)” の例文
新字:
それは一通の古びた手紙であつたが、それにると、自分より二歳の年長でしかない叔母の李子は、実は叔母でも何でもないのであつた。
垂水 (新字旧仮名) / 神西清(著)
われかつてゴツトシヤルが詩學にり、理想實際の二派を分ちて、時の人の批評法を論ぜしことありしが、今はひと昔になりぬ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼は私が娯樂ごらくを欲しがつてはゐない、仕事を望んでゐるのだ、私の現在の生活には餘りにり所がないので、何か一つの目的を求めてゐるのだと云ふのだつた。
群衆は動搖どよみを打ちました。黒船町の利三郎の話が、思ひの外に根強いりどころを持つて居たのです。
衆奉じて以て主と爲すべきものなく、或はさんじて四方にき、或は上野うへのる。若し公をして耐忍たいにんの力無く、共にいかつて事を擧げしめば、則ち府下悉く焦土せうどと爲らん。
こは廣義の喜曲悲曲にて今の所謂喜劇悲劇の意に非ず、すべて詩風詩體の甚だ崇高醇雅なる作品を悲曲といひ、そのさまでならざるものを喜曲といへる中古の例にりしなりと
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
きみへいいて大梁たいりやうおもむき・(三九)其街路そのがいろり・其方そのまさきよなるをくにかず。かれかならてうててみづかすくはん。われきよしててうかこみをきて、(四〇)へいをさむるなり
此處こゝ谷間たにまる一小村せうそん急斜面きふしやめん茅屋くさやだんつくつてむらがつてるらしい、くるまないからくはわからないが漁村ぎよそんせうなるもの蜜柑みかんやま産物さんぶつらしい。人車じんしや軌道きだうむら上端じやうたんよこぎつてる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
然し、そのえらいのは、——僕がわが國神代の生活状態を歐洲の表象主義に照り合はして、ここに新らしい眞理を發見して出來た刹那主義だ——この主義につて代々生々的せい/\てき威力を體現して來た。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
〔評〕南洲城山にる。官軍さくゑて之を守る。山縣やまがた中將書を南洲に寄せて兩軍殺傷さつしやうさん極言きよくげんす。南洲其の書を見て曰ふ、我れ山縣にそむかずと、斷然だんぜん死にけり。
釜の話は此手紙の中で最も欣賞きんしやうすべき文章である。叙事は精緻せいちを極めて一の剩語じようごをだに著けない。實につて文をる間に、『そりや釜の中よ』以下の如き空想の發動を見る。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
この推理は極めて簡單ですが、一番疑はしい筈の夫の榮三郎が、江の島に行つて居り、昨夜ゆうべ八五郎と一緒に呑んで居たとすれば、長五郎の疑ひは、全くりどころのないものになつてしまひます。
「どんなことツて——」お鳥がふくれツつらをして語つたのにると、千代子は先づ辨當屋に當りを付けて這入り込み、そこでこちらのゐどころを確かめ、そこを出てからお鳥のもとゐた大工に行き
兩岸の人家低く高く、山にり水に臨む其かず百戸。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そんなら其の他の一般の人民はどうして居つたかと云ふと、或は定家の式に從つたと認める人もありませう、或は何にもらず亂雜に書いたと云ふことも認められませうと思ひます。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
〔評〕關八州くわんはつしうは古より武を用ふるの地と稱す。興世おきよ反逆はんぎやくすと雖、猶將門まさかどに説いて之にらしむ。小田原のえきほう公は徳川公に謂うて曰ふ、東方に地あり、江戸えどと曰ふ、以て都府とふを開く可しと。
はつきりしたりどころがあれば、お隣の三河屋の源次郎さんに相談して、けるとか取拂ふとか、工夫も手段もあるだらうが、目にも見えず、耳にも聞えず、口でも言へないモヤモヤしたものが
「おれもぢぢイぢやないか、お前の言葉にれば?」
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)