枕邊まくらべ)” の例文
新字:枕辺
いふことが此世の餘波なごりなみだしめ枕邊まくらべは雨にみだれし糸萩いとはぎながれにしづむばかりなり然ば男乍をとこながらも吉兵衞は狂氣きやうきの如くなげきつゝかくまで妻のかほやせて昔にかはあはれさよとおつる涙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのうち朝餉あさげんで、出勤しゆつきん時刻じこくやうやちかづいた。けれども御米およねねむりからめる氣色けしきもなかつた。宗助そうすけ枕邊まくらべこゞんで、ふか寐息ねいきゝながら、役所やくしよかうかやすまうかとかんがへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし濡れた女はその後もお道の枕邊まくらべを去らなかつた。お道がなんと云つても、夫は受付けて呉れなかつた。しまひには「武士の妻にもあるまじき」と云ふやうな意味で機嫌を惡くした。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
涙に浮くばかりなる枕邊まくらべに、燻籠ふせごの匂ひのみしめやかなるぞあはれなる。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
くだきて我が妻のやまひ平癒へいゆ成さしめ給へと祈りしかば定まりある命數めいすうにや日増ひましつかおとろへて今は頼み少なき有樣に吉兵衞は妻の枕邊まくらべひざさしよせ彼是かれこれと力をつけ言慰いひなぐさめつゝ何かべよくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
宗助そうすけ醫者いしやえるまでうしてはふつていてかまはないのかと小六ころくかへしたが、小六ころく醫者いしや以上いじやうよりほかなんにもかたらなかつたとだけなので、やむもとごと枕邊まくらべじつすわつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うかゞそつ起出おきいで押入おしいれの中に有る箪笥たんす抽斗ひきだしを開け金をうばひ取らんとなせしかど錠前ぢやうまへ堅固けんごなれば急にあける事かなはず其中に十二歳なるむすめ不※ふとさま母樣かゝさんれ直助がと云ふ聲聞き立石が枕邊まくらべにある刀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)