乘通のりとほしは危險きけんだから。……で、米原まいばらとまつたが、羽織はおりない少年せうねんには、かゆてくれぬ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さて、どつちみち靜岡しづをかとほるには間違まちがひのない汽車きしやだから、ひとをしへけないでましたが、米原まいばら𢌞まはるのか、岡山をかやま眞直まつすぐか、自分じぶんたちのつた汽車きしや行方ゆくへらない、心細こゝろぼそさとつてはない。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
汽車きしやは、米原まいばら接續線せつぞくせんにして、それが敦賀つるがまでしかつうじてはなかつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この列車は、米原まいばらで一体分身して、分れて東西へはしります。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この列車れつしやは、米原まいばら一體分身いつたいぶんしんして、わかれて東西とうざいはしります。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)