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潺湲
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せんかん
ふりがな文庫
“
潺湲
(
せんかん
)” の例文
若
(
も
)
しくは
又
(
また
)
苔の下に咽んでいた清水の滴りが岩間に走り出て、忽ち
潺湲
(
せんかん
)
の響を立てながら一道の迅流となって駆け下りて行くように
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
驚くばかり美麗な言葉が——(何といふ深く
光沢
(
つや
)
ある声であらうか!)
潺湲
(
せんかん
)
として湧き起り、今に終るかと思ふ度に次より次へ展開して
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
幽雅
(
ゆうが
)
な草堂の屋根が奥のほうに望まれ、
潺湲
(
せんかん
)
たる水音に耳を洗われながら
小径
(
こみち
)
の
柴門
(
さいもん
)
を入ると、内に琴を弾く音がもれ聞えた。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
銀盤の上を玉あられの走るような、
渓間
(
たにま
)
の清水が
潺湲
(
せんかん
)
と苔の上をしたゝるような不思議な響きは別世界の物の音のように私の耳に聞えて来る。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
鱧
(
はも
)
を焼く
匂
(
にお
)
いの末に中の島公園の小松林が見渡せる大阪天満川の宿、橋を渡る下駄の音に混って、夜も昼も
潺湲
(
せんかん
)
の音を絶やさぬ京都四條河原の宿
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
都合五段ある石段を下りつくすと、そこに
潺湲
(
せんかん
)
と堀の水が流れている。その上に一隻の小舟がつながれている。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
脚下に
奔
(
はし
)
る
潺湲
(
せんかん
)
の響も、折れるほどに曲るほどに、あるは、こなた、あるは、かなたと鳴る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
駒をとどめて
猫背
(
ねこぜ
)
になり、川底までも射透さんと
稲妻
(
いなずま
)
の
如
(
ごと
)
く
眼
(
め
)
を光らせて川の面を
凝視
(
ぎょうし
)
したが、
潺湲
(
せんかん
)
たる清流は
夕陽
(
ゆうひ
)
を受けて照りかがやき、瞬時も休むことなく動き騒ぎ躍り
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
かくてすすむほどに山路に入りこみて、
鬱蒼
(
うっそう
)
たる樹、
潺湲
(
せんかん
)
たる水のほか人にもあわず、しばらく道に
坐
(
ざ
)
して人の来るを待ち、一ノ戸まで何ほどあるやと問うに、十五里ばかりと答う。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
嬉しやと貫一は、道無き道の木を
攀
(
よ
)
ぢ、
崖
(
がけ
)
を伝ひ、
或
(
あるひ
)
は下りて水を
踰
(
こ
)
え、石を
躡
(
ふ
)
み、巌を
廻
(
めぐ
)
り、心地死ぬべく
踉蹌
(
ろうそう
)
として
近
(
ちかづ
)
き見れば、
緑樹
(
りよくじゆ
)
蔭愁
(
かげうれ
)
ひ、
潺湲
(
せんかん
)
声咽
(
こゑむせ
)
びて、浅瀬に
繋
(
かか
)
れる宮が
骸
(
むくろ
)
よ!
