やな)” の例文
去年、秀吉のやな戦捷せんしょうのとき、家康から秀吉への賀の使者として、初花はつはなの茶入れをたずさえ、石川数正がえらばれて大坂へ行った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かげかつ公と和睦なされていそぎとむらいがっせんのためみやこへ上られますところに、はやくも日向守うちじにのよしをやなヶ瀬において御承知あそばされまして
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その裏座敷に、二人一組、別に一人、一人は旅商人たびあきゅうど、二人は官吏らしい旅客がいて憩った。いずれも、やなから、中の河内ごえして、武生へくだる途中なのである。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
福井を出立した宇津木兵馬は、浅水、江尻、水落、長泉寺、鯖江、府中、今宿、脇本、さば波、湯の尾、今庄、板取——松本峠を越えて、中河、つばえ——それからやなへ来て越前と近江の国境くにざかい
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はるかやなのおくから、この琵琶湖へ一れつの銀流をそそいでくる高時川たかときがわのとちゅうに、のッと空に肩をそびやかしているのは、しずたけ巨影きょえい
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岐阜ぎふではまだ蒼空あおぞらが見えたけれども、後は名にし負う北国空、米原まいばら長浜ながはま薄曇うすぐもりかすかに日がして、寒さが身に染みると思ったが、やなでは雨、汽車の窓が暗くなるに従うて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、——その神官しんかんの眼が、そこにピタリといついて時ひさしくたたずんでいるうちに、賤ヶ岳からやなにわたる方角に、モクリと黄色いけむりがあがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岐阜ぎふでは蒼空あをそらえたけれども、あとにし北国空ほくこくぞら米原まいばら長浜ながはま薄曇うすぐもりかすかして、さむさがみるとおもつたが、やなではあめ汽車きしやまどくらくなるにしたがふて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したがってここの空気は、しずたけやな合戦かっせん緊張きんちょうぶりとすこしもかわっていないのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猛犬まうけんは、——土地とちではまだ、深山みやまにかくれてきてことしんぜられてます——雪中行軍せつちうかうぐんして、なか河内かはちやなけようとした冒險ばうけんに、教授けうじゆ二人ふたり某中學生それのちうがくせいが十五にん
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
北ノ庄の遠くから勝家が鄭重ていちょうな使者と音物いんもつもたらして来たことにたいしては、それきり答礼もせず、書信も送らず、やなえき帰趨きすうが明らかになってから、却って、無沙汰の秀吉の方へ
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、ここは、柴田の北兵どもがで来らぬ以前に、伊勢一円を片づけてしまわにゃならぬ。やなしずたけなど、境の山々が、いまや積雪千丈の自然の防ぎをなしておるこそ一倍の強味よ。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
登れば逢坂おうさか、西は三井寺みいでら。また一方の道はやなさきの浜辺へ出る。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やなを越ゆる頃、日はすでに十五日となっていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、小牧こまきやなのときもそうだ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)