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澎湃
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ほうはい
ふりがな文庫
“
澎湃
(
ほうはい
)” の例文
その前年かに、泡鳴は小説「
耽溺
(
たんでき
)
」を『新小説』に書いている。自然主義の波は
澎湃
(
ほうはい
)
として、
田山花袋
(
たやまかたい
)
の「
蒲団
(
ふとん
)
」が現れた時でもあった。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
何だかこう、きらきらと絶え間なく反射しながら、水の表面がふっくらと膨れ上って、
澎湃
(
ほうはい
)
と
湧
(
わ
)
き騒いでいるように感ぜられる。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼はただ大光明のために、烈しく
眩暈
(
めまい
)
が起るのを感じた。そうしてその光の中に、
大勢
(
おおぜい
)
の男女の歓喜する声が、
澎湃
(
ほうはい
)
と天に
昇
(
のぼ
)
るのを聞いた。
神神の微笑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は煉瓦の建物の岸壁に沿って、
澎湃
(
ほうはい
)
として浮き流れるその各国人の華やかな波を眺めながら、誰か知人の顔が浮いていないかと探してみた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
別に意識のあるわけでなし、心を鎮めて伏してゐると、果ての知れない遠い処に
澎湃
(
ほうはい
)
と溢れ、静かに
零
(
こぼ
)
れるものがあつた。
蝉:――あるミザントロープの話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
プロレタリヤ文学——そういった新らしい芸術運動の二つの
異
(
ちが
)
った潮流が、
澎湃
(
ほうはい
)
として文壇に
漲
(
みなぎ
)
って来たなかに、庸三は満身に
創痍
(
そうい
)
を受けながら
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
百姓一揆
(
ひゃくしょういっき
)
というものが
澎湃
(
ほうはい
)
たる一大勢力となり、牧民者がほとんど手のつけようがなく、しかも表面は相当の刑罰を以て臨むにかかわらず、事実は
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そんな優柔不断は、ご自身で蹴ってしまわなければ、生涯、
碌々
(
ろくろく
)
と終るしかありますまい。——
澎湃
(
ほうはい
)
たる世上の風雲を
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あながち油のたりない
裸燈心
(
はだかとうしん
)
のためばかりではなかったろう……弥生はいながらに身を涙の河に投じて、
澎湃
(
ほうはい
)
とよせてくる
己
(
おの
)
が情感に流されるままに
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
もういつからか経験したことのない感情が、彼の胸へ波のごとく
澎湃
(
ほうはい
)
と押しよせて、みるみる彼の心を柔らげた。彼はもうそれに逆らおうとしなかった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
これが実現した暁には北西の空からあらゆる波長の電磁波の
怒濤
(
どとう
)
が
澎湃
(
ほうはい
)
としてわが国土に襲来するであろう。
北氷洋の氷の割れる音
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その呼吸に「カナリヤの労働」——きな臭い煙草——の名の
香
(
かおり
)
が絡み、散乱する長調の音譜と、
澎湃
(
ほうはい
)
たるこの雑色の動揺と、
灼輝
(
しゃっき
)
する通行人の顔と動物的な興奮。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
私どもの想像を絶するほどのものがあったのではなかろうか。周さんが、夏休みに東京へ行き、まず感じたものは、その
澎湃
(
ほうはい
)
たる文芸の津波ではなかったろうか。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
和語への自覚が
澎湃
(
ほうはい
)
として興って来た今日、その存在は幾多の感謝を以て顧みられねばならないのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
飛んでもないことである。五十歳前、徳川三百年の封建社会をただ一
簸
(
あお
)
りに
推流
(
おしなが
)
して日本を打って一丸とした世界の大潮流は、
倦
(
う
)
まず
息
(
やす
)
まず
澎湃
(
ほうはい
)
として流れている。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
また、
澎湃
(
ほうはい
)
たる
波濤
(
はとう
)
の如く常に身辺に押寄せつつある。私等はその
響
(
ひびき
)
とその波の中に生滅しつつある。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ここに神話の政治手段としての役割がある。神話のない運動は、
澎湃
(
ほうはい
)
たる活力を持つことができない。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
見ゆる限り海波が
渺茫
(
びょうぼう
)
として、
澎湃
(
ほうはい
)
として、奔馬のごとくに盛り上がって、白波が砕けて奔騰し、も一度飛び散って、ざざーっと
遥
(
はる
)
かの眼下の
巌
(
いわお
)
に、
飛沫
(
しぶき
)
をあげています。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
しかし、当時勤王思想が
澎湃
(
ほうはい
)
として起って居り、幕府縁故の諸藩とも
嚮背
(
こうはい
)
に迷って居り、幕軍自身が、新選組や会津などを除いた外は、決然たる戦意がなかったのであろう。
