しほ)” の例文
いかにとまをせば彼等かれら早朝まだきときさだめて、ちよ/\と囀出さへづりいだすをしほ御寢室ごしんしついでさせたまはむには自然しぜん御眠氣おねむけもあらせられず、御心地おんこゝちよろしかるべし
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中村雀右衛門じやくゑもんに次いで、尾上多見蔵たみざうの襲名があり、春の道頓堀では嵐徳三郎が、亡父の二十五年忌をしほに、四代目璃寛りくわん名跡みやうせきを相続するとの噂がある。
それから婆やが酒を運んで来たのをしほに話題を変へようと思つて、それまで出しそびれてゐた包みをほどいた。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
無理強ひの盃四つ五つ、それが悉皆すつかり體中にまはつて了つて、聞苦しい土辯の川狩の話も興を覺えた。眞紅まつかな顏をした吉野は、主人のカッポレをしほ密乎こつそりと離室に逃げ歸つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかし、笑つてばかりゐては濟まない場合であるので、彼はこれをしほに思ひ切つておふみの一件を話した。話してしまつてから彼は汗をいた。かうなると、小幡も笑へなくなつた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「平次、もう御墨附を搜してもらへるだらうな、それをしほに拙者も身を退きたい」
縁談などとは別にと、口で美しく云ふものゝ、父が相手の差し出す餌にふれた以上、それをしほに、否応なしに自分を、浚つて行かうとする相手の本心が、彼女には余りに明かであつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それではどうなりとするがいゝと言つたのをいゝしほにして、たうと出て行つた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
しほに九郎兵衞は此方よりとんで出九助のもとゞりをつかみ取て捻伏ねぢふせ喰切くひしめこぶしかためて散々さん/″\に叩きすゑおのれはふとやつ江戸へ出て金をため親父が質田しちた取返とりかへすの又は百八十兩たくはへたの貰つたのと虚言うそ八百を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
のしらせをしほに、郡視学は帽子を執つて、校長に送られて出た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
で、算盤の見当をつける為めに、先日このあひだ某華族の売立会があつたのをしほに、持合せのなかから古代更紗を三反ばかし取出して、そのなかに交ぜて知らぬ顔をしてゐた。
無理強ひの盃四つ五つ、それが全然すつかり体中にめぐつて了つて、聞苦しい土弁どべんの川狩の話も興を覚えぬ。真紅な顔をした吉野は、主人のカツポレをしほ密乎こつそり離室はなれに逃げ帰つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
飛んで來た八五郎をしほに、平次はそのまゝたち去る外はなかつたのです。
しばたゝきそれついては長々なが/\逗留とうりうあひだ種々いろ/\別段べつだんの御厄介やつかいになり何とも御氣の毒千萬と云ば亭主はよきはなしのしほと思ひ何時まで御逗留とうりうありしとて手前は夫が商賣しやうばいなれば少しも世話せわとは思ひませぬが御良人おつれあひは御大病なり其樣なことには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しほつと
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『はははは。』多吉はそれをしほに椅子を離れた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
させば傳兵衞も又すゝいで九助殿此傳兵衞も今は隱居いんきよしましたが先親方せんおやかた九郎右衞門殿の頃より懇意とは申ながら當年八十一歳で御座るいやばけも致さぬが何と九助殿江戸も私が若い時とはちがまし月にまし繁昌はんじやうで御座らう何とめづらしい事はないかなと云ふしほに九助はひざ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)