きず)” の例文
議官セナトオレの甥と鞘當さやあてして、敵手あひてにはきずを負はせたれど、不思議にその場をのがれ得たり。かくてこたび「サン、カルロ」座には出でしなり。
少しく安堵あんどの思ひをなし、忍び忍びに里方へ出でて、それとなく様子をさぐれば、そのきず意外おもいのほか重くして、日をれどもえず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
その常にぢかつくゆる一事を責められては、えざるきずをもさかるる心地して、彼は苦しげにかたちをさめ、声をもいださでゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
母、生みの母、上衝のぼせで眼を悪くしてる母が、アノ時甚麽どんなに恋しくなつかしく思はれたらう! 母の額に大きなきずがあつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「いまから幾ら謝りになっても、受けたきずあとがそんなに簡単に治るもんですか、あやまるなんて言葉はとうに、通用しなくなっているわよ。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
留紅草るこうさう樽形たるがたの花、その底にダナウスの娘たちが落ちてゐさうな花、人間の弱い心臟の血を皆かまはずに吸いこむため、おまへの唇にはきずがある。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
体中にきむしったようなきずの絶えない男の子であるから、病原菌の浸入口はどこだか分からなかった。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ふと目に着いたものは白蝋はくろうのような色をした彼女の肉体のある部分に、真紅しんくに咲いたダリアの花のように、茶碗ちゃわん大にり取られたままに、鮮血のにじむすきもない深いきずであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
よって、これにほかからかんばしい餌を投げ与えてごらんなさい。二虎は猛然、本性をあらわしてみあいましょう。必ず一虎は仆れ、一虎は勝てりといえども満身きずだらけになります。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
踠けば踠くほどきずを深くして、結局自滅だ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
まじれる君が微笑ほほゑみはわが身のきず
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
そがもとにきずつける女神ぢよじんの瞳。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いくばくもあらぬに、ベルナルドオがきず名殘なごりなくえ候ひぬ。彼人も君の御上をば、いたく氣遺きづかひ居たれば必ず惡しき人と御思ひしなさるまじく候。
黄金丸はまづうやうやしく礼を施し、さて病の由を申聞もうしきこえて、薬を賜はらんといふに、彼の翁心得て、まづそのきずを打見やり、霎時しばしねぶりて後、何やらん薬をすりつけて。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
左の眉の上に生々しいきずがあつて、一筋の血が頬から耳の下に伝つて、胸の中へ流れてゐる。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
これを初て来た日に、お時婆あさんが床の壁に立て掛けて、叱られたのである。立てた物は倒れることがある。倒れればとうが傷む。壁にもきずが附くかも知れないというのである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
ために、太古からの自然も、ようやく、あちこち、きずだらけになり、まぬがれぬ脱皮を、苦悶するように、この大平原を遠くめぐる、富士も浅間も那須なすたけも、硫黄色の煙を常に噴いていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時分になると、銀子も座敷にれ、心のきずもようやくえていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
げに思ひいづ、鳴神なるかみの都の騷擾さやぎ村肝むらぎもの心のきずを。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
きずつけるわかうどのふね
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
古夢ふるゆめきずこそ消えね
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ベルナルドオのきずは命をおとすに及ばざりしかば、私は其治不治生不生の君が身の上なるべきをおもひて、須臾しゆゆもベルナルドオの側を離れ候はざりき。
その犬もいぬる日村童さとのこに石を打たれて、左の後足あとあしを破られしが、くだんの翁が薬を得て、そのきずとみに癒しとぞ。さればわれ直ちに往きて、薬を得て来んとは思ひしかど。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
左の眉の上に生々しいきずがあつて一筋の血が頬から耳の下に傳つて、胸の中へ流れてゐる。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
郊外にある夏侯惇かこうじゅんの陣地まで急を告げに行くつもりだったろう。ところが、道を間違えて、彼方此方、馳けまわるうち、肩のきずからあふれ出る血しおに、眩暈めまいをおぼえて、また馬を捨ててしまった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
げに思ひいづ、鳴神なるかみの都の騒擾さやぎ村肝むらぎもの心のきずを。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
それにきずもまだ充分ではなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
きずつけるあくのうごめき
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
きずにか、身にせま
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
きずに悩める胸もどき、ヴィオロンがく清掻すががき
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
咽喉のんどきずを見せし女かな
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
きずに悩める胸もどき、ヴィオロンがく清掻すががき
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
女のびんの古ききずあと
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
きずに惱める胸もどき、ヸオロンがく清掻すががき
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
きずに惱める胸もどき、ヸオロンがく清掻すががき
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)