鳥羽伏見の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
文久二年とともに湧き起る
澎湃
(
ほうはい
)
たる行動期の一特色は、すでに地方産商業家の中から
算盤
(
そろばん
)
を棄て資財を
抛
(
なげう
)
ってみずから諸戦野に出動する者が続々として認められた点にある。
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
そうなって、
澎湃
(
ほうはい
)
とおこってくる反乱の勢いを、ミスルの財閥や英軍がどうふせぐだろうか
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
逆にどんな
澎湃
(
ほうはい
)
たる歴史の物語もそこに関与したそれぞれの社会の階層に属す人間の名をぬいて在ることは出来ないという事実の機微からみれば、たとい
草莽
(
そうもう
)
の一民の生涯からも
今日の文学の諸相
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
だが朝鮮の文人達の間にも
澎湃
(
ほうはい
)
として時局認識運動が高まり、鮮かに水煙りを飛ばして彼等が自分を追い越し去ったのだ。それを思えば他の連中が歯ぎしりする程憎くてならない。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
その邸内の何町四方は
一
(
いっ
)
ぱいの
樹海
(
じゅかい
)
だ。緑の波が
澎湃
(
ほうはい
)
として風にどよめき、太陽に輝やき立っているのである。ベルリンでは市民衛生の
為
(
た
)
め市中に広大なチーヤガルデン公園を置く。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
世界に
著
(
しる
)
き
澎湃
(
ほうはい
)
たる怒濤が死ぬに死なれない多感の詩人の熱悶苦吟に和して悲壮なる死のマーチを奏する間に、あたかも
夕陽
(
いりひ
)
に
反映
(
てりか
)
えされて天も水も
金色
(
こんじき
)
に
彩
(
いろ
)
どられた午後五時十五分
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ひつじは
俄然
(
がぜん
)
虎になった。処女は
脱兎
(
だっと
)
になった。いままで
湲々
(
えんえん
)
と流れた小河の水が
一瀉
(
いっしゃ
)
して海にいるやいなや
怒濤
(
どとう
)
澎湃
(
ほうはい
)
として岩を
砕
(
くだ
)
き石をひるがえした。光一の舌頭は火のごとく熱した。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
大風
(
たいふう
)
の
颯々
(
さっさつ
)
たる、
怒濤
(
どとう
)
の
澎湃
(
ほうはい
)
たる、
飛瀑
(
ひばく
)
の
※々
(
かくかく
)
たる、あるいは洪水天に
滔
(
とう
)
して
邑里
(
ゆうり
)
を
蕩流
(
とうりゅう
)
し、あるいは両軍相接して弾丸
雨注
(
うちゅう
)
し、
艨艟
(
もうどう
)
相交りて水雷海を
湧
(
わ
)
かすが如き、皆雄渾ならざるはなし。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そのリズムは
大浪
(
おおなみ
)
のうねりのように
澎湃
(
ほうはい
)
として
捲
(
ま
)
き起って来るような力をもっていた。何かしら自分もその波の上に乗ってどこか広々としたところにつれて行かれるような気に私は襲われた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
澎湃
(
ほうはい
)
たる熱情の波にゆられながら、竜太郎は叫ぶように、いった。
墓地展望亭
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
無限の
潮
(
うしほ
)
澎湃
(
ほうはい
)
と高鳴り渡り、神明の
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
逐日
(
ちくじつ
)
、織田遺業の勢力
圏
(
けん
)
に、秀吉なる名が、何とはなく、
澎湃
(
ほうはい
)
たる威勢をもって聞え出して来たことは、勝家として、到底、
晏如
(
あんじょ
)
としているに忍びない現象であるのだ。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
義和団
(
ぎわだん
)
の乱に依って清朝の無力が、列国だけでなく、支那の民衆にも看破せられ、支那の独立性を保持するには打清興漢の大革命こそ
喫緊
(
きっきん
)
なれとの思想が
澎湃
(
ほうはい
)
として起り
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
並んで流れつつ、それは別な河、という存在ではなくて、
澎湃
(
ほうはい
)
たる日本の新民主主義文学のゆたかにひろい幅と、雄大なその延長とのうちにとけ入り、包括されるはずのものと思う。
作家の経験
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかし光の
靄
(
もや
)
に似た流れは、少しもその速力をゆるめない。かえって目まぐるしい飛躍のうちに、あらゆるものを
溺
(
おぼ
)
らせながら、
澎湃
(
ほうはい
)
として彼を襲って来る。彼は遂に全くその
虜
(
とりこ
)
になった。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
街区の空間は今や巨大な熱情のために、膨れ上った。その
澎湃
(
ほうはい
)
とした群衆の膨脹力はうす黒い街路のガラスを押し潰しながら、関門へと駈け上ろうとした。と、一斉に関門の銃口が、火蓋を切った。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
澎湃
(
ほうはい
)
として、諸国三道の合言葉となった。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“澎湃”の意味
《名詞》
澎湃(ほうはい)
水が漲り、波打つさま。
何かが勢いが盛んで、起こり広がるさま。
(出典:Wiktionary)
澎
漢検1級
部首:⽔
15画
湃
漢検1級
部首:⽔
12画
“澎湃”で始まる語句
澎湃奔放