ちゃん)” の例文
あたいのちゃんはどこへ行った……あの唄も、みなの耳にたこができるほど、朝晩聞かされたもので、このチョビ安には、父も母もないはず。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いいともきっと頼まれた」紋十郎はニタリと笑い、「そう決まったら早く帰って今夜はグッスリ寝るがいい。ちゃんが探していたっけよ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「うちのちゃんは、与八さんという人は、ありゃお人好しだっていってたよ。だから、力があったって、喧嘩をすることなんかできやしねえ」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
奥方ちゅうほどのものは持っちゃいませんが、一人のかかあと二人の子供は郷里くにに置いとるんですがね、——ちゃんは、へえ、今ごろは何処どこ
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ちゃんだって歳はとってるし又女房を持ちもしめえと云ったら安心しておふくろは死んだが、てめえが独り歩きの出来るまでは己は女房も持たずに丹誠して
「ようく聞いて置いでな、菊枝! 今おめえに稼ぎを休まれたら、ちゃんが一人で、どうもこうもなんねえんだから……」
緑の芽 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
……おれのちゃんでそいつをよく見たんだ、おれのこの眼でよ、旦那、おらあこれだけは旦那に云わずにゃアいられねえ
嘘アつかねえ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
何でもおれが船へ乗り込む二三日前だった、おめえのところへ暇乞いとまごいに行ったら、お前のちゃんが恐ろしく景気つけてくれて、そら、白痘痕しろあばたのある何とかいう清元の師匠が来るやら
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
それ、(スラリと刀を抜かせて持たせる)……いいか、人を斬るにゃ、……ちゃんの仇を斬るならば、こうして斬るのだ。……さ、小父さんの方を向いて突いて来い。突いて来い。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
黒目勝ちの小さな眼をみはってしばらく想いめぐらしていたが、「ちゃんはワンタンを売ったから、わたしも大きくなったらワンタンを売るよ。売ったら売っただけみんなお前に上げるよ」
明日 (新字新仮名) / 魯迅(著)
そしてあの裸で寝る習慣のお婆さんも、オッカアもちゃんもいないと知ると、私は夢中で叫びながら駈け出した。どんな障碍物でも蹴飛ばすような勢いで、往来をめがけて走り出すのだった。
雨の回想 (新字新仮名) / 若杉鳥子(著)
ここへ奉公に来るときも、おまえのちゃんとおっかあが、金を扱うところへ奉公に行くから、小判の毒に当てられるなよ、といったはずだが、どうだ、おじさんのいうことはまちがっているか
ちゃん、おいらにもぜにくんな」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ちゃんは?
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「ヤア、あたいと父上が、一生懸命にまもってきた壺。こないだちゃんが、どこからか持ってきたのに、どうしてここにあるんだい」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ううん、あんな者アおっ母じゃあねえよ。慾が深くて口やかましくて、あたいをちっとも可愛がらなくて、ちゃんとはいつも喧嘩ばかりしている」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あたいは帰るよ、いいかい? ちゃんの晩飯をかんきゃならねえし——それに、あたいの家がなくなっちまうからよ!」
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「そんなことは心配しねえでも、まあ、みっしり勉強して……試験を受げさ行ぐ時の旅費ぐらい、ちゃんがなんとかしっから、こっそり行って受げて来い。」
緑の芽 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
おいらの死んだちゃんと俺らと二人で、山や谷を探して見つけ出しておいたものだよ、これだけあればおばさん、三年や五年は楽に暮して行けると言ったよ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「出るとひどいめにあわされるんだよ、箕山のお侍たちにさ、おいらのちゃんも、この吉べえの父も、ほかに三人もひどい目にあって、みんな家で寝ているよ」
雪の上の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
早「ちゃんは何ぞというと小言をいうが、無ければ出してくれべえと云うだからかっぺえじゃアねえか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それ、(スラリと刀を抜かせて持たせる)……いいか、人を斬るにゃ、……ちゃんの仇を斬るならば、こうして斬るのだ。……さ、小父さんの方を向いて突いて来い。突いて来い。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
「何だい卑怯なことを、お前もちゃんの子じゃねえか」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
ちゃんが金を出してやるから、どっかに部屋でも借りるがいい。おれのからだがうごく限り、おめえひとりぐれえ食わせられねえこたあねえ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ちゃんは、にしを百姓にしたぐはねえと思って……貧乏さえしてねげ、女学校さもなんさもやりでえのだが、貧乏なばがりに、ろくに書物も買ってやれねえが……」
