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かきくど
ふりがな文庫
“
掻口説
(
かきくど
)” の例文
夫を、兄弟を、あるいは情人を送ろうとして、熱狂した婦人がその列に加わり、中には兵士の腕を
擁
(
かか
)
えて
掻口説
(
かきくど
)
きながら行くのも有った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そう私の前もなく
掻口説
(
かきくど
)
いてのお嘆きでした。ほんとに前に坐しているに耐えないようなご
苦悶
(
くもん
)
に見えました。よくよくなお覚悟と思われまする
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と悲しい声を張りあげて、断末魔のやうに身体を顫はせて
掻口説
(
かきくど
)
いてゐた。その痴川を麻油は母親のやうに抱いてやつて、けたたましく笑ひ出したが
小さな部屋
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
ともすれば籠み上げて来る鳴咽を噛みしめながら、
腸
(
はらわた
)
のちぎれるような声を振り絞って夫に向って、訴えるように、励ますように、
掻口説
(
かきくど
)
くのだった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
小説にしないまでも、碓氷川の瀬の音の、更けて、いかに悲しくねざめの枕に響いたかということを、山鳥の尾のながながしく、
掻口説
(
かきくど
)
いたことだろう。
春深く
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
▼ もっと見る
あはれ時こそ來りたれ、外に戀を爭ふ人なければ、横笛こそは我れに靡かめと、夜となく晝とも言はず
掻口説
(
かきくど
)
きしに、思ひ懸けなや、横笛も亦程なく行衞しれずなりぬ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
可疎
(
うとま
)
しの
吾子
(
あこ
)
が心やと、涙と共に
掻口説
(
かきくど
)
きて、
悲
(
かなし
)
び歎きの余は病にさへ伏したまへりしかば、殿も
所為無
(
せんな
)
くて、心苦う思ひつつも、
猶
(
なほ
)
行末をこそ頼めと文の
便
(
たより
)
を
度々
(
たびたび
)
に慰めて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「われこのままに不具の犬とならば、年頃の宿願いつか
叶
(
かな
)
へん。この宿願叶はずば、
養親
(
やしないおや
)
なる文角ぬしに、また合すべき
面
(
おもて
)
なし」ト、
切歯
(
はぎしり
)
して
掻口説
(
かきくど
)
くに、鷲郎もその心中
猜
(
すい
)
しやりて
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
妾は生きて再び両親にも
見
(
まみ
)
えがたかるべしなど、涙と共に
掻口説
(
かきくど
)
き、その
後
(
のち
)
また
文
(
ふみ
)
して訴えけるに、彼も内心穏やかならず
頗
(
すこぶ
)
る苦慮の
体
(
てい
)
なりしが、ある時は何思いけん
児
(
じ
)
を
抱
(
いだ
)
き上げて
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
今一度お勢の
袖
(
そで
)
を
扣
(
ひか
)
えて
打附
(
うちつ
)
けに
掻口説
(
かきくど
)
く外、他に仕方もないが、しかし、今の如くに、こう
齟齬
(
くいちが
)
ッていては言ったとて聴きもすまいし、また毛を吹いて
疵
(
きず
)
を求めるようではと思えば
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
無邪氣
(
むじやき
)
の
笑顏
(
ゑがほ
)
いつも
愛
(
あい
)
らしく、
雪三
(
せつざう
)
よ
菊塢
(
きくう
)
の
秋草
(
あきくさ
)
盛
(
さか
)
りなりとかきくを、
此程
(
このほど
)
すぐさず
伴
(
ともな
)
ひては
給
(
たま
)
はらずやと
掻口説
(
かきくど
)
きしに、
何
(
なん
)
の
違背
(
ゐはい
)
のある
筈
(
はず
)
なく、お
前
(
まへ
)
さま
御都合
(
ごつがふ
)
にて
何時
(
いつ
)
にてもお
供
(
とも
)
すべしと
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「私あもう気でも違いたいよ。」としみじみと
掻口説
(
かきくど
)
きたまいたり。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜な/\
掻口説
(
かきくど
)
き給ける。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
次第に
掻口説
(
かきくど
)
くような調子を帯びた。お倉の癖で、枝に枝がさして、
終
(
しまい
)
には肝心の言おうとすることが
対手
(
あいて
)
に分らないほど
混雑
(
こんがら
)
かって来た。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と悲しい声を張りあげて、
断末魔
(
だんまつま
)
のように身体を
顫
(
ふる
)
わせて
掻口説
(
かきくど
)
いていた。その痴川を麻油は母親のように抱いてやって、けたたましく笑い出したが
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
魚松のおかみさんは、毎日のように、
掻口説
(
かきくど
)
いていた。お次と又四郎のふたりが、祭の晩に、大川端から身投げしたと、この界隈で、いま、かくれもない評判の中に——。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
私
(
わたし
)
あもう気でも違ひたいよ。」としみじみと
掻口説
(
かきくど
)
きたまひたり。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ト、涙ながらに
掻口説
(
かきくど
)
けば、文角は
微笑
(
ほほえみ
)
て
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
支倉は殆ど泣かん許りに
掻口説
(
かきくど
)
いた。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
お霜婆は
散々
(
さん/″\
)
國の方の話をして、豐田のお婆さんや姉さんから私達兄弟のことも聞取りました。御蔭で國への土産話が出來た、それを別れ際まで
掻口説
(
かきくど
)
きました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
古い
洋傘
(
こうもり
)
の
毛繻子
(
けじゅす
)
の今は炬燵掛と化けたのを叩いて、隠居は
掻口説
(
かきくど
)
いた。この人の老後の楽みは、
三世相
(
さんぜそう
)
に基づいて、隣近所の農夫等が吉凶を
卜
(
うらな
)
うことであった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
森彦からの手紙には、祖先の名誉も弟等の迷惑をも顧みられなかったことを
掻口説
(
かきくど
)
くようにして、長兄にしてこの事あるはくれぐれも痛嘆の外は無い、と書いて寄した。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それは
翌朝
(
よくあさ
)
の霜の烈しさを思はせるやうな晩で、日中とは違つて、めつきり寒かつた。丑松が見廻りの為に出て行つた後、まだ敬之進は火鉢の傍に
齧
(
かじ
)
り付いて、銀之助を相手に
掻口説
(
かきくど
)
いて居た。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
吾児に因果でも言含めるやうに
掻口説
(
かきくど
)
いて、今更
別離
(
わかれ
)
を惜むといふ様子。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
他
(
ひと
)
から内証を
打開
(
うちあ
)
けられた時ほど、
是方
(
こっち
)
の弱身になることはありません。思いつめた御心から
掻口説
(
かきくど
)
かれて見れば、
終
(
しまい
)
には私もあわれになりまして、
染々
(
しみじみ
)
御身上
(
おみのうえ
)
を思遣りながら
言慰
(
いいなぐさ
)
めて見ました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あのお霜婆さんが国の方の話を持って、一度以前の田辺の家へ訪ねて来た時のことを思出した。御蔭で国への土産話が出来たと言って、自分を前に置いて年とった女らしく
掻口説
(
かきくど
)
いたことを思出した。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
掻
漢検準1級
部首:⼿
11画
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
説
常用漢字
小4
部首:⾔
14画
“掻”で始まる語句
掻
掻巻
掻込
掻合
掻廻
掻消
掻取
掻分
掻乱
掻上