おや)” の例文
かれ天の下治らしめさむとせしほどに、平群へぐりの臣がおや、名は志毘しびの臣、歌垣うたがきに立ちて、その袁祁をけの命のよばはむとする美人をとめの手を取りつ。
中臣藤原の遠つおやあめのおしくもね。遠い昔の 日のみ子さまのおしのいひとみ酒を作る御料の水を、大和国中くになか残る隈なく捜し蒐めました。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
朝廷も世間のうち、人と人との寄りあい、げに、そのへいいなみがたい。が、遠いおやたちが叡智で築いた国のかなめだ。乱離にしてよいものではない。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「聞く人のかがみにせむを、あたらしき清きその名ぞ、おほろかに心思ひて、虚言むなことおやの名つな、大伴のうぢと名にへる、健男ますらをとも
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
『竹取物語』は、すでに古く紫式部が命名したように、小説のおやとして有名な作品である。しかし有名なわりには適切な評価を受けていないと思う。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
しきりと耳を振って、露深い秋草を踏散して、いななく声の男らしさ。ひそかに勝利を願うかのよう。清仏しんふつ戦争に砲烟ほうえん弾雨の間を駆廻ったおやの血潮は、たしかにこの馬の胸を流れておりました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今やこの未来のとおおやは、恰かも用心深い猫が、どこかから主人が見ておりはせぬかと、片方の眼であたりに注意をはらいながら、石鹸でござれ、蝋燭でござれ、獣脂でござれ、金糸鳥カナリヤでござれ
それを、われらの遠つおやどもが、刻苦いたして、一語半語ずつ理解いたして参ったに相違ござらぬ。遠つ祖どもの苦心があればこそ、二千年この方、幾百億の人々が、その余沢に潤うてござるのじゃ。
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
わが歌は吾がとほおやサモスなるエピクロス師にたてまつる歌
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
遠きおやの片身のよろひ万代よろづよにいかで我が名も伝へてしがな
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かくてまた遠きおやよりつたヘこし秘密ひみつ聖磔くるす
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鍛冶のおやトバルカインは、いそしみて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
おやり俳諧を守り守武忌もりたけき
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
ここにあめ兒屋こやねの命、布刀玉ふとだまの命、天の宇受賣の命、伊斯許理度賣いしこりどめの命、たまおやの命、并せて五伴いつともあかち加へて、天降あもらしめたまひき。
「おれのおやは、七、八代前までは、平家の小松殿の身内だったが、壇ノ浦このかた落ちぶれて」と、いうのもあるし。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤原の遠つおや、中臣の氏の神、天押雲根あめのおしくもねと申されるお方の事は、お聞き及びかえ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
おやおやのそのいにしへは神なれば人は神にぞいつくべらなる
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鍛冶かぢおやトバルカインは、いそしみて
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
同母弟いろせ長谷はつせの王子のために、坂本さかもとおみ等がおやの臣を、大日下おほくさかの王のもとに遣して、詔らしめたまひしくは
藤原の遠つおや中臣の氏の神、天押雲根あめのおしくもねと申されるお方の事は、お聞き及びかえ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
都の片すみでは、もう数代のおやおやを経ている中流社会の一であった。そしてこれからも、屋敷畑やしきばたけの芋のように、子蔓こづる孫蔓まごづるを幾代にも世の中へはわせて行くであろうことも確実であった。
自分のおやたちが長く覚え伝へ語りついで、かうした世に逢はうとは考へもつかなかつた時代ときよが来たのだと思うた瞬間、何もかも見知らぬ世界に住んでゐる気がして、唯驚くばかりであつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
そなたの父御ててごも、いくさでお果てなされたが、その父御は、そなたの不具を、自分のなしたごうのむくいか、遠い武門のおやどもが、多くの人々をあやめたゆえの因果かと、よう仰っしゃっておいでだった……。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自身のおやたちが、長く覚え伝え、語りついで来た間、こうした事に行き逢おうとは、考えもつかなかった時代ときよが来たのだ、と思うた瞬間、何もかも、見知らぬ世界に追放やらわれている気がして
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
むな言も おやの名断つな
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)