緑の芽 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
え……れは叔父で……お繼、何か小岩井のお婆さんのとけえ行きてえから、お婆さんにおれ詫言わびごとして呉んねえ、ちゃんの敵を討つ助太刀をしたと云うかどで詫言をして呉んねえ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「たん」もちろんちゃんの意味である、「へんなって云ってゆでしょ、へんな、たん」
ちゃん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あたいん家のちゃんは、あのでかい工場だ、よう——お——いみんな来てみろ——な、けむがまっ黒けに出てやがらあ。へん、あたいん家の父はえれえもんだ、毎日あの工場で働いてらあ……」
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
俺だってまんざら木のまたや岩の間から生れたじゃあるめえから、親というものがあったには違えねえ、大概たいがいの人にちゃんというものとおっかあというものがあるだあが、俺にはホントウの父とおっ母が無え
「ねえ、泰軒小父ちゃん、すぐ発足しようじゃアねえか。あたいのちゃんが知れたんだい! べらぼうめ! 朝までなんか待っていられるかい」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
婆「呆れた、でかい疵があるに気がかねえで居た、それでわれ黙って居たか、ちゃんに云わねえか」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「先生え、あたいんにはね、あたいのちゃんにはお内儀さんがいねえんだよ」
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「だから、ちゃんが無くたって、子供は出来るんだぜ」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「はいんなよ、ちゃん、……早く……」
嘘アつかねえ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ほほほほほ、そこんとこのふしまわしが、ちがうわ。あ、た、いのウであがって、ちゃんはアってさがるのよ。小父おじちゃんのは、それじゃ逆だわ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ちゃんはな、江戸の深川で生れて、腹一杯はらいっぺえ悪い事をして喰詰くいつめっちまい、甲州へ行って、何うやら斯うやら金が出来る様になったが、詰り悪い足が有ったんで、此処こゝへ逃げて来た時に
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「御亭主てのは何だい、ちゃんのことかエ」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「なんだい、この餓鬼がきアッ! またこんなところに灰をまきゃアがって! ほんとに、ほんとに性懲しょうこりのねえ野郎だよ。ちゃんにそっくりだッ!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まア用の無いやくざばゝあだから早く死にたい、厄介のないように眠りたいと思ってるだが、斯うやってまア孫が尋ねて来て顔が見られると思えば、生きて居て有難かっきア……ちゃんは達者かえ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「しかしちゃん、富さんがそういっただけで、ほんとに源三郎さんてえ人が焼け死んだものかどうか、そいつはまだわからねえ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お久が居なけりゃア此方こっちも出て往っちまわアな、だからよう、己がわりいから連れて来て呉んな、ちゃんが悪いッて是から辛抱するから、え、おい、おねげえだ、己だってポカリとい目が出れば
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ウム、そうだったねえ。ほんとのちゃんやおっかあは、行方知れずでも、あたいには、こんな強い父ちゃんがあるんだったねえ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すぐにずる/\べったりに嫁っ子にようかと思う、あれを貰ってくんねえかちゃん
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何でもいい。お上のお尋ね者なんだ。だからヨ、だからちゃんの言うことを聞いて、一時も早く五人組を呼んでここらを固めさせ、おいらが不意にめん
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「サ、けえるんだ。帰るんだ。な、ちゃんもおふくろも待ってらあ。ヨ、おいらといっしょに帰ろうじゃねエか」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ちゃんもおふくろも、もうすこし辛抱していてもらえてえ。おいらが一人前の瓦職になるまであ、ま、隠居仕事だと思って、この石場の番人をつとめていてくんねえよ。
ちゃん!」庄太郎が、にやにやして、「いいものが手に入ったぜ。さあ、これからおいらの家は、金持ちになる。おいらなんか、おかいこぐるみで、あっはっはっは——。」
「もういい、笑え、笑え。ちゃんも、年をとったら気が短くなってナ——ねえ神尾さま、あなたも一つ笑って下せえまし。笑って、まアゆっくりとお話を伺おうじゃアありませんか」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「うふっ! ちゃん、すまねえが、おらあ勝ってるぜ。」
な、お駒、ちゃんのいうことをきいて、足を洗いな、足を
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)