かけ)” の例文
旧字:
貴殿少も御苦労かけ申間敷、依之右之金子致調達相渡候はゞ、其場所御通(○返の誤りか)し可下候。為後日之依て手形如件。
牛捨場馬捨場 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
それから今丁度内証で、そつとパンのかけを湿つた指で撮んで口へ持つて行つてゐるオスワルドに目を移して、「我々の懐かしい祖父」と云つた。
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
蒼白あおじろい仮面のような顔だ、魂のぬけた感情のかけらもない顔だった。少しせてはいるが、美しい眼鼻だちである。
山椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
斜めに向う側の土蔵の白壁に、へまむし、と炭団たどんかけで楽書をしたごとくたたずんで、じっ先刻さっきから見詰めていた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昔は大名か何かの、奇麗な御殿があった所だと見えて、大きな礎石いしや、かわらかけや、石垣などが残っています。
迷い路 (新字新仮名) / 小川未明(著)
金作を先へ立たして其後につくことにした。「こりゃ何でも前に人が通ったに相違ない」と言って指さすのを見ると、錆び朽ちて正体もない刃物のかけらであった。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
はい此方こつちへおいでなさい、こつれる物をもつておいでなすつたか。金「イエ、なにはうとおもつたが大分だいぶたけえやうですから、彼所あすこに二しようどつこりの口のかけたのがあつたからあれもつました。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
くるまへ向って、物騒な瓦のかけらを投げつけようとしているどこかの法師の顔を見つけて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、突然ふり返ると、さもがっかりしたように白墨はくぼくかけほうり出した。
寒さ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
山のかけらを遠方へ飛ばせていた時です。今でも外から来た
時に手をとどめてその俯向いた鼻先と思う処を、爪をあつめて巌のかけを掘取ると見ると、また掻きはじめた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
○「墨のかけぐれえは有るけれども墨をってちゃア遅いから鍋煤なべずみか何か塗って行こう」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
古壺の五味の溜まったかけらのこの中へも
わしが立合うて、思うには、祖父おおじ祖母おおば、親子姉妹、海山百里二百里と、ちりちりばらばらになったのが、一つ土に溶け合うのに、瀬戸もののかけまじっては、さぞいたかろう。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立身上たちみあがりに、さかずきを取って投げると、杯洗はいせんふちにカチリと砕けて、さっかけらが四辺あたりに散った。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暗がりに目がれたのか、空は星の上に星がかさなって、そこひなく晴れている——どこの峰にも銀の覆輪ふくりんはかからぬが、おのずから月の出の光が山のはだとおすかして、いわかけめも、路の石も
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このウこまかい方一挺がア、定価は五銭のウ処ウ、特別のウ割引イでエ、あらのと二ツ一所に、名倉なぐらかけを添えまして、三銭、三銭でエ差上げますウ、剪刀はさみ剃刀磨かみそりとぎにイ、一度ウ磨がせましても
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怪物ばけものに負けない禁厭まじないだ、とえいの針を顱鉄はちがねがわりに、手拭てぬぐいに畳込んで、うしろ顱巻はちまきなんぞして、非常ないきおいだったんですが、猪口ちょこかけの踏抜きで、いたみひどい、おたたりだ、と人におぶさって帰りました。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(ええ、何ですか、瀬戸物のかけがざくざくして、)
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)