真下ました)” の例文
旧字:眞下
小鳥ことりは、たかそらからりようとして、びっくりしました。なぜなら、真下ましたには、ものすごい、大海原おおうなばらがあったからです。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その中に皆の群から少し離れて、社廟のすぐ真下ましたに繋いだ小舟では、若い漁師がどうしたものかうまく寝つかれないで、唯ひとりもぞくさしていた。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
警報隊長の四万しま中尉は、兵員の間に交って、いつもは東京全市に正午の時刻を報せる大サイレンの真下ましたに立っていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とおせていた目を、すぐ真下ました作事場さくじば——内濠うちぼりのところにうつすと、そこには数千の人夫にんぷ工匠こうしょうが、朝顔あさがおのかこいのように縦横たてよこまれた丸太足場まるたあしばで、エイヤエイヤと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
砂丘すなやまのすぐ真下ましたが、えもわれぬうつくしいひとツの入江いりえになっているのではありませぬか!
ようや小豆大あずきだいのかたちをつらねたかげを、真下ましたながれにただよわせているばかりであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ちょいと首を上げて土手の上を見ると、いつのにか例の松の真下ましたに来ているのさ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに、私が恵美のうちの二階で遊ぶことを嫌う理由も、彼女には分らなかった。其処そこから下を見下みおろすと、私のうちの四軒長屋の、傾いて、雨のる場所を、むしろおおうたわら屋根が真下ましたに見えるのだ。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
ふと足元あしもとると、真下ました土間どま金魚きんぎよがひらひらとれておよぐ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふン、これは内緒だがナ、この真下ましたに、おれの作っておいた別製の林檎りんごパイがあるんだ。腹が減ったから、そいつを
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なかでも、ちいさな子供こどもたちは、毎日まいにちれをなして、水面みずもかび、太陽たいようらす真下ましたを、縦横じゅうおうに、おもいのままに、金色きんいろのさざなみをてておよいでいました。
なまずとあざみの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その上、ご老職ろうしょく伊東十兵衛いとうじゅうべえどのが、源氏閣げんじかくの上から袈裟斬けさぎりになって真下ましたへ落ち、鉱山目付かなやまめつけ伊部熊蔵いのべくまぞうどのも悶絶もんぜつしていたようなありさま、けれどもこれはいのち別条べつじょうなく助かりましたが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ピトロクリの谷は秋の真下ましたにある。十月の日が、眼に入る野と林を暖かい色に染めた中に、人は寝たり起きたりしている。十月の日は静かな谷の空気を空の半途はんとくるんで、じかには地にも落ちて来ぬ。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また、あるときは、みなみあつ太陽たいよう赤々あかあからす、真下ましたのところで、あかいしったこともありました。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから十日も経った或る日、もう暁の微光びこうが、窓からさしこんで来ようという夜明け頃だった。警官をまじえた一隊の検察係員が、風の如く、真下ましたの部屋に忍びこんで来た。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
竹童は、すぐ真下ましたの地上に一点の火のかたまりを見いだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真下ましたの海上では、米軍の偵察艦隊がようやく陣形をかえ、戦闘隊形へ移って行く様子であった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)