“潺湲:せんかん” の例文
“潺湲:せんかん”を含む作品の著者(上位)作品数
木暮理太郎5
岡本かの子3
中里介山3
吉川英治3
谷崎潤一郎2
“潺湲:せんかん”を含む作品のジャンル比率
文学 > その他の諸文学 > ギリシア文学20.0%
芸術・美術 > スポーツ・体育 > 戸外レクリエーション5.8%
歴史 > 地理・地誌・紀行 > 日本5.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
夫を避けて爪先下りに右の方へ二、三十間も行くと、壚坶ロームの固まったような河床を穿って、水が潺湲せんかんと流れている。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
人はその苦しみの日に、洋々たる水を、又潺湲せんかんたる流れを眺めることに由つて和やかな休止にひたり得るであらう。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
しかし、少しも失望することはない。この松原の中を一散に走れば釜無川の岸である。そこには落ちて富士川となる水が潺湲せんかんと流れている。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのために彼等が散歩から戻つたとき、丸太小屋の水道にも再び潺湲せんかんと水が流れてゐたのでした。
淫者山へ乗りこむ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
花の上月の下、潺湲せんかんの流れに和して秋の楽匠が技を尽くし巧みを極めたる神秘の声はひびく。
霊的本能主義 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
銀盤の上を玉あられの走るような、渓間たにまの清水が潺湲せんかんと苔の上をしたゝるような不思議な響きは別世界の物の音のように私の耳に聞えて来る。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
幽雅ゆうがな草堂の屋根が奥のほうに望まれ、潺湲せんかんたる水音に耳を洗われながら小径こみち柴門さいもんを入ると、内に琴を弾く音がもれ聞えた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八ヶ岳の高原では、其中を或は其一方を渓流が潺湲せんかんとして流れている所が多い。
高原 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
鳥鳴き、花咲き、潺湲せんかんたる水音みずおとと静かな山嵐さんらん——、そして、機織はたおりの歌とおさの音がどこかにのんびりと聞こえている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
都合五段ある石段を下りつくすと、そこに潺湲せんかんと堀の水が流れている。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
中橋は、京の五条橋を思い出させる擬宝珠附ぎぼうしゅつきの古風な立派な橋で、宮川の流れが潺湲せんかんとして河原の中を縫うて行く、その沿岸に高山の町の火影が眠っている。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長々と北にうねるみちを、おおかたは二里余りも来たら、山はおのずから左右にせまって、脚下にはし潺湲せんかんの響も、折れるほどに曲るほどに、あるは、こなた、あるは
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この水源地は聖岳の南麓二千三百米の高所にあって白檜の密林に囲まれ、石灰岩やラディオラリヤ板岩の露出した河床を、生れたばかりの清い水が潺湲せんかんたる音を立てて流れています。
日本アルプスの五仙境 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
同時に私は潺湲せんかんたる水の音を聞きつけたような気がした。
過ぎて来た方を除けば前も左右も、山また山、直ぐ前には右に雑木林を透して谷底に早川の流れが光って、潺湲せんかんと響き、左は頂上の見えぬほど樹木が密生して、その間に笹の葉が鮮かに青い。
箱根の山 (新字新仮名) / 田中英光(著)
かくてすすむほどに山路に入りこみて、鬱蒼うっそうたる樹、潺湲せんかんたる水のほか人にもあわず、しばらく道にして人の来るを待ち、一ノ戸まで何ほどあるやと問うに、十五里ばかりと答う。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
出づる道のべ潺湲せんかんの流れの岸に蘆なびく。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
木の橋があった。潺湲せんかんたる清流があった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
汽車は鉄橋にかかり、潺湲せんかんたる清流の、やや浅い銀光の平面をその片側に、何かしら紫の陰影かげをひそませた、そして河原の砂の光った、木の橋がある、そのつい下手しもてを駛ってごうとまた響きを立てた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
しくはまた苔の下に咽んでいた清水の滴りが岩間に走り出て、忽ち潺湲せんかんの響を立てながら一道の迅流となって駆け下りて行くように、後から後からと次第に力が加わって大空の一点を指して或る高さまで達すると
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
此二大山脈の始まる所に潺湲せんかんたる産声をあげて、其懐に養われつつともに北に走ること三十里、その尽くる所に雪を噴く奔湍と雷のような瀬の音とを収めて、日本海に注ぐものは即ち幽峭並ぶものなき黒部の峡流である。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
渓流けいりゅうひびき潺湲せんかんたるも尾の上のさくら靉靆あいたいたるもことごとく心眼心耳に浮び来り、花もかすみもその声のうちに備わりて身は紅塵万丈こうじんばんじょうの都門にあるを忘るべし
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこは密林みつりんのおくであったが、地盤じばんの岩石が露出ろしゅつしているため、一町四ほうほど樹木じゅもくがなく、平地はすずりのような黒石、け目くぼみは、いくすじにもわかれた、水が潺湲せんかんとしてながれていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耳の注意を振り向けるあらゆるところに、潺湲せんかんの音が自由に聴き出され、その急造の小渓流けいりゅうの響きは、眼前に展開している自然を、動的なものに律動化し、聴き澄している復一を大地ごと無限の空間に移して、悠久に白雲上へ旅させるように感じさせる。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
腕頸に淡いくびれがあり、指の附根の甲に白砂を耳掻きですくったあとのような四つの小さい窪みのできる乙女の手は、いま水晶を溶したような水の流れをさえぎる——水は潺湲せんかんの音を立て、流勢が勝って手にさからうとき水はまた淙々そうそうと響く。
呼ばれし乙女 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
嬉しやと貫一は、道無き道の木をぢ、がけを伝ひ、あるひは下りて水をえ、石をみ、巌をめぐり、心地死ぬべく踉蹌ろうそうとしてちかづき見れば、緑樹りよくじゆ蔭愁かげうれひ、潺湲せんかん声咽こゑむせびて、浅瀬にかかれる宮がむくろよ!
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
はもを焼くにおいの末に中の島公園の小松林が見渡せる大阪天満川の宿、橋を渡る下駄の音に混って、夜も昼も潺湲せんかんの音を絶やさぬ京都四條河原の宿、水も砂も船も一いろの紅硝子べにガラスのように斜陽のいろに透き通る明るい夕暮に釣人が鯊魚はぜを釣っている広島太田川の宿。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
青砥、はっと顔色を変え、駒をとどめて猫背ねこぜになり、川底までも射透さんと稲妻いなずまごとを光らせて川の面を凝視ぎょうししたが、潺湲せんかんたる清流は夕陽ゆうひを受けて照りかがやき、瞬時も休むことなく動き騒ぎ躍り、とても川底まで見透す事は出来なかった。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
日永一日グッタリとして殆んど口を利くこともない、それでゐて、ふと、時々一旦喋り出すとき、驚くばかり美麗な言葉が——(何といふ深く光沢つやある声であらうか!)潺湲せんかんとして湧き起り、今に終るかと思ふ度に次より次へ展開して、聴きの呆れた顔付が如何にも間抜けに見えるほど暫しのうちは杜絶えもしない。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)