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
過ぎて来た方を除けば前も左右も、山また山、直ぐ前には右に雑木林を透して谷底に早川の流れが光って、
潺湲
(
せんかん
)
と響き、左は頂上の見えぬほど樹木が密生して、その間に笹の葉が鮮かに青い。
箱根の山
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
星は月の御座を囲み月は清らかに地の花を
輝
(
て
)
らす。花は紅と咲き黄と匂い紫と輝いて秋の野を飾る。花の上月の下、
潺湲
(
せんかん
)
の流れに和して秋の楽匠が技を尽くし巧みを極めたる神秘の声はひびく。
霊的本能主義
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
汽車は鉄橋にかかり、
潺湲
(
せんかん
)
たる清流の、やや浅い銀光の平面をその片側に、何かしら紫の
陰影
(
かげ
)
をひそませた、そして河原の砂の光った、木の橋がある、そのつい
下手
(
しもて
)
を駛って
轟
(
ごう
)
とまた響きを立てた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
同時に私は
潺湲
(
せんかん
)
たる水の音を聞きつけたような気がした。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
出づる道のべ
潺湲
(
せんかん
)
の流れの岸に蘆なびく。
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
四
時
(
じ
)
鳥鳴き、花咲き、
潺湲
(
せんかん
)
たる
水音
(
みずおと
)
と静かな
山嵐
(
さんらん
)
——、そして、
機織
(
はたお
)
りの歌と
梭
(
おさ
)
の音がどこかにのんびりと聞こえている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人はその苦しみの日に、洋々たる水を、又
潺湲
(
せんかん
)
たる流れを眺めることに由つて和やかな休止にひたり得るであらう。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
此二大山脈の始まる所に
潺湲
(
せんかん
)
たる産声をあげて、其懐に養われつつ
倶
(
とも
)
に北に走ること三十里、その尽くる所に雪を噴く奔湍と雷のような瀬の音とを収めて
黒部峡谷
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
指の附根の甲に白砂を耳掻きで
掬
(
すく
)
った
痕
(
あと
)
のような四つの小さい窪みのできる乙女の手は、いま水晶を溶したような水の流れを
遮
(
さえぎ
)
る——水は
潺湲
(
せんかん
)
の音を立て
呼ばれし乙女
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
中橋は、京の五条橋を思い出させる
擬宝珠附
(
ぎぼうしゅつ
)
きの古風な立派な橋で、宮川の流れが
潺湲
(
せんかん
)
として河原の中を縫うて行く、その沿岸に高山の町の火影が眠っている。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
居ながらにして
幽邃閑寂
(
ゆうすいかんじゃく
)
なる
山峡
(
さんきょう
)
の
風趣
(
ふうしゅ
)
を
偲
(
しの
)
び、
渓流
(
けいりゅう
)
の
響
(
ひびき
)
の
潺湲
(
せんかん
)
たるも尾の上の
桜
(
さくら
)
の
靉靆
(
あいたい
)
たるもことごとく心眼心耳に浮び来り、花も
霞
(
かすみ
)
もその声の
裡
(
うち
)
に備わりて身は
紅塵万丈
(
こうじんばんじょう
)
の都門にあるを忘るべし
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
潺湲
(
せんかん
)
たる清流があった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
夫を避けて爪先下りに右の方へ二、三十間も行くと、
壚坶
(
ローム
)
の固まったような河床を穿って、水が
潺湲
(
せんかん
)
と流れている。私達は始めて今朝来の渇を医することを得た。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
潺湲
(
せんかん
)
の音が自由に聴き出され、その急造の小
渓流
(
けいりゅう
)
の響きは、眼前に展開している自然を、動的なものに律動化し、聴き澄している復一を大地ごと無限の空間に移して
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そのために彼等が散歩から戻つたとき、丸太小屋の水道にも再び
潺湲
(
せんかん
)
と水が流れてゐたのでした。二人は黒百合山といふ名前に似ない岩肌のゴツ/\した山へ登つてみました。
淫者山へ乗りこむ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
そこは
密林
(
みつりん
)
のおくであったが、
地盤
(
じばん
)
の岩石が
露出
(
ろしゅつ
)
しているため、一町四
方
(
ほう
)
ほど
樹木
(
じゅもく
)
がなく、平地は
硯
(
すずり
)
のような黒石、
裂
(
さ
)
け目くぼみは、いくすじにもわかれた、水が
潺湲
(
せんかん
)
としてながれていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこには落ちて富士川となる水が
潺湲
(
せんかん
)
と流れている。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この水源地は聖岳の南麓二千三百米の高所にあって白檜の密林に囲まれ、石灰岩やラディオラリヤ板岩の露出した河床を、生れた
許
(
ばか
)
りの清い水が
潺湲
(
せんかん
)
たる音を立てて流れています。
日本アルプスの五仙境
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
八ヶ岳の高原では、其中を或は其一方を渓流が
潺湲
(
せんかん
)
として流れている所が多い。或る高原では渓流の代りに、或は之に加うるに、湖水や池沼を湛えたり、
又
(
また
)
は湿原を成している所もある。
高原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
“潺湲”の意味
《名詞》
清水が流れるさま。また、その音。
(出典:Wiktionary)
潺
漢検1級
部首:⽔
15画
湲
漢検1級
部首:⽔
12画
“潺”で始まる語句
潺々
潺
潺峡
潺湍
潺閑
潺々淙々