こゝ)” の例文
天下の善人盡く惡人たりとせば、吾人あに道徳の鼎の輕重を問はざるを得むや。こゝを以て道徳の理想は戮力なくして成立し得るものならざるべからず。
美的生活を論ず (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
壓制あつせい僞善ぎぜん醜行しうかうたくましうして、つてこれまぎらしてゐる。こゝおいてか奸物共かんぶつども衣食いしよくき、正義せいぎひと衣食いしよくきうする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「オイ/\飛んだことを言ふ——デ、彼奴きやつに一杯、酒を飲ませてやらうと思ふんだが、我々の手では駄目だから、こゝおいてか花吉大明神の御裾におすがり申すのだ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
何にせよ源護の方でも鬱懐あたはずしてこゝに至つたのであらうし、将門の方でも刀を抜いて見れば修羅心熾盛しせいになつて、遣りつけるだけは遣りつけたのだらう。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
こゝだけ聞きて目科は「夫で好しう聞く事は無いからお前下るが好い」と云い老女が外の戸まで立去るを
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
こゝに於て花魁の何うも……実に取敢とりあえず即答の御返歌になるてえのは、大概の歌詠うたよみでも出来んことでございますのに、花魁は歌嚢うたぶくろ俳諧嚢何んでも天稟てんぴん備わった佳人かじんなんで
 こゝに於て余は独逸人に一問を足した、伯林ベルリンでカイゼルの命名日に、何人なんぴとかかゝる処で愛国的示威運動を企てたら、独逸の警察や社会は果して之を何といふであらうかと。
露都雑記 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
こゝおい、今の叙事詩エポスすくなき世にありては戲曲ドラマをして第一位に居らしめざることあたはざるべし。これを早稻田文學が沒理想を説きて戲曲をたし所以ゆゑんとす。われは其意を取りて其言を取らず。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
こゝに於て興の起るに堪へず、更に疾驅してこれに赴く。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
こゝおいてか、君、にはかにわが前に現はれ給ふ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
こゝにやうやく桎梏となつて
傾ける殿堂 (新字旧仮名) / 上里春生(著)
這麼事こんなことおそれるのは精神病せいしんびやう相違さうゐなきこと、と、かれみづかおもふてこゝいたらぬのでもいが、さてまたかんがへればかんがふるほどまよつて、心中しんちゆう愈々いよ/\苦悶くもんと、恐怖きようふとにあつしられる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
思ふてこゝに至れば、吾人は大道すたれて仁義ありてふ老子の言の、千古の眞理なるを認むると同時に、所謂る道徳なるものの價値の甚だ貧少なるに驚かざるを得ざる也。
美的生活を論ず (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
歳のゆかん娘気むすめぎに思い違いを致し、一層いっそ尼にでも成ろうと心を決し不図家出を致しましたが、向島の白髭しらひげそば蟠竜軒ばんりゅうけんという尼寺がございます、こゝへ駈込んで参りましたが
而るに為憲と貞盛等と心を同じうし、三千余の精兵を率ゐて、ほしいまゝに兵庫の器仗戎具きぢやうじゆうぐ並びにたて等を出して戦をいどむ。こゝに於て将門士卒を励まし意気を起し、為憲の軍兵を討伏せ了んぬ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
主人公をば必ずしも設けず、たま/\これを設けても、事の脈絡をつながむ料にしたるのみ。されば大かたの事變は、主人公の性行より起らしめずして、偶然外より來らしむ。こゝに於て人物は客觀なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
こゝに於てか美的生活の範圍も亦隨うて本能の滿足以外に擴充せらるゝことを得。
美的生活を論ず (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
譬へばこゝに美術家があると假定して見ると、古往今來盡未來の第一位の人たらんとするものもあり、古の人に比して、誰位になり得れば、滿足と思ふものもあり、それよりも低き古人を眼中に置いて
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
こゝおいてか彼等かれらつね滿足まんぞくで、何事なにごとにもまたおどろかぬのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
談理を廻護する論はこゝに於てや興りぬ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)